城の外に出た瞬間、
空気が、わずかに変わった。
城の中よりも、
少しだけ温度があり、
少しだけ雑多だ。
「ね、いいでしょう?」
隣を歩きながら、
ヘンリエッタが楽しそうに言う。
「人が多い時間帯を選んだの」
「その方が、町の空気を味わえると思って」
「そうですね……」
桜は、周囲を見渡しながら答えた。
石畳を歩く音。
行き交う人々の声。
どこかから漂ってくる、
焼き物の匂い。
国が違い、
世界が違えば、
日本で感じていた街の空気とは、
やはり違う。
「この辺りは、
食べ物屋さんが多いのよ」
「へえ……」
「あとで、
甘いものも食べましょう」
「……いいですね」
会話は自然と弾み、
二人とも、歩く速度が少し早くなる。
リーゼは、そのやや後ろ。
三人で楽しく出かけているように見える、
微妙な距離を保って歩いていた。
周囲をさりげなく見渡しながら、視線を動かす。
そして、
時折、二人の会話に加わる。
注意も、あくまで自然に。
会話を切らない程度に。
ヘンリエッタも、
それに気づいた様子はなく、
話題を続ける。
「ほら、あそこ」
「私が言ってたお店よ」
通りに面した、
落ち着いた佇まいの店だった。
中に入ると、
香ばしい匂いが一気に広がる。
「……美味しそう」
思わず、声が漏れた。
料理は、
見た目以上に、
しっかりと味がしていた。
温かくて、
優しくて、
でも、きちんと満足感がある。
「……本当に、美味しいです」
「でしょう?」
ヘンリエッタは、
得意そうに笑った。
一口、また一口と進むごとに、
桜の表情が、
少しずつ緩んでいく。
食事を終える頃には、
胸の奥が、
はっきりと弾んでいた。
「この後、
お店って見て回れますか?」
桜は、リーゼに声をかける。
「ええ。少しなら、
お店を見て回りましょうか」
許可が下りる。
「よかったわ」
ヘンリエッタも、
嬉しそうに言った。
通りを歩きながら、
いくつもの店先をのぞく。
布。
小物。
見慣れない形の道具。
どれも、
生活の匂いがした。
ふと、
小さな雑貨屋の前で、
足が止まる。
「……かわいい」
木製のペンと、
厚手のノート。
飾り気はないが、
丁寧に作られているのが分かる。
「使いやすそうね」
ヘンリエッタが言う。
桜は少し迷ってから、
それを手に取った。
「……これ、買います」
小さな買い物。
それだけなのに、
胸の奥に、
確かな実感が残った。
城下町の空気。
人の気配。
自分の足で歩いた時間。
桜は、
充足感を覚えながら、
再び通りへと戻った。
空気が、わずかに変わった。
城の中よりも、
少しだけ温度があり、
少しだけ雑多だ。
「ね、いいでしょう?」
隣を歩きながら、
ヘンリエッタが楽しそうに言う。
「人が多い時間帯を選んだの」
「その方が、町の空気を味わえると思って」
「そうですね……」
桜は、周囲を見渡しながら答えた。
石畳を歩く音。
行き交う人々の声。
どこかから漂ってくる、
焼き物の匂い。
国が違い、
世界が違えば、
日本で感じていた街の空気とは、
やはり違う。
「この辺りは、
食べ物屋さんが多いのよ」
「へえ……」
「あとで、
甘いものも食べましょう」
「……いいですね」
会話は自然と弾み、
二人とも、歩く速度が少し早くなる。
リーゼは、そのやや後ろ。
三人で楽しく出かけているように見える、
微妙な距離を保って歩いていた。
周囲をさりげなく見渡しながら、視線を動かす。
そして、
時折、二人の会話に加わる。
注意も、あくまで自然に。
会話を切らない程度に。
ヘンリエッタも、
それに気づいた様子はなく、
話題を続ける。
「ほら、あそこ」
「私が言ってたお店よ」
通りに面した、
落ち着いた佇まいの店だった。
中に入ると、
香ばしい匂いが一気に広がる。
「……美味しそう」
思わず、声が漏れた。
料理は、
見た目以上に、
しっかりと味がしていた。
温かくて、
優しくて、
でも、きちんと満足感がある。
「……本当に、美味しいです」
「でしょう?」
ヘンリエッタは、
得意そうに笑った。
一口、また一口と進むごとに、
桜の表情が、
少しずつ緩んでいく。
食事を終える頃には、
胸の奥が、
はっきりと弾んでいた。
「この後、
お店って見て回れますか?」
桜は、リーゼに声をかける。
「ええ。少しなら、
お店を見て回りましょうか」
許可が下りる。
「よかったわ」
ヘンリエッタも、
嬉しそうに言った。
通りを歩きながら、
いくつもの店先をのぞく。
布。
小物。
見慣れない形の道具。
どれも、
生活の匂いがした。
ふと、
小さな雑貨屋の前で、
足が止まる。
「……かわいい」
木製のペンと、
厚手のノート。
飾り気はないが、
丁寧に作られているのが分かる。
「使いやすそうね」
ヘンリエッタが言う。
桜は少し迷ってから、
それを手に取った。
「……これ、買います」
小さな買い物。
それだけなのに、
胸の奥に、
確かな実感が残った。
城下町の空気。
人の気配。
自分の足で歩いた時間。
桜は、
充足感を覚えながら、
再び通りへと戻った。
