役目を終えたはずの巫女でした

会議は、
限られた者だけで行われた。

国王レオンハルト。
宰相マティアス・フォン・グレイヴ。
軍務卿ローデリヒ・シュタインベルク。
そして、外務大臣アルト・ヴァルハルト。

記録官はいない。
この場で語られる内容は、
あえて文書に残されない。

アルトは、
集めてきた情報を頭の中で整理しながら、
簡潔に報告を始めた。

「協力関係にある小国より、
 非公式な形で状況説明がありました」

国の機能は、現時点では維持されていること。
侵略と断定できる証拠は、まだないこと。
だが、
侵略を否定できる材料も、減ってきていること。

アルトは、
評価や感情を挟まず、
事実だけを並べていく。

「大国情勢の不安定化は、
 すでに物流の停滞や、
 国境付近の緊張として現れています」

短い沈黙のあと、
国王が口を開いた。

「小国が侵略されれば、
 それは他国の内政では済まない」

軍務卿が、低く頷く。

「事後対応になります。
 最も血が流れる形です」

宰相が続けた。

「協力関係を放棄したと、
 受け取られる可能性も高いでしょう」

どの発言も、
アルトの想定から外れるものではなかった。

国王は、
しばらく考え込んだあと、静かに言った。

「表立った軍事介入は行わない」

その一言で、
方向性は定まった。

「情報、抑止、護衛に限定する」
「最小限で、静かに関与する」

国是を曲げず、
現実からも目を逸らさない。
ゼフィーリアらしい選択だった。

わずかに間を置いて、
国王は続ける。

「小国とは調整に入れ」
「アレクシオス・ルーン・アグライア殿の配下と、接触を進めよ」

アルトは、静かに頷いた。

「承知しました」

それで十分だった。

会議は、
それ以上の言葉を交わすことなく、
終わった。

だがこの時、
ゼフィーリアはすでに、
表には出ない形で、
一歩を踏み出していた。