一週間が過ぎた。
タンバは木製の歩行器を使い、
病室の外まで移動できるようになった。
歩く、というより、
体重を移す練習に近い。
左脚は、遅れてついてくる。
常に意識が必要だった。
二週目に入ると、
歩行距離は少しずつ伸びた。
――そして、停滞した。
進まない日が続く。
腰の痛みが、夜に残った。
翌朝。
日勤の看護師は、迷わず負荷を落とした。
「今日は、戻します」
タンバが苛立つ。
「せっかくやったのに」
桜は、短く答えた。
「今日は、我慢の日です」
「無理をしない日ですね」
三日後。
痛みは落ち着き、
歩行距離は元に戻った。
停滞は、失敗ではなかった。
________________________________________
三週目に入ると、
タンバは、
杖を使わず、短距離を歩けるようになっていた。
歩幅は小さい。
足取りは、まだぎこちない。
だが、転倒の危険は高くない。
________________________________________
退院前カンファレンス。
桜は、医師が作成した指示書に基づき、
看護師と介護人に向けて、
事実だけを並べた。
「杖なし歩行は可能」
「歩容はまだ不安定」
「軽作業のみ許可」
「重作業、脚立、不整地は不可となります」
必要な確認が終わり、
カンファレンスは短く締められた。
________________________________________
人がはけたあと、
桜は、タンバのもとへ向かった。
タンバは、
もう少し良くなるかもしれないという思いを抱えたまま、
悔しそうに黙っていた。
だが、三週間前のような絶望はなかった。
「家でも、動作訓練は続けてください」
桜は、淡々と続ける。
「毎日でなくていいです」
「でも、やめないでください」
「立ち仕事は、短時間から」
「無理をした日は、必ず休む」
「痛みやしびれが強くなったら、その日は止めてくださいね」
タンバは、少し考えるようにしてから、口を開いた。
「……まだ、良くなりますか」
桜は、すぐには答えなかった。
「言い切ることはできません」
「でも」
「続ければ、今より動く可能性は残りますから」
退院は決まった。
歩きは、まだぎこちない。
それでも、杖はいらない。
回復期は、
ここで終わりではない。
“続ける”という選択だけが、
次の回復をつくっていく。
タンバは木製の歩行器を使い、
病室の外まで移動できるようになった。
歩く、というより、
体重を移す練習に近い。
左脚は、遅れてついてくる。
常に意識が必要だった。
二週目に入ると、
歩行距離は少しずつ伸びた。
――そして、停滞した。
進まない日が続く。
腰の痛みが、夜に残った。
翌朝。
日勤の看護師は、迷わず負荷を落とした。
「今日は、戻します」
タンバが苛立つ。
「せっかくやったのに」
桜は、短く答えた。
「今日は、我慢の日です」
「無理をしない日ですね」
三日後。
痛みは落ち着き、
歩行距離は元に戻った。
停滞は、失敗ではなかった。
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三週目に入ると、
タンバは、
杖を使わず、短距離を歩けるようになっていた。
歩幅は小さい。
足取りは、まだぎこちない。
だが、転倒の危険は高くない。
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退院前カンファレンス。
桜は、医師が作成した指示書に基づき、
看護師と介護人に向けて、
事実だけを並べた。
「杖なし歩行は可能」
「歩容はまだ不安定」
「軽作業のみ許可」
「重作業、脚立、不整地は不可となります」
必要な確認が終わり、
カンファレンスは短く締められた。
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人がはけたあと、
桜は、タンバのもとへ向かった。
タンバは、
もう少し良くなるかもしれないという思いを抱えたまま、
悔しそうに黙っていた。
だが、三週間前のような絶望はなかった。
「家でも、動作訓練は続けてください」
桜は、淡々と続ける。
「毎日でなくていいです」
「でも、やめないでください」
「立ち仕事は、短時間から」
「無理をした日は、必ず休む」
「痛みやしびれが強くなったら、その日は止めてくださいね」
タンバは、少し考えるようにしてから、口を開いた。
「……まだ、良くなりますか」
桜は、すぐには答えなかった。
「言い切ることはできません」
「でも」
「続ければ、今より動く可能性は残りますから」
退院は決まった。
歩きは、まだぎこちない。
それでも、杖はいらない。
回復期は、
ここで終わりではない。
“続ける”という選択だけが、
次の回復をつくっていく。
