消えた教室

Scene 1
 翌日——土曜日の午後、私たちは体育館へ向かった。
 校舎を出て、渡り廊下を歩く。夕日が西の空を染め始めていた。オレンジ色の光が、廊下のガラス窓に反射している。春野さんが、最後に見た夕焼けと同じ色。あの日から、まだ五日しか経っていない。でも、私たちはもう、あの時とは違う。
「体育館に、最後のメッセージがある」
 蒼太の声が、静かな廊下に響いた。その声には、緊張が滲んでいた。いつもの冷静さの奥に、何か不安のようなものが隠れている。
「『私たちが最も恐れていた場所』……鏡」
 私も繰り返した。鏡は、嘘をつかない。そこに映るのは、本当の自分。飾らない自分。隠すことができない自分。だからこそ、春野さんたちは恐れたのだろう。
 体育館の扉を開けると、中は薄暗かった。窓から差し込む夕日の光だけが、広い空間を照らしている。バスケットゴールが、長い影を作っていた。放課後の体育館には、誰もいない。静寂だけが、広がっている。
 奥の壁に、巨大な鏡がある。ダンス部や体操部が練習で使う、壁一面の鏡。そこには、自分の全身が映る。表情も、姿勢も、全てが見える。隠すことができない場所。
「あそこだ」
 蒼太が鏡の方へ歩き始めた。靴音が、床に反響する。私もその後に続く。一歩、また一歩と、鏡に近づいていく。
 鏡に近づくにつれ、自分の姿が大きく映り込んでくる。いつもの制服姿。いつもの髪型。いつもの顔。でも、今日の私は、少し違う気がした。表情が、以前よりも真剣になっている。目に、何か決意のようなものが宿っている。この数日間で、私は変わったのだろうか。春野さんたちの記憶を辿りながら、私は少しずつ気づき始めていた。完璧である必要なんてない。弱さを見せてもいい。本当の自分を隠さなくてもいい。
 鏡の前に立つと、蒼太が足元を指さした。
「これ……」
 鏡の下、わずかな隙間に、何かが挟まっているのが見えた。小さな白い紙。まるで、誰かが意図的にそこに隠したかのように。
 蒼太は膝をつき、紙に手を伸ばした。指先が、慎重に紙を引き抜いていく。それを手に取ると、紙には二次元コードが描かれていた。
■■■■■■■□■■■■■■■
■□□□□□■□■■□■■□■
■□■■■□■□■□□■□□■
■□■■■□■□□□■■□□■
■□■■■□■□■■□□■□■
■□□□□□■□■□■□■□■
■■■■■■■□■□■□■□■
□□□□□□□□□□■□□□□
■■□□■■■■□■□■□■■
□□■■□□■□■■■□□□■
■□■□■□■□■□■□■■■
□■■■■□□□■□□■■□■
■□□■■■■□■□■■□□■
□□□□□■□□■■■□□■■
■■■■■■■□□■□■■■■
■□□□□□■□■□■□□□■
■□■■■□■□□□■■■■■
■□■■■□■□■□□■■□■
■□■■■□■□■□■□□□■
■□□□□□■□■□■■□□■
■■■■■■■□■■□■■□■
 蒼太はスマホをかざすと、画面が光った。読み取り音が、静かに響く。画面に、特設サイトが表示される。
https://kieta-kyoushitsu.com/final-mission
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╔═══════════════════════════════════════╗

║ 【記憶のカケラ収集 完了】

║ 【進行状況】 [●●●●●] 5/5

╚═══════════════════════════════════════╝
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【おめでとうございます】 🎊
あなたは5つ全ての記憶のカケラを集めました。
📍 記憶のカケラ #01:図書室の本
📍 記憶のカケラ #02:映画館のカセットテープ
📍 記憶のカケラ #03:哲学書に隠された写真
📍 記憶のカケラ #04:音楽室のギター
📍 記憶のカケラ #05:女子トイレの最後のメッセージ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【最終ミッション開始】 🎯
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
鏡は、嘘をつかない。
そこに映るのは、本当の自分。
でも、私たちは恐れていた。
本当の自分を見ることを。
だから、鏡を避けた。
だから、目をそらした。
でも、もう逃げない。
本当の自分を、受け入れる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二年B組の真実を知るため、
最後の場所を見つけてください。
それは、「消えたい人のための場所」です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ヒント】 💡
「私たちが消えた場所は、
 誰も行きたがらない場所。
 でも、昔はたくさんの人で賑わっていた場所。
 笑顔と、悲しみが、交差する場所」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【読者参加:場所を推理してください】 🗺️
3つのヒントが指す場所はどこでしょうか?
┌─────────────────────────

│ あなたの推理:
│ ┌───────────────────────┐ │

│ └───────────────────────┘ │

│ ヒント使用:
│ [ ] 誰も行きたがらない場所
│ [ ] 昔は賑わっていた場所
│ [ ] 笑顔と悲しみが交差する場所

│ [推理を投稿する]

└─────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【他の探偵の推理】 🔍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0127 (5分前)
「病院……? 3つの条件、
全部病院に当てはまる気がする」
♥ 共感 45 💭 返信 12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0234 (8分前)
「笑顔と悲しみが交差……
生と死が隣り合わせの場所?」
♥ 共感 67 💭 返信 23
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0456 (12分前)
「病院だと思って地元の廃病院調べたら
『旧・希望ヶ丘総合病院』が出てきた!
3つの条件全部当てはまる」
♥ 共感 234 💭 返信 89
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0789 (15分前)
「遊園地かと思ったけど、
悲しみは少ないよね……」
♥ 共感 28 💭 返信 7
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[もっと見る (892件)]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カウントダウン】 ⏰
春野さんたちが完全に消えるまで:
残り時間: 1日 14時間 23分
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
時間は、残り少ない。
急いで。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[次へ進む →]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ヒント……」
 蒼太の声が、かすかに震えた。彼は画面に表示されたメッセージを紙に書き写してから、眉間に皺を寄せた。
「『誰も行きたがらない場所』『昔はたくさんの人で賑わっていた場所』『笑顔と、悲しみが、交差する場所』——この三つの条件を満たす場所……」
 私は考えた。相反する感情が、同時に存在する場所。
「学校?」
「違う。学校は『誰も行きたがらない場所』ではない」
 蒼太の声には、確信があった。
「遊園地?」
「昔は賑わっていたけど、今は誰も行きたがらない遊園地……廃遊園地か。でも、笑顔はあっても、悲しみは少ない」
 蒼太は腕を組み、深く考え込んでいる。私も、頭の中で様々な場所を思い浮かべた。
「病院……?」
 私が呟くと、蒼太の目が鋭く光った。
「病院……そうだ。病院なら、全ての条件を満たす」
 蒼太の指が、リズミカルに腕を叩いた。思考が加速しているサインだ。
「誰も行きたがらない場所——病院は、病気や怪我をした時に行く場所。好んで行く人はいない」
「昔はたくさんの人で賑わっていた場所——でも、今は廃院になっている」
「笑顔と、悲しみが、交差する場所——病院では、新しい命が生まれる。それは笑顔。でも、命が終わる場所でもある。それは悲しみ」
 蒼太の説明を聞いて、私の胸に確信が広がった。
「じゃあ、この辺りに廃病院があるか調べてみよう」
 蒼太はスマホで検索を始めた。指が、素早く画面を滑る。
「あった……」
 私も画面を覗き込んだ。表示された場所は、学校から電車で二十分ほどの距離。建物名を見て、私は息を呑んだ。
「旧・希望ヶ丘総合病院」
 蒼太の声が、わずかに沈んだ。
「十五年前に閉鎖された病院だ。経営難で廃業して、今は廃墟になっている。地元では有名な心霊スポットとして知られている」
 私は、その名前に聞き覚えがあった。母が、昔この病院のことを話していた。「昔は、あそこで私が生まれたのよ」と。でも、今はもう廃墟になっている。誰も近づかない場所。
「今から行く?」
 私が聞くと、蒼太は時計を確認した。
「いや、今日はもう遅い。それに、廃病院は危険だ。準備が必要だ」
 もう午後五時を過ぎている。日が暮れるのも早い。窓の外は、すでにオレンジから紫へと色を変え始めていた。
「明日、午前中に準備を整えて、午後に行こう」
 蒼太は数秒の沈黙の後、真剣な表情で私を見た。
「それと、覚悟を。何が待っているか、わからない」
 その言葉に、私は力強く頷いた。覚悟——それは、春野さんたちを取り戻すという決意。そして、もし何かが起きても、逃げないという覚悟。
 私たちは体育館を後にした。夕日が、さらに沈んでいく。空は、深いオレンジ色から紫色へと変わり始めていた。足音が、廊下に響く。
 帰り道、私はずっと考えていた。旧・希望ヶ丘総合病院。そこに、春野さんたちがいる。そこに、全ての答えがある。でも、何が待っているのだろう。私たちは、本当に彼女たちを取り戻せるのだろうか。もし、失敗したら——そんな不安が、心の隅にあった。でも、同時に、絶対に取り戻すという決意もあった。春野さんたちの声を聞いた。彼女たちの苦しみを知った。だから、諦めるわけにはいかない。
Scene 2
 翌日——日曜日の朝、私は早く目が覚めた。今日、廃病院へ向かう日だ。
 朝食を食べながらも、頭の中は旧・希望ヶ丘総合病院のことでいっぱいだった。その廃墟に、何があるのだろう。『消えたい人のための場所』とは、具体的にどんな場所なのだろう。そして、春野さんたちは、今どんな状態でいるのだろう。
 午後一時、駅前で蒼太と待ち合わせた。
「準備はできてる」
 彼は小さなリュックサックを見せた。中には、懐中電灯、予備の電池、地図、応急処置キット、そして飲料水とエネルギーバーが入っているようだった。
「行こう」
「うん」
 私も頷いた。朝から、ずっと緊張していた。手のひらに、汗が滲んでいる。でも、これは恐怖だけではない。期待も混じっている。今日、全てが終わる。今日、春野さんたちを取り戻す。
 駅まで歩き、電車に乗る。日曜日の午前中、車内はそれほど混雑していなかった。窓の外を流れる景色を見ながら、私は深呼吸をした。落ち着け、と自分に言い聞かせる。
 二十分後、目的の駅に着いた。
 駅から十分ほど歩くと、周囲の雰囲気が変わり始めた。住宅が少なくなり、空き地が目立つようになる。道路も舗装が古く、ところどころひびが入っている。雑草が、アスファルトの隙間から生えている。
「この辺りは、過疎化が進んでるんだ」
 蒼太の声が、静かな空気を破った。
「病院が閉鎖されてから、住民も減った。今は、ほとんど人が住んでない。若い人は都市部へ出て行って、残っているのは高齢者だけだ」
 確かに、人の気配がない。静かすぎる。風が吹くたびに、木々が揺れる音だけが聞こえる。たまにカラスの鳴き声が響くが、それ以外は静寂だ。
 さらに進むと、大きな建物が見えてきた。
 旧・希望ヶ丘総合病院。
 五階建ての、古いコンクリート造りの建物。外壁は変色し、ところどころ崩れかけている。かつては白かったであろう壁も、今では灰色と茶色が混じった色になっている。窓ガラスの多くは割れていて、黒い穴のように見える。風が吹くたびに、割れたガラスの破片が音を立てる。カラカラという乾いた音。入口には、「立入禁止」の看板が立てられているが、文字は色褪せて読みにくくなっていた。フェンスも錆びていて、一部は倒れている。
「ここ……」
 私の声が、小さくなった。建物から発せられる、重苦しい雰囲気に圧倒されていた。まるで、建物そのものが何かを訴えかけているかのような。
「入口を探そう」
 蒼太は建物の周りを歩き始めた。私もその後を追う。足元には、割れた瓦礫や錆びた金属片が散らばっていて、注意深く歩かなければならなかった。一歩一歩が、慎重になる。
 正面玄関は、鉄の扉で封鎖されていた。大きな南京錠がかかっていて、開けることはできない。だが、建物の裏側に回ると、小さな扉が半開きになっているのが見えた。職員用の出入口だろうか。
「ここから入れる」
 蒼太が扉に手をかけた。ゆっくりと押し開ける。軋んだ音を立てて、扉がゆっくりと開く。金属が擦れ合う、耳障りな音。まるで、長い間開かれていなかった扉が、ようやく動き出したかのような音だった。
 中は、真っ暗だった。外から差し込む光だけが、わずかに廊下を照らしている。
 蒼太が懐中電灯を点けた。光が、暗闇の中を照らす。埃が舞い上がり、光の筋の中でキラキラと輝いた。
 そこは、病院の廊下だった。白いタイルの床には、埃が厚く積もっている。壁には、剥がれかけたポスターや案内板が残っていた。「内科」「外科」「小児科」という文字が、かすかに読める。天井からは、配線が垂れ下がっている。照明器具も、半分は落ちかけていた。
 空気は、湿気と黴の匂いが混じっていた。鼻をつく、不快な匂い。それに加えて、何か甘ったるいような、腐敗したような匂いも微かに漂っていた。
「足元に気をつけて」
 蒼太の警告が、廊下に響いた。私も、スマホのライトを点けた。二つの光源が、廊下を照らす。
 私たちは慎重に廊下を進んだ。一歩一歩、床の強度を確かめるように。廊下の両側には、診察室や病室の扉が並んでいる。扉のガラス窓からは、中の様子が少し見える。倒れたベッド、散乱したカルテ、壊れた医療機器——全てが、時間が止まったまま放置されている。まるで、ある日突然、全員がいなくなったかのような光景だった。
「ここに、本当に美咲たちがいるのかな」
 私の声は、不安で震えた。
「この辺りに廃病院はここしかない。それに、『消えたい人のための場所』という都市伝説は、この病院が舞台だという噂もある」
 蒼太の声には、確信があった。
「都市伝説……」
「ああ。十五年前、この病院が閉鎖された理由には、いくつかの噂がある。経営難というのは表向きの理由で、実際には何か不可解な事件があったという話もある。患者が次々と消えたとか、奇妙な現象が起きたとか」
 その話を聞いて、私の背筋に冷たいものが走った。でも、今は引き返せない。春野さんたちが、ここにいるのだから。
 廊下を進むと、階段が見えてきた。
「上に行こう」
 私たちは階段を上がり始めた。一段ずつ、慎重に。階段の手すりは錆びていて、触ると赤茶色の粉が手につく。階段も、ところどころひびが入っていて、踏むとギシギシと音を立てる。
 二階に着くと、そこも同じような廊下だった。ただ、一階よりも荒れている。床には、天井から落ちた石膏の破片が散らばっていた。壁紙も剥がれて、下地のコンクリートが露出している。
 廊下の奥に、何か光るものが見えた。
「あれ……」
 近づいてみると、それは壁に貼られた紙だった。新しい紙。最近、誰かが貼ったもののようだ。埃も被っていないし、色も褪せていない。
 紙には、矢印が描かれていた。そして、その下に文字が書かれている。
「この先へ」
 矢印は、廊下の奥を指していた。
「誰かが、道案内をしてくれてるのか?」
「美咲たちかもしれない。私たちが来ることを、待っていたんだ」
 私たちは矢印の方向へ進んだ。懐中電灯の光が、前方を照らす。廊下は長く、奥が見えない。でも、矢印を信じて進む。足音だけが、静かに響く。
 すると、また新しい紙が貼られているのが見えた。今度は、階段を指している。
「三階へ」
 私たちは三階へ上がった。階段を上がるたびに、心臓の鼓動が速くなっていく。もうすぐだ。もうすぐ、何かが見つかる。
 三階の廊下も、同じように荒れていた。だが、ここには何か違う雰囲気があった。空気が、少し冷たい。まるで、何かが待っているかのような。静寂も、より深い。自分たちの足音と呼吸音だけが、やけに大きく聞こえる。
 廊下の突き当たりに、大きな扉があった。他の扉よりも立派な、重厚な扉。
 扉には、プレートが掛かっている。
「旧・第三病棟 特別室」
 蒼太の手が、ドアノブに触れた。
「開けるぞ」
 私は深く頷いた。心臓が、激しく鳴っている。
 扉を開けると、そこは広い部屋だった。
 かつては、特別室だったのだろう。窓が大きく、部屋は明るい。夕日の光が、窓から差し込んでいる。床には、厚いカーペットが敷かれていた跡があるが、今は剥がれかけている。壁には、絵画が掛けられていた跡が残っている。
 部屋の中央には、大きなテーブルが置かれていた。木製の、立派なテーブル。そして、そのテーブルの上に——ノートパソコンが置かれていた。
 画面は点いていて、何かが表示されている。電源は、どこから取っているのだろう。バッテリーだろうか。
「これ……」
 私たちは、テーブルに近づいた。周囲を警戒しながら、ゆっくりと。足音が、部屋に響く。
 画面には、動画プレーヤーが表示されていた。そして、再生ボタンの横に、メッセージが書かれている。
「ここまで来てくれて、ありがとう。
 この動画を見てください。
 全ての真実が、ここにあります。
 ——二年B組一同」
 蒼太のマウスが、再生ボタンをクリックする。カチッという小さな音。
 動画が始まった。
Scene 3
 画面に映ったのは、この病院の一室だった。今、私たちがいる部屋と同じ場所のようだ。カメラの角度から、窓際に設置されていることがわかる。
 そこには、三十五人の生徒が座っていた。二年B組の全員だ。春野美咲、中村陽菜、田中健人——そして、他のクラスメイトたち。みんな、暗い表情をしていた。笑顔はない。ただ、疲れ果てた顔で、カメラを見つめている。目の下には隈ができている人もいる。髪も乱れている。いつも見る彼らとは、まるで別人のようだった。
 そして、春野さんが口を開いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「もし、この動画を見ているなら。
ありがとう。
ここまで辿り着いてくれて。
私たちの声を、聞いてくれて。
私は、春野美咲。
そして、ここにいるのは、二年B組の三十五名です。
私たちは今、『消えたい人のための場所』にいます。
でも、最初は違ったんです。
私たちは、それぞれ別々に、ここに来ました。
四月十九日——金曜日の夜から、
四月二十二日——月曜日の朝までの間に。
週末の間に、私たちは一人ずつ、
この病院を訪れました。
私が最初でした。
四月十九日の金曜日、午後十一時。
私は、ネットで見つけたんです。
『消えたい人のための場所』という都市伝説を。
そこに行けば、誰にも迷惑をかけずに、
世界から消えることができる。
そう書いてあった。
最初は、信じませんでした。
でも、だんだんと、本当かもしれないと思うようになった。
だって、私は本当に消えたかったから。
完璧な春野美咲を演じるのに、疲れた。
誰も、本当の私を見てくれない。
だから、消えたい。
金曜日の夜、家族が寝静まった後、
私はこっそり家を出ました。
ネットに書かれていた通り、
旧・希望ヶ丘総合病院へ。
午後十一時に、三階の特別室へ。
そこに、『それ』がいました。
人の形をした、何か。
でも、人じゃない。
顔がない。
真っ白な、何もない顔。
『それ』は、私に言いました。
『あなたは、消えたいのですか?』
私は、答えました。
『はい』
『それ』は、また聞きました。
『あなたの存在は、この世界にとって負担ですか?』
私は、少し躊躇しました。
でも、答えました。
『はい』
そう答えた瞬間、私は後悔しました。
本当は、そうじゃないかもしれない。
でも、もう遅かった。
『それ』は、言いました。
『では、消してあげましょう』
『ただし、条件があります』
『あなたが本当に消えたいのか、確かめます』
『七日間、あなたは記憶から消えます』
『もし、誰かがあなたの本当の姿を見つけてくれたら』
『もし、誰かがあなたの声を聞いてくれたら』
『もし、誰かがあなたを必要だと思ってくれたら』
『その時、あなたは戻ることができます』
『でも、誰も見つけてくれなかったら』
『あなたは、本当に消えます』
『世界から、完全に』
私は、その条件を受け入れました。
どうせ、誰も私を探さないと思ったから。
そして、私は消えました。
気がついたら、私はこの部屋にいました。
一人で。
時間の感覚がありませんでした。
どれくらい経ったのか、わからない。
でも、ずっと一人だった。
そして——
土曜日の夜、誰かが来ました。
陽菜でした。
私は、驚きました。
陽菜も、『それ』と契約したんだ。
陽菜も、消えたいと思っていたんだ。
私たちは、初めて話しました。
お互いのことを。
陽菜は、泣きながら言いました。
『ごめん、美咲。私、ずっと嫉妬してた』
私も、泣きながら言いました。
『私こそ、ごめん。気づいてあげられなくて』
私たちは、抱き合って泣きました。
親友なのに、こんな大切なことを、
今まで言えなかった。
そして、日曜日。
また誰かが来ました。
田中くんでした。
そして、次々と。
日曜日の夜までに、
二十人以上が集まりました。
月曜日の朝までに、
三十五人が集まりました。
私たちは、ここで気づいたんです。
みんな、同じだった。
みんな、何かを隠していた。
みんな、本当の自分を見せることが、怖かった。
でも、消えたくなかったんです。
ただ、楽になりたかっただけ。
本当の自分を、受け入れてほしかっただけ。
だから、私たちは決めました。
記憶のカケラを残そう。
もし、誰かが見つけてくれるかもしれない。
もし、誰かが私たちを必要だと思ってくれるかもしれない。
その希望を、信じよう。
月曜日、私たちが消えると、
世界が書き換わりました。
二年B組は、なかったことになりました。
でも、記憶のカケラは残りました。
なぜなら、それは『この世界の外』に置いたから。
一部は、消える前に準備しました。
一部は、消えた後、
『それ』の許可を得て、外の世界に置きました。
『それ』は、言いました。
『もし、誰かが五つ全ての記憶のカケラを見つけたら』
『その時、選択を与えましょう』
『記憶を取り戻すか、それとも完全に消すか』
だから、お願い。
私たちを、見つけて。
私たちの記憶を、取り戻して。
でも、時間は限られています。
月曜日の午後十一時に、
私たちは契約しました。
そこから七日間。
今日が、六日目です。
明日の午後十一時——
私たちが消えた時刻に、
私たちは完全に消えます。
記憶のカケラも、全て消えます。
そして、私たちは二度と戻れません。
お願い。
助けて。
この病院の、最上階。
五階の、屋上。
そこに、『それ』がいます。
そこで、最後の選択をしてください。
私たちは、待っています。
信じています。
誰かが、見つけてくれることを。
ありがとう。
本当に、ありがとう」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 動画が終わった。
 静寂が戻る。画面が暗くなる。
 私の頬を、涙が伝った。春野さんの言葉が、心に突き刺さる。彼女たちは、週末の間に、一人ずつこの病院を訪れた。金曜の夜から月曜の朝まで。それぞれが、誰にも言わずに、こっそりと。そして、『消えたい人のための場所』で、全員が集められた。そこで初めて、みんなが同じだったことに気づいた。お互いに隠していた本当の気持ち。お互いに抱えていた苦しみ。それが、ようやく言葉になった。
「金曜の夜から月曜の朝……」
 蒼太の声が、震えた。
「だから、月曜日に突然、全員が消えたように見えたんだ。実際には、週末の間に一人ずつ消えていたけど、世界が書き換わったのは月曜日だった」
「明日の午後十一時……」
 私は時計を確認した。今は午後二時半。あと、二十四時間以上ある。でも、それほど余裕があるわけではない。
「五階の屋上……」
 蒼太が立ち上がった。椅子が、床を擦る音を立てる。
「今から行こう。今日、決着をつけよう」
 私も深く頷いた。もう、躊躇している時間はない。
 私たちは、部屋を出て、階段へ向かった。
Scene 4
 四階へ、そして五階へと階段を上がった。階段は、下の階よりもさらに傷んでいた。手すりが完全に外れている箇所もあり、壁を手で支えながら慎重に上がる。金属の軋む音が、不気味に響く。
 五階は、他の階よりもさらに荒れていた。床には、大きな穴が開いている箇所もあった。天井も、一部が崩れ落ちている。配線や配管が剥き出しになっていて、まるで建物の内臓が露出しているかのようだった。窓ガラスはほとんど割れていて、風が吹き込んでくる。
「気をつけて」
 蒼太の手が、私の手を握った。その手は、温かく、そして少し震えていた。私の手を、しっかりと握っている。
 私たちは、床の強度を確かめながら、ゆっくりと進んだ。一歩間違えれば、床が抜けて下に落ちるかもしれない。足音が、慎重に、ゆっくりと響く。
 廊下の突き当たりに、屋上への扉が見えた。
 扉には、「屋上 関係者以外立入禁止」と書かれた札が掛かっている。文字は色褪せているが、まだ読める。
 蒼太の手が、扉に触れた。ゆっくりと押す。鍵はかかっていなかった。軋んだ音を立てて、扉がゆっくりと開く。金属が悲鳴を上げるような音。
 外は、もう暗くなり始めていた。西の空だけが、オレンジ色に染まっている。夕焼けだ。春野さんが最後に見た夕焼けと、同じ色。
 屋上は、広い空間だった。フェンスで囲まれていて、床にはひびが入っている。ところどころに、雑草が生えている。かつては、患者がリハビリやレクリエーションで使っていた場所なのだろう。ベンチの残骸や、錆びた車椅子が放置されていた。
 そして、屋上の中央に——それが、立っていた。
 人の形をした、何か。
 身長は、大人と同じくらい。白い、全身が白い。服を着ているわけではない。肌そのものが、真っ白なのだ。まるで、石膏像のような。
 でも、顔がない。
 真っ白な、何もない顔。
 目も、鼻も、口もない。
 ただ、白い。
 のっぺらぼうという言葉が、頭に浮かんだ。でも、それよりももっと不気味だった。顔がないのに、こちらを見ている気がする。顔がないのに、表情があるような気がする。
 それは、音もなく私たちの方を向いた。
 静かに。
 そして——話し始めた。
「ようこそ」
 声が、聞こえた。
 でも、どこから聞こえてくるのか分からない。それの口から聞こえているわけではない——口がないのだから。空気が震えて、直接頭の中に響いてくるような、不思議な声だった。男性のような、女性のような、大人のような、子供のような、判別できない声。
「あなたたちを、待っていました。桜井楓と、柊蒼太」
 私たちの名前を呼ばれて、私は一歩後ずさった。足が、わずかに震える。なぜ、私たちの名前を知っているのだろう。
「お前が、春野さんたちを消したのか」
 蒼太の声には、怒りが込められていた。でも、同時に恐怖も混じっている。拳が、固く握られている。
「消した、というのは正確ではありません」
 それは、ゆっくりと答えた。動きは、とても滑らかだった。まるで、重力の影響を受けていないかのような。
「彼らは、自分で選択したのです。『消えたい』と。私は、その願いを叶えただけです」
「でも、彼らは後悔してる!」
 私が叫んだ。声が、震えている。でも、負けるわけにはいかない。
「本当は、消えたくなかった。ただ、楽になりたかっただけなの!」
「それは、あなたたちが証明しました」
 それは、少し頭を傾げた。首が、不自然な角度に曲がる。人間なら、骨が折れるような角度だ。
「五つの記憶のカケラを見つけた。彼らの本当の姿を、見た。彼らの声を、聞いた。そして、彼らを必要だと思った。条件は、満たされました」
 それは、音もなく私たちに近づいてきた。滑るように。足音がしない。まるで、地面に触れずに移動しているかのような。
「では、最後の選択です」
 それは、私たちの前で止まった。距離は、三メートルほど。冷たい空気が、肌に触れる。
 そして、ゆっくりと手を伸ばした。白い手。指が、五本。人間の手のようで、でも何か違う。関節の位置が、微妙におかしい。
「彼らの記憶を、取り戻しますか? それとも、このまま完全に消しますか?」
 その質問に、私たちは即座に答えた。声が重なる。
「取り戻す!」
 蒼太と私は、同時に叫んだ。
「当たり前だ!」
「もちろん!」
「では——」
 それは、手を私たちの前に差し出した。白い手が、夕日に照らされている。
「この手を、取ってください。そうすれば、彼らの記憶が戻ります」
 私は、その手を見つめた。白い、不気味な手。これを握れば、春野さんたちの記憶が戻ってくる。でも——
「ただし」
 それは、続けた。
「代償があります」
 やはり——
「代償……?」
「あなたたちは、彼らの記憶を共有することになります。彼らが感じた苦しみを、全て体験することになります。彼らが抱えていた痛みを、全て背負うことになります。それは、とても辛いことです。人によっては、耐えられないかもしれません。それでも、いいですか?」
 私は、蒼太を見た。蒼太の視線が、私に向けられた。お互いの目を見つめ合う。その目には、同じ決意が宿っていた。
「いいよ」
 私が答えた。声は、しっかりしていた。
「それぐらい、なんでもない」
「ああ」
 蒼太の瞳に、強い光が宿った。
「彼らの苦しみを知った今、それを背負うのは当然だ」
「では——」
 それは、また手を差し出した。
「どうぞ」
 私たちは、顔を見合わせて頷き合った。そして、同時に、それの手を取った。
 瞬間——世界が、光に包まれた。まぶしい、白い光。目を開けていられないほどの光。そして、私の頭の中に、たくさんの記憶が流れ込んできた。
 春野美咲の記憶。
 朝、鏡の前で笑顔を作る練習をする。何度も、何度も、完璧な笑顔になるまで。頬の筋肉が痛くなるまで。テストで98点を取って、周りからは褒められるのに、自分では100点じゃなかったことを責める。クラスで発表する時、手が震えているのを必死に隠す。陽菜に「大丈夫?」と聞かれて、「大丈夫」と嘘をつく。夜、一人で泣く。誰にも見られないように、声を殺して。
 中村陽菜の記憶。
 美咲と比べられて、「中村さんも春野さんみたいになれたらいいのに」と言われる。美咲の隣にいるのが、辛い。でも、それを言えない。親友なのに、嫉妬している自分が嫌い。美咲が失敗すればいいのに、と思ってしまう自分が嫌い。そんな自分を、許せない。美咲の前では、明るく振る舞う。でも、家に帰ると、一人で泣く。
 田中健人の記憶。
 ギターの練習をする。何時間も、何時間も。でも、うまくならない。他のバンドメンバーは、すぐに弾けるようになる。自分だけ、遅れている。「田中、うまいよな」と言われて、嘘の笑顔で答える。「ありがとう」と。でも、本当は全然うまくない。文化祭が近づくにつれ、プレッシャーが増していく。もう、やめたい。でも、やめられない。
 そして、他のクラスメイトたちの記憶。
 家族の期待に応えられない自分を責める記憶。友達に本当のことを言えない記憶。完璧であろうとして疲れ果てる記憶。劣等感に苛まれる記憶。孤独に耐える記憶。
 みんな、苦しんでいた。みんな、一人で抱え込んでいた。みんな、助けを求められなかった。
 その苦しみが、痛みとなって、私の心に突き刺さる。胸が、締め付けられる。息ができない。苦しい。辛い。涙が、溢れてくる。こんなにも、彼らは苦しんでいたのか。こんなにも、痛みを抱えていたのか。
 でも——同時に、温かいものも感じた。
 彼らの、希望。もう一度、やり直したいという願い。本当の自分を、見せたいという想い。お互いを、理解し合いたいという願い。
 それが、私の心を満たしていく。苦しみの中にも、希望がある。痛みの中にも、温かさがある。
 光が、消えた。
 私たちは、屋上に立っていた。
 それは、まだそこにいた。
 そして——誰もいなかった。
「え……?」
 私は周りを見回した。蒼太も、困惑した表情で辺りを見渡している。
「春野さんたちは……?」
 その時、「それ」の声が聞こえた。
「記憶は、戻りました」
 空気が震え、直接頭の中に響いてくる。
「あなたたちは、彼らの記憶を共有しました。彼らの苦しみを知りました。彼らの想いを受け取りました。でも——」
 それは、少し間を置いた。
「存在は、まだです」
「どういうこと……?」
 蒼太の声が、震えた。拳が、固く握られている。
「記憶と存在は、別のものです」
 それは、ゆっくりと説明し始めた。
「今、あなたたちは彼らの記憶を持っています。彼らが何を感じ、何を考え、どう生きてきたか——その全てを知っています。でも、彼ら自身は、まだ世界に戻っていません」
「それは——」
 私の声が、かすれた。喉が、震えている。
「彼らは、戻れないってこと……?」
「いいえ」
 それは、首を横に振った。不自然な動き。まるで、人形のような。
「彼らは、戻ることができます。満月の夜——2024年5月22日午後8時34分。その時、世界が書き換わります。もし、あなたたちが本当に『完璧じゃなくてもいい場所』を作れたなら。もし、学校全体が本当に『弱さを見せてもいい場所』になったなら。その時、彼らは存在として戻ります」
 それの声は、静かだった。でも、その言葉には重みがあった。
「でも、もし——」
「それ」の声が、少し悲しげに響いた。
「もし、形だけの場所だったなら。もし、本当に受け入れる準備ができていなかったなら。記憶だけが残り、存在は消えます。彼らは、二度と戻りません」
 私の心臓が、激しく鳴った。形だけの場所では、ダメ。本物を作らなければ。本当に、誰でも受け入れられる場所を。
「わかった」
 私は、拳を握りしめた。
「やってみせる。本物の『消えない教室』を作る」
「ああ」
 蒼太も、強く頷いた。眼鏡の奥の目が、鋭く光っている。
「必ず、本物の場所を作る。形だけじゃない、心からの場所を」
「では——」
 それは、ゆっくりと消えていった。まるで、朝霧が晴れるように。体が、少しずつ透明になっていく。
「また、満月の夜に。その時、あなたたちの答えを、見せてください」
 それの姿が、完全に消えた。
 屋上には、私たちだけが残された。夕日が、さらに沈んでいく。オレンジ色の空が、少しずつ紫色に変わっていく。
 私たちは、しばらく屋上に立ち尽くしていた。
 春野さんたちの記憶が、胸の中にある。彼女たちの苦しみ、痛み、そして希望——その全てが、私たちの中に刻まれている。
 でも、彼女たちはまだ戻っていない。
 満月の夜まで——あと三週間。
 その時までに、本物の場所を作らなければ。
「帰ろう」
 蒼太が言った。その声は、いつもより力強かった。
「明日から、準備を始める。本物の『消えない教室』を作るために」
「うん」
 私も深く頷いた。
「形だけじゃない、心からの場所を」
 私たちは、廃病院を後にした。
 階段を降り、廊下を歩き、建物を出る。外は、もう暗くなっていた。星が、一つ、また一つと瞬き始めていた。
 春野さんたちの記憶を胸に。彼女たちの想いを背負って。
 駅へ向かう道を、歩く。足音が、静かな夜道に響く。
「記憶を取り戻した……」
 私が呟くと、蒼太が頷いた。
「ああ。でも、これは始まりだ。本当の勝負は、これからだ」
「満月の夜まで、あと三週間。その時、春野たちが本当に戻ってくるかどうかは、僕たちにかかってる」
 電車に乗り、窓の外を見る。流れていく夜景。街の明かり。
 私のスマホが、通知音を鳴らした。特設サイトが、更新されている。
https://kieta-kyoushitsu.com/challenge/final-mission
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╔═══════════════════════════════════════╗

║ 【最終ミッション】
║ Final Mission

╚═══════════════════════════════════════╝
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【記憶の復活 完了】 ✓
あなたは、35人の記憶を取り戻しました。
でも、これで終わりではありません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【最終ミッション】 🎯
満月の夜——2024年5月22日午後8時34分
その時、世界が書き換わります。
もし、本物の場所を作れたなら、
35人は存在として戻ります。
でも、形だけの場所なら、
記憶だけが残り、存在は消えます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【条件】 📋
本物の『消えない教室』とは:
✓ 完璧じゃなくてもいい場所
✓ 弱さを見せてもいい場所
✓ 本当の気持ちを話せる場所
✓ 誰も一人で抱え込まない場所
形だけではダメ。
心からの場所でなければ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カウントダウン】 ⏰
満月まで: 21日 3時間 45分
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【読者参加:あなたならどうする?】 💭
もしあなたが楓と蒼太なら、
どうやって本物の場所を作りますか?
┌─────────────────────────

│ あなたのアイデア:
│ ┌───────────────────────┐ │
│ │
│ │
│ │
│ └───────────────────────┘ │

│ [投稿する]

└─────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【他の探偵のアイデア】 💡
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0127 (2分前)
「SNSで#消えない教室を広める。
同じように苦しんでる人に届ける」
♥ 共感 89 💭 返信 23
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0456 (5分前)
「学校に気持ちボックスを設置。
匿名で本音を言える場所を作る」
♥ 共感 134 💭 返信 45
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🕵️ 探偵 #0892 (8分前)
「文化祭で展示。たくさんの人に
メッセージを届ける」
♥ 共感 267 💭 返信 78
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[もっと見る (1,247件)]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次の章へ】 ▶️
さあ、準備を始めましょう。
満月の夜まで、時間は限られています。
[第5章へ進む →]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 画面を見つめながら、私は深く息を吸った。
 満月まで——あと三週間。
 その時までに、必ず。
 本物の場所を作る。
 春野さんたちが、安心して戻ってこれる場所を。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第4章 完】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━