Scene 1
翌日の放課後、私と蒼太は再び図書室に集まった。昨日見つけた手がかり——「彼女が想いを残した場所」を探すためだ。
「夕焼けが美しく見える場所、禁じられた場所、彼女の想いが残された場所……」
蒼太は図書室の隅の席に座り、スマホを操作していた。私も隣に座る。窓から差し込む午後の光が、彼の眼鏡のレンズに反射している。
「春野さんの最後の投稿、もう一度確認しよう」
「昨日見たよね。夕焼けの写真」
「ああ。でも、投稿時刻や位置情報を詳しく調べてみる」
蒼太はインスタグラムを開き、春野さんの最後の投稿を表示させた。
四月十九日、午後六時十五分。
オレンジ色に染まった空。その下に見える校舎。光と影のコントラストが美しい写真。
キャプション:「夕焼けって、なんでこんなに切ないんだろう」
「この角度……」
蒼太が写真を拡大した。指先で画面を操作しながら、細部を確認している。
「間違いない。これは高い場所から撮影されている。校舎の位置関係、フェンスの一部が写り込んでいる様子——地上からでは、こういう構図にはならない」
「高い場所……」
「学校で一番高くて、夕焼けが美しく見える場所。そして、普段は立入禁止になっている『禁じられた場所』」
私は息を呑んだ。
「屋上……」
「そう。『夕焼けが美しく見える場所』『禁じられた場所』『彼女の想いが残された場所』——全て屋上のことを指している」
確かに、屋上は普段立入禁止になっている。鍵がかかっていて、生徒は自由に入れない。危険だからという理由で、何年も前から封鎖されていた。
でも、春野さんはそこに行った。最後の夕焼けを見るために。
「でも、どうやって入ったんだろう。屋上の鍵は職員室にあるはずなのに」
「裏がある」
蒼太の声には、確信が込められていた。
「防火扉。あそこの鍵が壊れてるんだ。前に、図書委員の仕事で遅くまで残ってた時、偶然見つけた。誰も気づいてないみたいだけど」
「じゃあ、そこから……」
「ああ。今から行こう」
私たちは図書室を出た。廊下には、部活動を終えた生徒たちがちらほらいる。笑い声、足音、部室へ向かう話し声——いつもの放課後の風景。私たちは人目を避けながら、最上階へと向かった。
階段を上がるたびに、心臓の鼓動が速くなっていく。これから何を見つけるのだろう。春野さんは、あの屋上に何を残したのだろう。
最上階に着いた。廊下の突き当たりに、防火扉がある。赤い文字で「関係者以外立入禁止」と書かれた札が掛かっている。その文字が、妙に重く感じられた。
蒼太は周囲を確認してから、扉を押した。軋んだ音を立てて、扉がゆっくりと開く。まるで、長い間開かれていなかった扉が、ようやく動き出したかのような音だった。
外から、風が吹き込んできた。冷たくて、少し湿った風。春の終わりの風だ。
私たちは屋上へと足を踏み出した。
夕日が、ちょうど沈みかけていた。空は深いオレンジ色に染まり、雲が赤く燃えているように見える。この景色を、春野さんも見ていたのだろう。消える前日の夕方、ここに立って。同じ風を感じて、同じ空を見上げて。
「美しいな」
蒼太が呟いた。その声は、いつもの冷静さの中に、わずかな感傷が混じっていた。
「でも、切ない」
私は空を見上げながら答えた。
「夕焼けって、一日の終わりを告げる景色だから。光が消えていく瞬間だから。終わりの始まり」
私たちは屋上を歩いた。フェンスに囲まれた、広い空間。コンクリートの床には、ところどころひびが入っている。普段は誰も来ない場所。だからこそ、もし何か残されているとしたら、そのまま残っている可能性が高い。
フェンスに沿って歩いていくと、蒼太が足を止めた。
「あそこ」
彼が指さした先——フェンスの支柱の根元、風雨に晒されにくい場所に、何かが置かれているのが見えた。
近づいてみると、それは小さなノート。手のひらサイズの、黒い表紙のノートだった。防水加工されたビニール袋に入れられていて、雨に濡れても大丈夫なようになっている。
蒼太がそれを拾い上げる。ビニール袋から取り出すと、表紙に金色のペンで文字が書かれているのが見えた。
「M.H.」
そのイニシャルを見た瞬間、心臓が跳ねた。
「Misaki Haruno……春野美咲のイニシャル」
私の声が震えた。これは、彼女が残したものだ。彼女が、誰かに見つけてほしくて、ここに置いていったものだ。
Scene 2
蒼太は慎重にノートを開いた。そこには、丁寧な字でびっしりと文章が書かれていた。日付があり、その下に彼女の思いが綴られている。インクの色は少し褪せているが、文字ははっきりと読める。
これは、日記だった。
私たちは顔を見合わせた。お互いの目に、同じ決意が浮かんでいるのが分かった。これを読まなければならない。春野さんの本当の気持ちを、知らなければならない。
無言で、最初のページを読み始めた。
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4月10日
また「完璧な春野さん」って言われた。
成績も良くて、明るくて、友達も多い。
でも、誰も本当の私を知らない。
疲れた顔を見せたら、失望されるかな。
今日、テストで98点を取った。
みんなは「すごいね」って言ってくれた。
でも、私は100点じゃなかったことに落ち込んでた。
そんな自分が、嫌になる。
完璧じゃない自分を、受け入れられない。
他の人も、受け入れてくれない気がする。
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ページをめくると、次の日付が現れた。春野さんの心の軌跡が、日付順に記されている。
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4月12日
今日、クラスで発表があった。
私の番が来て、前に立って話した。
みんな、静かに聞いてくれた。
発表が終わったら、拍手してくれた。
「さすが春野さん」「わかりやすかった」
そんな声が聞こえた。
でも、私の手は震えてた。
声も、途中で詰まりそうになった。
誰も気づかなかったみたいだけど。
完璧な発表に見えたかもしれない。
でも、私の中では、全然完璧じゃなかった。
いつもそう。
表面だけ完璧で、中身はボロボロ。
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4月15日
陽菜が「最近元気ないね」って聞いてきた。
「大丈夫」って答えた。
また嘘をついた。
本当は、全然大丈夫じゃない。
毎日笑顔を作るのに疲れてる。
朝起きると、今日も演じなきゃいけないって思う。
完璧な春野美咲を。
でも、それを言えない。
陽菜は私の親友だって思ってた。
でも、私は親友に本当のことを言えない。
これって、本当に友達なのかな。
陽菜は、私のことを「完璧な春野さん」って見てる。
私が弱音を吐いたら、がっかりするかな。
私が泣いてるところを見たら、引くかな。
怖くて、聞けない。
だから、ずっと笑い続ける。
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私は胸が痛んだ。春野さんは、親友の中村さんにも本当のことを言えなかったのだ。二人は、いつも一緒にいた。休み時間も、放課後も、お昼も。廊下ですれ違うたびに、楽しそうに話していた。誰が見ても、親友同士だった。
でも、春野さんは孤独だった。たくさんの人に囲まれていても、誰にも本当の自分を見せられなくて、一人で苦しんでいた。
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4月17日
今日、体育の時間にバスケをした。
私のチームが勝った。
みんな、喜んでくれた。
「春野さんのおかげだよ」って。
でも、途中でミスをした。
パスを落としたり、シュートを外したり。
誰も責めなかったけど、私は自分を責めてた。
完璧じゃなかった。
また、完璧じゃなかった。
家に帰って、鏡を見た。
そこに映ってるのは、誰だろう。
「完璧な春野美咲」?
それとも、本当の私?
わからない。
もう、わからない。
最近、鏡の中の自分が、他人に見える。
笑顔を作ってる自分が、演技してる自分が、
まるで別の誰かみたいだ。
本当の私は、どこにいるんだろう。
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4月18日
最近、変な夢を見る。
教室が消える夢。
クラスメイトが消える夢。
私が消える夢。
夢の中で、私は叫んでる。
「助けて」って。
でも、誰も気づいてくれない。
みんな、「完璧な春野美咲」しか見てないから。
本当の私は、透明人間みたいだ。
目の前にいるのに、誰も見てくれない。
起きると、いつもの教室がある。
いつものクラスメイトがいる。
でも、本当にここにいていいのかな。
私は、本当に存在してるのかな。
時々、自分が本当に存在しているのか、わからなくなる。
鏡を見ても、そこに映っているのは「完璧な春野美咲」であって、
本当の私じゃない。
本当の私は、どこにいるんだろう。
いつから、いなくなってしまったんだろう。
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ページをめくる手が震えた。春野さんは、自分の存在そのものに疑問を持ち始めていた。それほどまでに、彼女は追い詰められていたのだ。
「これ……」
私の声が途切れた。言葉が、喉の奥で詰まってしまう。
「辛すぎる」
ようやく絞り出したその言葉に、蒼太は小さく頷いた。彼の目にも、いつもの冷静さとは違う感情が浮かんでいた。
「彼女は、誰にも助けを求められなかった。完璧であることを期待され続けて、弱音を吐くことすらできなかった。『助けて』って言うことが、許されなかった」
最後のページに近づくにつれ、日記の文章は短くなっていった。まるで、彼女の心が少しずつ削られていくように。言葉にする力すら、失われていくように。
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4月18日(続き)
もう、わからない。
何が本当で、何が嘘なのか。
私は誰なのか。
何のために生きているのか。
完璧な春野美咲として生きることに、疲れた。
でも、本当の私として生きることもできない。
だって、本当の私なんて、もうわからないから。
消えたい。
ネットで見つけた。
「消えたい人のための場所」
都市伝説だと思う。
でも、もし本当なら——
誰にも迷惑をかけずに、
誰にも覚えられずに、
静かに消えることができる。
それが、私の願い。
明日、確かめに行く。
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4月19日
今日、屋上に来た。
夕焼けがとても綺麗だった。
オレンジ色の空を見ていたら、涙が出てきた。
なんで泣いてるのか、自分でもわからない。
綺麗なものを見ると、悲しくなる。
幸せそうな人を見ると、苦しくなる。
笑顔を作ると、心が痛くなる。
もう、限界だ。
完璧な春野美咲を演じるのに、疲れた。
誰も、本当の私を見てくれない。
みんな、「完璧な春野美咲」しか見てない。
本当の私は、透明人間みたいだ。
今夜、私は消える。
きっと誰も気づかない。
だって、みんなが見てるのは、「完璧な春野美咲」という幻だから。
本当の私は、最初からいなかった。
さようなら。
本当は、誰かに「助けて」って言いたかった。
でも、言えなかった。
完璧な春野美咲は、弱音を吐かないから。
でも、最後に一つだけ。
もし誰か、この日記を見つけてくれたら。
本当の私を、知ってほしい。
完璧じゃない、弱くて、ダメな私を。
それが、私の最後の願い。
次の記憶は、私が夢見ていた場所にある。
幸せだった頃の思い出がある場所。
まだ「完璧」じゃなくてよかった頃の場所。
座標:35.6892, 139.6917
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日記はそこで終わっていた。
私は、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。目頭が熱くなり、視界が滲む。春野さんは、こんなにも苦しんでいたのか。いつも笑顔で、明るくて、完璧に見えた彼女が、その裏でこんなにも追い詰められていたなんて。
「桜井……待って」
蒼太の声が聞こえた。彼が日記の最後のページを指さしている。
「これ、見て」
最後のページの裏側——そこに、小さな二次元コードが貼られていた。黒い四角いパターンが、白い紙の上に浮かび上がっている。
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「二次元コード……」
蒼太はスマホを取り出し、カメラでコードをスキャンした。画面に、URLが表示される。
https://kieta-kyoushitsu.com/memory/02-haruno-misaki-diary
「開いてみよう」
蒼太がリンクをタップすると、スマホの画面が切り替わった。黒い背景に、白い文字が浮かび上がる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╔═══════════════════════════════════════╗
║
║ 【記憶のカケラ #02】
║ 春野美咲の日記
║
║ 【進行状況】 [●●○○○] 2/5
║
╚═══════════════════════════════════════╝
このページには、彼女が屋上に残した日記があります。
┌─────────────────────────
│
│ [📖 春野美咲の日記を読む]
│
│ ※ 既に物語本編で読んだ内容です
│
└─────────────────────────
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【あなたへの問いかけ】
もし、あなたが春野美咲のクラスメイトだったら——
完璧な笑顔の裏に隠された苦しみに、
気づけたでしょうか?
「大丈夫?」と声をかけられたでしょうか?
それとも、私たちと同じように、
「完璧な春野さん」という表面だけを
見ていたでしょうか?
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【メッセージボード】
あなたなら、春野美咲にどんな言葉をかけますか?
┌─────────────────────────
│ あなたの名前(任意):
│ ┌─────────────────────┐
│ │
│ └─────────────────────┘
│
│ メッセージ:
│ ┌─────────────────────┐
│ │
│ │
│ │
│ │
│ └─────────────────────┘
│
│ [送信する]
│
└─────────────────────────
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【他の読者からのメッセージ】 💬
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👤 記憶の探偵 #0127 (2時間前)
「『大丈夫?』って本当に心から聞けたかな…
自分も完璧を演じてるから、気づけなかったと思う」
♥ 共感 247 💬 返信 12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 透明だった私 (5時間前)
「私も完璧を演じてた。
美咲の気持ちが痛いほどわかる。
『無理しないで』『そのままでいいよ』って
誰かに言ってほしかった」
♥ 共感 891 💬 返信 34
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 元クラスメイト (8時間前)
「『頑張ってるね』じゃなくて
『頑張らなくてもいいよ』って言いたかった。
でも当時は気づけなかった。ごめん」
♥ 共感 1,203 💬 返信 56
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 高校教師 (12時間前)
「教師として、完璧を求めてしまっていた。
『できて当たり前』という空気を作っていた。
生徒一人一人の心に、もっと寄り添うべきだった」
♥ 共感 2,456 💬 返信 89
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 親友だった人 (1日前)
「陽菜の気持ちもわかる。
親友に嫉妬して、でも言えなくて。
お互いに本当の自分を隠してた。
今なら『一緒に泣こう』って言える」
♥ 共感 3,127 💬 返信 134
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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物語を読み進めてください。
[← 記憶のカケラ#01] [第3章へ進む →]
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私たちはしばらく、画面を見つめていた。
たくさんの人々のメッセージ。知らない誰かが、春野さんに向けて書いた言葉。完璧じゃなくてもいい、そのままでいい、無理しないで——そんな優しい言葉たち。
もし、春野さんが生きているときに、こんな言葉をかけてもらえていたら。
もし、誰かが本当の彼女を見て、受け入れてくれていたら。
きっと、何かが変わっていたはずだ。
「桜井」
蒼太の声が聞こえた。彼もまた、動揺しているのだろう。その声は、いつもより少し震えていた。
「私……気づいてあげられなかった」
私の声が震えた。
「いつも一緒にいたのに。休み時間に一緒にお昼食べて、放課後に一緒に帰って。でも、全然気づかなかった。美咲が笑ってたから、幸せなんだって思ってた」
「僕もだ」
蒼太は日記を閉じた。その手が、わずかに震えている。
「同じクラスだったのに、何も気づけなかった。いや、気づこうともしなかった。彼女の笑顔を見て、それで満足してた。その裏に何があるかなんて、考えもしなかった」
蒼太はスマホを取り出し、日記に書かれていた座標を地図アプリに入力した。画面上にピンが立つ。
「ここは……」
場所は、学校から徒歩十五分ほどの距離。地図上の建物名を見て、蒼太が小さく息を呑んだ。
「シネマ・パラダイス」
「シネマ・パラダイス……」
私はその名前を知っていた。十年以上前に閉館した、古い映画館。今は廃墟になっていると聞いていた。幼い頃、母がその名前を口にしたことがある。「昔は、あそこで映画を見るのが楽しみだったのよ」と。
「なぜ、美咲はこの場所を『夢見ていた場所』って……」
そのとき、日記の別のページに何か挟まっているのに気づいた。小さな写真だ。角が少し折れていて、大切に持ち歩かれていたことが分かる。
蒼太がそれを取り出すと、そこには若い頃の春野さんらしき少女が、映画館の前で笑っている写真があった。両親と思われる大人と一緒に、満面の笑みを浮かべている。少女の手には、ポップコーンの入った紙袋。父親の肩に手を置き、母親が優しく見守っている。三人とも、心から幸せそうだった。
写真の裏には、手書きで文字が書かれていた。少し拙い、子供の字だ。
「8歳のたんじょう日。パパとママといっしょに。いつか、また来たい」
私はその写真を見つめた。そこに写っている少女は、心から楽しそうに笑っていた。完璧な笑顔じゃない。ただ、嬉しくて、幸せで、笑っている。何も演じていない、本当の笑顔。そんな笑顔だった。
「彼女が夢見ていた場所……」
蒼太の声には、深い理解が滲んでいた。
「それは、まだ『完璧な春野美咲』を演じる前の、本当の自分がいた場所なのかもしれない。期待されることもなく、比べられることもなく、ただの子供でいられた場所」
夕日が、さらに沈んでいた。空は深い紫色に変わり始めている。星が、一つ、また一つと瞬き始めた。
「明日、行こう」
蒼太の声には、決意が込められていた。
「シネマ・パラダイスに。そこに、次の記憶のカケラがあるはずだ」
私たちは屋上を後にした。防火扉を通り、階段を降りる。校舎の中は、もう薄暗くなっていた。誰もいない廊下を歩きながら、私は春野さんの日記の言葉を反芻し続けていた。
校門を出るとき、私は振り返って校舎を見た。あの屋上で、春野さんは最後の夕焼けを見ていた。そして、何を思ったのだろう。今夜消えることを決めながら、あの美しい景色を見て、涙を流して。
「桜井」
蒼太が声をかけてきた。
「明日、ここで待ち合わせしよう。放課後すぐに」
「うん。わかった」
私たちは別れ、それぞれの家路についた。
歩きながら、私は春野さんの日記のことを考え続けていた。彼女は、本当の自分を見てほしかった。完璧じゃない、弱くて、ダメな自分を。でも、誰もそれに気づかなかった。私も気づかなかった。
もし、あのとき気づいていたら。もし、彼女に「大丈夫?」って、本当に心配して聞いていたら。何か変わっていたのだろうか。
でも、今さら後悔しても仕方がない。今できることは、真実を見つけること。そして、春野さんを——みんなを取り戻すこと。
Scene 3
翌日の放課後、私たちは学校を出て、シネマ・パラダイスへと向かった。
住宅街を抜け、古い商店街を通り過ぎる。かつては賑わっていたであろう商店街も、今ではシャッターを閉めた店が多く、寂れた雰囲気が漂っていた。看板の文字は色褪せ、ところどころ剥がれ落ちている。道路には雑草が生えていて、舗装のひび割れから小さな花が咲いていた。時折、すれ違う高齢者の姿が、この街の過疎化を物語っていた。
「ここ、昔は賑やかだったんだろうね」
私が呟くと、蒼太は頷いた。
「ああ。調べてみたんだ。シネマ・パラダイスは、三十年以上前に建てられた。当時、この街で唯一の映画館だった。週末には行列ができるほど人気だったらしい。子供たちにとっての娯楽の中心地だった」
「でも、今は……」
「十年前に閉館した。大型のシネコンができて、客足が減ったんだ。建物は老朽化して、取り壊しの話も出てたけど、予算がなくて放置されてる。いずれは壊されるだろうけど、今はまだそのままだ」
蒼太の声には、どこか寂しさのようなものが滲んでいた。彼もまた、時代の流れとともに忘れ去られていくものに、何かを感じているのかもしれない。春野さんたちのように。
十五分ほど歩くと、目的地が見えてきた。
シネマ・パラダイス。
建物は、想像以上に大きかった。三階建ての古い洋館のような造りで、正面には大きな看板が掛かっている。だが、看板の文字は半分剥がれ落ちていて、「シネ パラ イ」とだけ読める状態だった。
外壁は色あせ、ところどころにひびが入っている。かつては鮮やかだったであろう赤い塗装も、今では茶色く変色し、剥がれかけた部分から下地のコンクリートが露出していた。入口のガラス扉は割れ、破片が地面に散らばっている。中は暗闇に包まれていて、何も見えなかった。
「ここ……本当に入れるの?」
私の声は、自分でも驚くほど小さくなっていた。建物から発せられる、何か重苦しい雰囲気に圧倒されていた。
「裏口があるはずだ」
蒼太は建物の周りを歩き始めた。私もその後を追う。足元には、割れた瓦礫や錆びた金属片が散らばっていて、注意深く歩かなければならなかった。
建物の裏側に回ると、確かに小さな扉があった。「関係者専用」と書かれた札が掛かっているが、もう誰も管理していないのだろう。扉の周りには、蔦が絡まっていて、長い間開かれていなかったことが分かる。
蒼太がドアノブを回すと、軋んだ音を立てて扉が開いた。まるで、長い間開かれていなかった扉が、ようやく動き出したかのような音だった。金属が擦れ合う、耳障りな音。
「入ろう」
中は薄暗く、埃っぽい匂いがした。湿気と古い木材の匂いが混じり合って、鼻をつく。それに加えて、何か甘ったるいような、腐敗したような匂いも微かに漂っていた。床には古い映画のポスターが散乱していて、壁には剥がれかけたペンキの跡が残っている。
蒼太はスマホのライトを点けた。光が、暗闇の中を照らす。埃が舞い上がり、光の筋の中でキラキラと輝いた。
私たちは慎重に中を進んだ。廊下の両側には、かつてポスターが飾られていたであろうガラスケースがあったが、今ではガラスが割れて、中は空っぽだった。床には、割れたガラスの破片が散らばっている。私たちは破片を避けながら、ゆっくりと進んだ。
廊下の壁には、古い映画のポスターがまだいくつか残っていた。色褪せた紙に、懐かしい俳優たちの顔が写っている。タイトルも読めないほど劣化しているが、それでもかつてここで上映されていた映画の痕跡が、確かに残っていた。
廊下を進むと、大きなホールに出た。
そこは、映画を上映していたメインホールだった。
正面には、巨大なスクリーンがある。白い布は、ところどころ破れて垂れ下がっていた。かつては真っ白だったであろう布も、今では黄ばみ、しみだらけになっている。
客席には、赤いビロード地の椅子が並んでいる。だが、多くの椅子は壊れていて、座面が破れ、中のスポンジが飛び出していた。いくつかの椅子は、完全に倒れて床に転がっていた。配置も乱れていて、かつての整然とした姿は面影もなかった。
天井からは、小さな穴から光が差し込んでいた。埃が舞い、光の筋が幻想的に見える。まるで、映画のワンシーンのような光景だった。
「ここで、美咲は映画を見たんだ」
私は呟いた。声が、広いホールに響く。
「八歳の誕生日に、両親と一緒に」
蒼太はホールの中を歩きながら、周囲を見渡していた。彼の足音が、静かなホールに響く。
「完璧であることを求められる前の、ただの子供だった頃の思い出。彼女は、ここに戻りたかったんだ。あの頃の自分に。何も演じる必要がなかった頃の自分に」
「でも、戻れなかった」
「ああ。時間は、戻らないから」
私たちは、しばらく黙ってホールの中に立っていた。かつてここに、たくさんの人々がいた。映画を見て、笑って、泣いて、感動して。そんな時間が、確かにここにあった。子供たちの歓声、ポップコーンを食べる音、映画に見入る人々の息遣い——そんな音が、かつてこのホールを満たしていたのだろう。
でも、今はもう誰もいない。ただ、静寂だけが残っている。時間が止まってしまったかのような、静かな空間。
「記憶のカケラを探そう」
蒼太の声が、静寂を破った。
私たちはホールの中を探し始めた。客席の間を歩き、スクリーンの近くも確認する。椅子の下も覗き込み、通路の端も調べる。だが、何も見つからなかった。
蒼太は客席の一つに座ってみた。古びた椅子が、軋んだ音を立てる。座面が沈み込み、中のスプリングがギシギシと鳴った。
「ここに座って、春野さんは何を見たんだろうな」
彼は前方のスクリーンを見つめた。
「映画……だよね。八歳の誕生日だから、きっと子供向けの映画だったんじゃないかな」
「アニメーション映画かもしれない。それとも、冒険映画とか。ファンタジーとか」
蒼太は天井を見上げた。光が差し込む穴から、青い空が少しだけ見える。
「どんな映画を見ていたとしても、きっと楽しかったんだろう。両親と一緒で、ポップコーンを食べながら、画面を見つめて。何も考えず、ただ映画の世界に浸って。誰かに期待されることもなく、誰かと比べられることもなく」
「完璧である必要なんて、なかった」
「そう。ただの子供で、よかった」
私も隣の席に座った。椅子は思ったより柔らかく、少し沈み込んだ。背もたれに体を預けると、まるで時間が巻き戻ったかのような感覚があった。ここに、かつて春野さんも座っていたのかもしれない。同じように椅子に体を預けて、同じようにスクリーンを見上げて。
「もしかしたら、二階かもしれない」
蒼太が立ち上がり、ホールの奥を指さした。そこには、薄暗い中でも分かる階段があった。
「二階席……あるんだ」
「ああ。昔の映画館は、二階席があることが多い。二階から見下ろす形で、映画を楽しむんだ」
私たちは階段を上がった。古い木製の階段は、一段一段軋む音を立てる。まるで、私たちの体重に耐えかねて悲鳴を上げているかのような音だった。手すりも、触ると埃がついた。
二階に上がると、そこには一階よりも小さなスペースが広がっていた。椅子の数も少なく、より親密な雰囲気がある。ここは、きっと特別な席だったのだろう。デートで来たカップルや、特等席で映画を楽しみたい人たちが使っていたのかもしれない。
だが、二階席は一階よりもさらに荒れていた。椅子の多くが壊れ、床には穴が開いている箇所もあった。天井の一部も崩れかけていて、危険な状態だった。
「気をつけて。床が抜けるかもしれない」
蒼太が警告する。私たちは慎重に足を進めながら、何か手がかりがないか探した。一歩一歩、床の強度を確かめるように。
そのとき、最前列の席——スクリーンに最も近い場所に、何かが置かれているのが見えた。
近づいてみると、それは小さな箱——木製の、手のひらサイズの箱だった。埃を被っているが、比較的新しく見える。最近、誰かがここに置いたのだろう。春野さんが。
蒼太がそれを拾い上げ、箱を開けた。蓋が軋んだ音を立てて開く。中には、古い映画のチケットが入っていた。
チケットには、日付が印刷されていた。今から十年前。春野さんが八歳の頃だ。
映画のタイトルは『星空の冒険』。上映時間は午後二時。座席番号は、二階A列3番——まさに、今私たちが立っている場所だ。
チケットの裏には、子供の字で何か書かれていた。少し拙いけれど、一文字一文字丁寧に書かれた文字。
「いつか、また来たい。パパとママといっしょに」
その文字を見て、胸が詰まった。春野さんは、ここに戻りたかったのだ。あの頃の、幸せだった自分に戻りたかった。完璧である必要がなかった頃、ただ笑っていられた頃に。
「でも、戻れなかったんだな」
蒼太の声には、深い悲しみが滲んでいた。
「完璧な春野美咲になってしまって、もう戻れなくなった。両親とこんな風に映画を見に来ることも、きっとなくなったんだろう。『完璧な春野さん』には、そんな時間がなかったんだ」
「なんで……なんでこんなことになっちゃったんだろう」
私の声が震えた。春野さんは、ただ幸せになりたかっただけなのに。普通の子供として、普通に笑って、普通に生きたかっただけなのに。なのに、なぜこんなことに。
「世界は、時に残酷だ」
蒼太の声には、怒りに似た感情が込められていた。
「完璧であることを求めて、その人の本質を見ようとしない。表面だけを見て、中身を無視する。『できて当たり前』『完璧で当たり前』——そんな言葉が、人を追い詰める。春野さんは、その犠牲になったんだ」
チケットの下には、また何かが入っていた。小さなカセットテープだ。今では珍しい、昔ながらのカセットテープ。
ラベルには『記憶のカケラ #03』と書かれている。
「カセットテープ……」
蒼太はそれを手に取った。小さなテープを、光にかざして確認する。
「学校に、カセットデッキがあったはずだ。視聴覚室に。まだ動くかどうかわからないけど、試してみよう」
私たちは映画館を出た。外はまだ明るかったが、西の空は少しずつオレンジ色に染まり始めていた。また、夕焼けの時間が近づいている。
「このテープ、何が録音されてるんだろう」
私の問いに、蒼太は少し考えてから答えた。
「わからない。でも、きっと大切なメッセージが入ってる。『記憶のカケラ』なんだから」
私たちは急いで学校へ戻った。
Scene 4
視聴覚室は、校舎の三階、音楽室の隣にあった。普段あまり使われない部屋で、古い機材が置かれている。プロジェクター、スライド映写機、そしてカセットデッキ——時代遅れになった機材たちが、静かに眠っていた。
蒼太は部屋の奥にあるカセットデッキを見つけた。古い型だが、まだ動作するようだった。電源ケーブルを差し込み、スイッチを入れる。小さなランプが点灯した。
「動いた」
蒼太はテープを挿入し、再生ボタンを押した。
最初はノイズだけが聞こえた。ザーッという音が、静かな部屋に響く。私たちは息を詰めて、次の音を待った。テープが回る音だけが、静寂を満たしている。
そして——女子生徒の声が聞こえてきた。少し震えた、でも決意を込めたような声だった。聞き覚えのある声。中村陽菜の声だ。
「……陽菜だよ。美咲、聞いてる?」
声は、まるで目の前にいる友人に話しかけるような、親密なトーンだった。
「あのね、私、ずっと言えなかったことがあるの。
美咲は完璧すぎて、私、隣にいるのが辛かったの。
いつも比べられて。
『中村さんも春野さんみたいになれたらいいのに』って。
成績も、美咲より下。
運動も、美咲より下。
友達の数も、美咲より少ない。
先生も、親も、みんな美咲を褒める。
『春野さんを見習いなさい』って。
私、美咲に嫉妬してた。
親友なのに、嫉妬してた。
そんな自分が、嫌だった。
だから、美咲の前では明るく振る舞ってた。
『美咲の親友』でいるために。
でも、本当は……
美咲が完璧じゃなくて良かったのに、って思ってた。
美咲が失敗すれば、私が褒められるのに、って。
最低だよね。
親友なのに、そんなこと考えてた。
でも、最近気づいたの。
美咲も、辛かったんだよね。
完璧でいることが、どれだけ辛いか。
期待に応え続けることが、どれだけ苦しいか。
私、全然気づいてあげられなかった。
自分のことばっかり考えてた。
美咲が笑顔で『大丈夫』って言ってたから、
本当に大丈夫だと思ってた。
でも、違ったんだよね。
美咲も、私と同じくらい苦しんでたんだよね。
気づいてあげられなくて、ごめん。
親友なのに、何もしてあげられなくて、ごめん。
もし、もう一度会えたら。
今度は本当の友達になりたい。
お互いの弱いところも、ダメなところも、
全部受け入れられる友達に。
嫉妬も、劣等感も、全部話せる友達に。
そうすれば、もっと楽になれるかな。
二人とも、もっと笑えるかな。
美咲、待ってて。
私、必ず見つけるから。
本当の美咲を。
そして、今度は本当の私も見せるから」
少し間が空いた。息を整えているような、静かな時間。
そして、陽菜の声が続いた。
「次の人へ。
暗号を残すね。
これが、次の記憶への鍵。
8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
必ず、見つけて」
そして、テープが止まった。
静寂が戻る。
私は、涙が溢れそうになるのをこらえた。でも、こらえきれなかった。涙が、頬を伝って落ちた。
中村陽菜——春野さんの親友だった彼女も、苦しんでいたのだ。親友に嫉妬していた自分を責めて、でもそれを言えなくて。自分の劣等感と、親友への愛情の間で、ずっと苦しんでいた。
そして、気づいたのだ。春野さんも同じように苦しんでいたことに。お互いに隠していた、本当の気持ち。お互いに演じていた、完璧な自分。
「中村さんも……」
私の声が震えた。涙で、言葉がうまく出てこない。
「ああ」
蒼太の声にも、いつもの冷静さとは違う感情が滲んでいた。彼の目も、少し赤くなっている。
「彼女も、苦しんでたんだ。親友に嫉妬していた自分を責めて。でも、それを誰にも言えなくて。春野さんと同じように、本当の自分を隠していた」
蒼太はカセットテープを取り出した。ケースの裏側を見て、小さく息を呑んだ。
「また……ある」
そこには、小さな二次元コードが貼られていた。黒い四角いパターンが、白い紙の上に浮かび上がっている。
■■■■■□■□■■■■■
■□□□■□■□■□□□■
■□■□■□■□■□■□■
■□□□■□■□■□□□■
■■■■■□■□■■■■■
□□□□□□■□□□□□□
■□■■□□■□□■■□■
□□□□□□■□■□□□□
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■□□□■□■□□■□□■
■□■□■□■□■□■■■
■□□□■□■□□□■□■
■■■■■□■□■□■□■
蒼太はスマホでコードをスキャンした。
https://kieta-kyoushitsu.com/memory/03-nakamura-hina-confession
画面が切り替わる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╔═══════════════════════════════════════╗
║
║ 【記憶のカケラ #03】
║ 中村陽菜の告白
║
║ 【進行状況】 [●●●○○] 3/5
║
╚═══════════════════════════════════════╝
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【音声メッセージ】 🎵
┌─────────────────────────
│
│ ▶️ 中村陽菜の告白
│
│ ━━━━━━●━━━━━━━━━━━ │
│
│ 0:00 / 3:47
│
│ [再生] [一時停止] [ダウンロード]
│
└─────────────────────────
※ 物語本編で聞いた内容です
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【記憶の探偵への挑戦】 🔍
中村陽菜が残した暗号を解読してください
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
暗号: 8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ヒント】 💡
🔢 11個の数字が並んでいます
📊 数字の範囲: 4〜21
🔤 何かの文字に対応している?
❓ どんな変換ルールがあるでしょう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【暗号解読フォーム】
あなたの答え:
┌─────────────────────────
│
│ ┌───────────────────────┐ │
│
│ └───────────────────────┘ │
│
│ [解読する]
│
│ ※ 英字で入力してください
│ ※ 間違えても何度でも挑戦できます
│
└─────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【正解者ランキング】 🏆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🥇 探偵ランク S (30人)
正解時間: 1分以内
└─ 真の名探偵!瞬時に解読完了
🥈 探偵ランク A (127人)
正解時間: 1-5分
└─ 優秀な探偵!素早い解読
🥉 探偵ランク B (498人)
正解時間: 5-10分
└─ 立派な探偵!着実に解読
📖 探偵ランク C (2,891人)
正解時間: 10分以上
└─ 諦めない探偵!最後まで挑戦
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【統計情報】 📊
挑戦者数: 8,472人
正解者数: 3,546人 (41.8%)
平均解読時間: 12分34秒
平均試行回数: 3.2回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【正解すると...】 ✨
次の記憶のカケラへのヒントが表示されます
┌─────────────────────────
│
│ ???????
│ 座標: ██.████, ███.████
│
│ ※ 暗号を解読すると表示されます
│
└─────────────────────────
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【他の探偵たちのコメント】 💬
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👤 探偵 #0892 (1時間前) ⭐️ランクS
「暗号より中村さんのメッセージが辛すぎた…
親友に嫉妬する気持ち、わかるから余計に」
♥ 共感 234 💬 返信 8
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👤 探偵 #1247 (3時間前) ⭐️ランクA
「お互いに本当の気持ちを言えなかった二人。
もし話せていたら、きっと救われたのに」
♥ 共感 567 💬 返信 23
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👤 探偵 #0421 (5時間前) ⭐️ランクB
「暗号解けた!次はあの場所なのか…
記憶を辿る旅が、どんどん深くなっていく」
♥ 共感 198 💬 返信 12
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👤 探偵 #2103 (8時間前) ⭐️ランクC
「何度も間違えたけど、諦めなかった!
記憶の探偵として、最後まで真実を追う」
♥ 共感 891 💬 返信 45
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[もっと見る (3,129件)]
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ハッシュタグ: #消えた教室 #記憶の探偵
#暗号解読 #中村陽菜
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次の記憶のカケラを見つけるには、
暗号を解読して、物語を読み進めてください。
[← 記憶のカケラ#02] [第3章へ進む →]
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私たちは画面を見つめた。
暗号解読のインターフェース。正解者ランキング。他の探偵たちのコメント——まるで、私たちだけじゃない。たくさんの人が、この謎を解こうとしている。春野さんたち消えたクラスメイトの記憶を、取り戻そうとしている。
蒼太は紙に数字を書き出していた。その手が、わずかに震えている。
「暗号だな……」
彼は数字を見つめたまま、何かを考えている。指先で紙をなぞりながら、規則性を探しているようだった。
8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
しばらく沈黙が続いた。
「これが、次の手がかりだ」
蒼太は立ち上がった。窓の外を見ながら、何かを考え込んでいる。
「明日、学校で調べよう。この暗号が何を意味するのか」
「うん」
私たちは視聴覚室を出た。廊下には、もう誰もいなかった。夕日が窓から差し込んで、長い影を作っている。オレンジ色の光が、廊下を染めていた。
私たちは学校を出た。
帰り道、私は中村陽菜のことを考えていた。彼女も、春野さんも、お互いに苦しんでいた。親友同士なのに、本当の気持ちを言えなかった。お互いに「完璧」を演じて、本当の自分を隠していた。
もし、二人がちゃんと話していたら。
もし、お互いの弱さを見せ合えていたら。
きっと、何か変わっていたはずだ。二人とも、もっと楽に生きられたはずだ。笑顔も、本物になっていたはずだ。
でも、それができなかった。
なぜなら、世界が「完璧」を求めたから。
弱さを見せることを、許さなかったから。
劣等感を持つことを、恥だと思わせたから。
私たちも、同じだ。
私も、蒼太も、きっと何かを隠している。本当の自分を出せずに、何かを演じている。みんな、そうなのかもしれない。
それが、どれだけ辛いことか。
春野さんたちの記憶のカケラを辿りながら、私は少しずつわかり始めていた。
消えた教室の真実が、何を意味しているのか。
そして、なぜ私たちだけが記憶を保っているのか。
その答えが、次の記憶のカケラにあるのかもしれない。
蒼太がまだ解読していない暗号。
明日、きっとわかるはずだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第2章 完】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日の放課後、私と蒼太は再び図書室に集まった。昨日見つけた手がかり——「彼女が想いを残した場所」を探すためだ。
「夕焼けが美しく見える場所、禁じられた場所、彼女の想いが残された場所……」
蒼太は図書室の隅の席に座り、スマホを操作していた。私も隣に座る。窓から差し込む午後の光が、彼の眼鏡のレンズに反射している。
「春野さんの最後の投稿、もう一度確認しよう」
「昨日見たよね。夕焼けの写真」
「ああ。でも、投稿時刻や位置情報を詳しく調べてみる」
蒼太はインスタグラムを開き、春野さんの最後の投稿を表示させた。
四月十九日、午後六時十五分。
オレンジ色に染まった空。その下に見える校舎。光と影のコントラストが美しい写真。
キャプション:「夕焼けって、なんでこんなに切ないんだろう」
「この角度……」
蒼太が写真を拡大した。指先で画面を操作しながら、細部を確認している。
「間違いない。これは高い場所から撮影されている。校舎の位置関係、フェンスの一部が写り込んでいる様子——地上からでは、こういう構図にはならない」
「高い場所……」
「学校で一番高くて、夕焼けが美しく見える場所。そして、普段は立入禁止になっている『禁じられた場所』」
私は息を呑んだ。
「屋上……」
「そう。『夕焼けが美しく見える場所』『禁じられた場所』『彼女の想いが残された場所』——全て屋上のことを指している」
確かに、屋上は普段立入禁止になっている。鍵がかかっていて、生徒は自由に入れない。危険だからという理由で、何年も前から封鎖されていた。
でも、春野さんはそこに行った。最後の夕焼けを見るために。
「でも、どうやって入ったんだろう。屋上の鍵は職員室にあるはずなのに」
「裏がある」
蒼太の声には、確信が込められていた。
「防火扉。あそこの鍵が壊れてるんだ。前に、図書委員の仕事で遅くまで残ってた時、偶然見つけた。誰も気づいてないみたいだけど」
「じゃあ、そこから……」
「ああ。今から行こう」
私たちは図書室を出た。廊下には、部活動を終えた生徒たちがちらほらいる。笑い声、足音、部室へ向かう話し声——いつもの放課後の風景。私たちは人目を避けながら、最上階へと向かった。
階段を上がるたびに、心臓の鼓動が速くなっていく。これから何を見つけるのだろう。春野さんは、あの屋上に何を残したのだろう。
最上階に着いた。廊下の突き当たりに、防火扉がある。赤い文字で「関係者以外立入禁止」と書かれた札が掛かっている。その文字が、妙に重く感じられた。
蒼太は周囲を確認してから、扉を押した。軋んだ音を立てて、扉がゆっくりと開く。まるで、長い間開かれていなかった扉が、ようやく動き出したかのような音だった。
外から、風が吹き込んできた。冷たくて、少し湿った風。春の終わりの風だ。
私たちは屋上へと足を踏み出した。
夕日が、ちょうど沈みかけていた。空は深いオレンジ色に染まり、雲が赤く燃えているように見える。この景色を、春野さんも見ていたのだろう。消える前日の夕方、ここに立って。同じ風を感じて、同じ空を見上げて。
「美しいな」
蒼太が呟いた。その声は、いつもの冷静さの中に、わずかな感傷が混じっていた。
「でも、切ない」
私は空を見上げながら答えた。
「夕焼けって、一日の終わりを告げる景色だから。光が消えていく瞬間だから。終わりの始まり」
私たちは屋上を歩いた。フェンスに囲まれた、広い空間。コンクリートの床には、ところどころひびが入っている。普段は誰も来ない場所。だからこそ、もし何か残されているとしたら、そのまま残っている可能性が高い。
フェンスに沿って歩いていくと、蒼太が足を止めた。
「あそこ」
彼が指さした先——フェンスの支柱の根元、風雨に晒されにくい場所に、何かが置かれているのが見えた。
近づいてみると、それは小さなノート。手のひらサイズの、黒い表紙のノートだった。防水加工されたビニール袋に入れられていて、雨に濡れても大丈夫なようになっている。
蒼太がそれを拾い上げる。ビニール袋から取り出すと、表紙に金色のペンで文字が書かれているのが見えた。
「M.H.」
そのイニシャルを見た瞬間、心臓が跳ねた。
「Misaki Haruno……春野美咲のイニシャル」
私の声が震えた。これは、彼女が残したものだ。彼女が、誰かに見つけてほしくて、ここに置いていったものだ。
Scene 2
蒼太は慎重にノートを開いた。そこには、丁寧な字でびっしりと文章が書かれていた。日付があり、その下に彼女の思いが綴られている。インクの色は少し褪せているが、文字ははっきりと読める。
これは、日記だった。
私たちは顔を見合わせた。お互いの目に、同じ決意が浮かんでいるのが分かった。これを読まなければならない。春野さんの本当の気持ちを、知らなければならない。
無言で、最初のページを読み始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月10日
また「完璧な春野さん」って言われた。
成績も良くて、明るくて、友達も多い。
でも、誰も本当の私を知らない。
疲れた顔を見せたら、失望されるかな。
今日、テストで98点を取った。
みんなは「すごいね」って言ってくれた。
でも、私は100点じゃなかったことに落ち込んでた。
そんな自分が、嫌になる。
完璧じゃない自分を、受け入れられない。
他の人も、受け入れてくれない気がする。
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ページをめくると、次の日付が現れた。春野さんの心の軌跡が、日付順に記されている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月12日
今日、クラスで発表があった。
私の番が来て、前に立って話した。
みんな、静かに聞いてくれた。
発表が終わったら、拍手してくれた。
「さすが春野さん」「わかりやすかった」
そんな声が聞こえた。
でも、私の手は震えてた。
声も、途中で詰まりそうになった。
誰も気づかなかったみたいだけど。
完璧な発表に見えたかもしれない。
でも、私の中では、全然完璧じゃなかった。
いつもそう。
表面だけ完璧で、中身はボロボロ。
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4月15日
陽菜が「最近元気ないね」って聞いてきた。
「大丈夫」って答えた。
また嘘をついた。
本当は、全然大丈夫じゃない。
毎日笑顔を作るのに疲れてる。
朝起きると、今日も演じなきゃいけないって思う。
完璧な春野美咲を。
でも、それを言えない。
陽菜は私の親友だって思ってた。
でも、私は親友に本当のことを言えない。
これって、本当に友達なのかな。
陽菜は、私のことを「完璧な春野さん」って見てる。
私が弱音を吐いたら、がっかりするかな。
私が泣いてるところを見たら、引くかな。
怖くて、聞けない。
だから、ずっと笑い続ける。
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私は胸が痛んだ。春野さんは、親友の中村さんにも本当のことを言えなかったのだ。二人は、いつも一緒にいた。休み時間も、放課後も、お昼も。廊下ですれ違うたびに、楽しそうに話していた。誰が見ても、親友同士だった。
でも、春野さんは孤独だった。たくさんの人に囲まれていても、誰にも本当の自分を見せられなくて、一人で苦しんでいた。
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4月17日
今日、体育の時間にバスケをした。
私のチームが勝った。
みんな、喜んでくれた。
「春野さんのおかげだよ」って。
でも、途中でミスをした。
パスを落としたり、シュートを外したり。
誰も責めなかったけど、私は自分を責めてた。
完璧じゃなかった。
また、完璧じゃなかった。
家に帰って、鏡を見た。
そこに映ってるのは、誰だろう。
「完璧な春野美咲」?
それとも、本当の私?
わからない。
もう、わからない。
最近、鏡の中の自分が、他人に見える。
笑顔を作ってる自分が、演技してる自分が、
まるで別の誰かみたいだ。
本当の私は、どこにいるんだろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月18日
最近、変な夢を見る。
教室が消える夢。
クラスメイトが消える夢。
私が消える夢。
夢の中で、私は叫んでる。
「助けて」って。
でも、誰も気づいてくれない。
みんな、「完璧な春野美咲」しか見てないから。
本当の私は、透明人間みたいだ。
目の前にいるのに、誰も見てくれない。
起きると、いつもの教室がある。
いつものクラスメイトがいる。
でも、本当にここにいていいのかな。
私は、本当に存在してるのかな。
時々、自分が本当に存在しているのか、わからなくなる。
鏡を見ても、そこに映っているのは「完璧な春野美咲」であって、
本当の私じゃない。
本当の私は、どこにいるんだろう。
いつから、いなくなってしまったんだろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ページをめくる手が震えた。春野さんは、自分の存在そのものに疑問を持ち始めていた。それほどまでに、彼女は追い詰められていたのだ。
「これ……」
私の声が途切れた。言葉が、喉の奥で詰まってしまう。
「辛すぎる」
ようやく絞り出したその言葉に、蒼太は小さく頷いた。彼の目にも、いつもの冷静さとは違う感情が浮かんでいた。
「彼女は、誰にも助けを求められなかった。完璧であることを期待され続けて、弱音を吐くことすらできなかった。『助けて』って言うことが、許されなかった」
最後のページに近づくにつれ、日記の文章は短くなっていった。まるで、彼女の心が少しずつ削られていくように。言葉にする力すら、失われていくように。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月18日(続き)
もう、わからない。
何が本当で、何が嘘なのか。
私は誰なのか。
何のために生きているのか。
完璧な春野美咲として生きることに、疲れた。
でも、本当の私として生きることもできない。
だって、本当の私なんて、もうわからないから。
消えたい。
ネットで見つけた。
「消えたい人のための場所」
都市伝説だと思う。
でも、もし本当なら——
誰にも迷惑をかけずに、
誰にも覚えられずに、
静かに消えることができる。
それが、私の願い。
明日、確かめに行く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月19日
今日、屋上に来た。
夕焼けがとても綺麗だった。
オレンジ色の空を見ていたら、涙が出てきた。
なんで泣いてるのか、自分でもわからない。
綺麗なものを見ると、悲しくなる。
幸せそうな人を見ると、苦しくなる。
笑顔を作ると、心が痛くなる。
もう、限界だ。
完璧な春野美咲を演じるのに、疲れた。
誰も、本当の私を見てくれない。
みんな、「完璧な春野美咲」しか見てない。
本当の私は、透明人間みたいだ。
今夜、私は消える。
きっと誰も気づかない。
だって、みんなが見てるのは、「完璧な春野美咲」という幻だから。
本当の私は、最初からいなかった。
さようなら。
本当は、誰かに「助けて」って言いたかった。
でも、言えなかった。
完璧な春野美咲は、弱音を吐かないから。
でも、最後に一つだけ。
もし誰か、この日記を見つけてくれたら。
本当の私を、知ってほしい。
完璧じゃない、弱くて、ダメな私を。
それが、私の最後の願い。
次の記憶は、私が夢見ていた場所にある。
幸せだった頃の思い出がある場所。
まだ「完璧」じゃなくてよかった頃の場所。
座標:35.6892, 139.6917
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日記はそこで終わっていた。
私は、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。目頭が熱くなり、視界が滲む。春野さんは、こんなにも苦しんでいたのか。いつも笑顔で、明るくて、完璧に見えた彼女が、その裏でこんなにも追い詰められていたなんて。
「桜井……待って」
蒼太の声が聞こえた。彼が日記の最後のページを指さしている。
「これ、見て」
最後のページの裏側——そこに、小さな二次元コードが貼られていた。黒い四角いパターンが、白い紙の上に浮かび上がっている。
■■■■■□■□■■■■■
■□□□■□■□■□□□■
■□■□■□■□■□■□■
■□□□■□■□■□□□■
■■■■■□■□■■■■■
□□□□□□■□□□□□□
■□■■□□■□□■■□■
□□□□□□■□■□□□□
■■■■■□■□■■□■■
■□□□■□■□□■□□■
■□■□■□■□■□■■■
■□□□■□■□□□■□■
■■■■■□■□■□■□■
「二次元コード……」
蒼太はスマホを取り出し、カメラでコードをスキャンした。画面に、URLが表示される。
https://kieta-kyoushitsu.com/memory/02-haruno-misaki-diary
「開いてみよう」
蒼太がリンクをタップすると、スマホの画面が切り替わった。黒い背景に、白い文字が浮かび上がる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╔═══════════════════════════════════════╗
║
║ 【記憶のカケラ #02】
║ 春野美咲の日記
║
║ 【進行状況】 [●●○○○] 2/5
║
╚═══════════════════════════════════════╝
このページには、彼女が屋上に残した日記があります。
┌─────────────────────────
│
│ [📖 春野美咲の日記を読む]
│
│ ※ 既に物語本編で読んだ内容です
│
└─────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【あなたへの問いかけ】
もし、あなたが春野美咲のクラスメイトだったら——
完璧な笑顔の裏に隠された苦しみに、
気づけたでしょうか?
「大丈夫?」と声をかけられたでしょうか?
それとも、私たちと同じように、
「完璧な春野さん」という表面だけを
見ていたでしょうか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【メッセージボード】
あなたなら、春野美咲にどんな言葉をかけますか?
┌─────────────────────────
│ あなたの名前(任意):
│ ┌─────────────────────┐
│ │
│ └─────────────────────┘
│
│ メッセージ:
│ ┌─────────────────────┐
│ │
│ │
│ │
│ │
│ └─────────────────────┘
│
│ [送信する]
│
└─────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【他の読者からのメッセージ】 💬
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 記憶の探偵 #0127 (2時間前)
「『大丈夫?』って本当に心から聞けたかな…
自分も完璧を演じてるから、気づけなかったと思う」
♥ 共感 247 💬 返信 12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 透明だった私 (5時間前)
「私も完璧を演じてた。
美咲の気持ちが痛いほどわかる。
『無理しないで』『そのままでいいよ』って
誰かに言ってほしかった」
♥ 共感 891 💬 返信 34
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 元クラスメイト (8時間前)
「『頑張ってるね』じゃなくて
『頑張らなくてもいいよ』って言いたかった。
でも当時は気づけなかった。ごめん」
♥ 共感 1,203 💬 返信 56
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 高校教師 (12時間前)
「教師として、完璧を求めてしまっていた。
『できて当たり前』という空気を作っていた。
生徒一人一人の心に、もっと寄り添うべきだった」
♥ 共感 2,456 💬 返信 89
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
👤 親友だった人 (1日前)
「陽菜の気持ちもわかる。
親友に嫉妬して、でも言えなくて。
お互いに本当の自分を隠してた。
今なら『一緒に泣こう』って言える」
♥ 共感 3,127 💬 返信 134
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[もっと見る (12,847件)]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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最も多かった言葉:
1位 「無理しないで」(2,891回)
2位 「そのままでいいよ」(2,134回)
3位 「一緒にいるよ」(1,876回)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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#春野美咲 #完璧の呪縛
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次の記憶のカケラを見つけるには、
物語を読み進めてください。
[← 記憶のカケラ#01] [第3章へ進む →]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私たちはしばらく、画面を見つめていた。
たくさんの人々のメッセージ。知らない誰かが、春野さんに向けて書いた言葉。完璧じゃなくてもいい、そのままでいい、無理しないで——そんな優しい言葉たち。
もし、春野さんが生きているときに、こんな言葉をかけてもらえていたら。
もし、誰かが本当の彼女を見て、受け入れてくれていたら。
きっと、何かが変わっていたはずだ。
「桜井」
蒼太の声が聞こえた。彼もまた、動揺しているのだろう。その声は、いつもより少し震えていた。
「私……気づいてあげられなかった」
私の声が震えた。
「いつも一緒にいたのに。休み時間に一緒にお昼食べて、放課後に一緒に帰って。でも、全然気づかなかった。美咲が笑ってたから、幸せなんだって思ってた」
「僕もだ」
蒼太は日記を閉じた。その手が、わずかに震えている。
「同じクラスだったのに、何も気づけなかった。いや、気づこうともしなかった。彼女の笑顔を見て、それで満足してた。その裏に何があるかなんて、考えもしなかった」
蒼太はスマホを取り出し、日記に書かれていた座標を地図アプリに入力した。画面上にピンが立つ。
「ここは……」
場所は、学校から徒歩十五分ほどの距離。地図上の建物名を見て、蒼太が小さく息を呑んだ。
「シネマ・パラダイス」
「シネマ・パラダイス……」
私はその名前を知っていた。十年以上前に閉館した、古い映画館。今は廃墟になっていると聞いていた。幼い頃、母がその名前を口にしたことがある。「昔は、あそこで映画を見るのが楽しみだったのよ」と。
「なぜ、美咲はこの場所を『夢見ていた場所』って……」
そのとき、日記の別のページに何か挟まっているのに気づいた。小さな写真だ。角が少し折れていて、大切に持ち歩かれていたことが分かる。
蒼太がそれを取り出すと、そこには若い頃の春野さんらしき少女が、映画館の前で笑っている写真があった。両親と思われる大人と一緒に、満面の笑みを浮かべている。少女の手には、ポップコーンの入った紙袋。父親の肩に手を置き、母親が優しく見守っている。三人とも、心から幸せそうだった。
写真の裏には、手書きで文字が書かれていた。少し拙い、子供の字だ。
「8歳のたんじょう日。パパとママといっしょに。いつか、また来たい」
私はその写真を見つめた。そこに写っている少女は、心から楽しそうに笑っていた。完璧な笑顔じゃない。ただ、嬉しくて、幸せで、笑っている。何も演じていない、本当の笑顔。そんな笑顔だった。
「彼女が夢見ていた場所……」
蒼太の声には、深い理解が滲んでいた。
「それは、まだ『完璧な春野美咲』を演じる前の、本当の自分がいた場所なのかもしれない。期待されることもなく、比べられることもなく、ただの子供でいられた場所」
夕日が、さらに沈んでいた。空は深い紫色に変わり始めている。星が、一つ、また一つと瞬き始めた。
「明日、行こう」
蒼太の声には、決意が込められていた。
「シネマ・パラダイスに。そこに、次の記憶のカケラがあるはずだ」
私たちは屋上を後にした。防火扉を通り、階段を降りる。校舎の中は、もう薄暗くなっていた。誰もいない廊下を歩きながら、私は春野さんの日記の言葉を反芻し続けていた。
校門を出るとき、私は振り返って校舎を見た。あの屋上で、春野さんは最後の夕焼けを見ていた。そして、何を思ったのだろう。今夜消えることを決めながら、あの美しい景色を見て、涙を流して。
「桜井」
蒼太が声をかけてきた。
「明日、ここで待ち合わせしよう。放課後すぐに」
「うん。わかった」
私たちは別れ、それぞれの家路についた。
歩きながら、私は春野さんの日記のことを考え続けていた。彼女は、本当の自分を見てほしかった。完璧じゃない、弱くて、ダメな自分を。でも、誰もそれに気づかなかった。私も気づかなかった。
もし、あのとき気づいていたら。もし、彼女に「大丈夫?」って、本当に心配して聞いていたら。何か変わっていたのだろうか。
でも、今さら後悔しても仕方がない。今できることは、真実を見つけること。そして、春野さんを——みんなを取り戻すこと。
Scene 3
翌日の放課後、私たちは学校を出て、シネマ・パラダイスへと向かった。
住宅街を抜け、古い商店街を通り過ぎる。かつては賑わっていたであろう商店街も、今ではシャッターを閉めた店が多く、寂れた雰囲気が漂っていた。看板の文字は色褪せ、ところどころ剥がれ落ちている。道路には雑草が生えていて、舗装のひび割れから小さな花が咲いていた。時折、すれ違う高齢者の姿が、この街の過疎化を物語っていた。
「ここ、昔は賑やかだったんだろうね」
私が呟くと、蒼太は頷いた。
「ああ。調べてみたんだ。シネマ・パラダイスは、三十年以上前に建てられた。当時、この街で唯一の映画館だった。週末には行列ができるほど人気だったらしい。子供たちにとっての娯楽の中心地だった」
「でも、今は……」
「十年前に閉館した。大型のシネコンができて、客足が減ったんだ。建物は老朽化して、取り壊しの話も出てたけど、予算がなくて放置されてる。いずれは壊されるだろうけど、今はまだそのままだ」
蒼太の声には、どこか寂しさのようなものが滲んでいた。彼もまた、時代の流れとともに忘れ去られていくものに、何かを感じているのかもしれない。春野さんたちのように。
十五分ほど歩くと、目的地が見えてきた。
シネマ・パラダイス。
建物は、想像以上に大きかった。三階建ての古い洋館のような造りで、正面には大きな看板が掛かっている。だが、看板の文字は半分剥がれ落ちていて、「シネ パラ イ」とだけ読める状態だった。
外壁は色あせ、ところどころにひびが入っている。かつては鮮やかだったであろう赤い塗装も、今では茶色く変色し、剥がれかけた部分から下地のコンクリートが露出していた。入口のガラス扉は割れ、破片が地面に散らばっている。中は暗闇に包まれていて、何も見えなかった。
「ここ……本当に入れるの?」
私の声は、自分でも驚くほど小さくなっていた。建物から発せられる、何か重苦しい雰囲気に圧倒されていた。
「裏口があるはずだ」
蒼太は建物の周りを歩き始めた。私もその後を追う。足元には、割れた瓦礫や錆びた金属片が散らばっていて、注意深く歩かなければならなかった。
建物の裏側に回ると、確かに小さな扉があった。「関係者専用」と書かれた札が掛かっているが、もう誰も管理していないのだろう。扉の周りには、蔦が絡まっていて、長い間開かれていなかったことが分かる。
蒼太がドアノブを回すと、軋んだ音を立てて扉が開いた。まるで、長い間開かれていなかった扉が、ようやく動き出したかのような音だった。金属が擦れ合う、耳障りな音。
「入ろう」
中は薄暗く、埃っぽい匂いがした。湿気と古い木材の匂いが混じり合って、鼻をつく。それに加えて、何か甘ったるいような、腐敗したような匂いも微かに漂っていた。床には古い映画のポスターが散乱していて、壁には剥がれかけたペンキの跡が残っている。
蒼太はスマホのライトを点けた。光が、暗闇の中を照らす。埃が舞い上がり、光の筋の中でキラキラと輝いた。
私たちは慎重に中を進んだ。廊下の両側には、かつてポスターが飾られていたであろうガラスケースがあったが、今ではガラスが割れて、中は空っぽだった。床には、割れたガラスの破片が散らばっている。私たちは破片を避けながら、ゆっくりと進んだ。
廊下の壁には、古い映画のポスターがまだいくつか残っていた。色褪せた紙に、懐かしい俳優たちの顔が写っている。タイトルも読めないほど劣化しているが、それでもかつてここで上映されていた映画の痕跡が、確かに残っていた。
廊下を進むと、大きなホールに出た。
そこは、映画を上映していたメインホールだった。
正面には、巨大なスクリーンがある。白い布は、ところどころ破れて垂れ下がっていた。かつては真っ白だったであろう布も、今では黄ばみ、しみだらけになっている。
客席には、赤いビロード地の椅子が並んでいる。だが、多くの椅子は壊れていて、座面が破れ、中のスポンジが飛び出していた。いくつかの椅子は、完全に倒れて床に転がっていた。配置も乱れていて、かつての整然とした姿は面影もなかった。
天井からは、小さな穴から光が差し込んでいた。埃が舞い、光の筋が幻想的に見える。まるで、映画のワンシーンのような光景だった。
「ここで、美咲は映画を見たんだ」
私は呟いた。声が、広いホールに響く。
「八歳の誕生日に、両親と一緒に」
蒼太はホールの中を歩きながら、周囲を見渡していた。彼の足音が、静かなホールに響く。
「完璧であることを求められる前の、ただの子供だった頃の思い出。彼女は、ここに戻りたかったんだ。あの頃の自分に。何も演じる必要がなかった頃の自分に」
「でも、戻れなかった」
「ああ。時間は、戻らないから」
私たちは、しばらく黙ってホールの中に立っていた。かつてここに、たくさんの人々がいた。映画を見て、笑って、泣いて、感動して。そんな時間が、確かにここにあった。子供たちの歓声、ポップコーンを食べる音、映画に見入る人々の息遣い——そんな音が、かつてこのホールを満たしていたのだろう。
でも、今はもう誰もいない。ただ、静寂だけが残っている。時間が止まってしまったかのような、静かな空間。
「記憶のカケラを探そう」
蒼太の声が、静寂を破った。
私たちはホールの中を探し始めた。客席の間を歩き、スクリーンの近くも確認する。椅子の下も覗き込み、通路の端も調べる。だが、何も見つからなかった。
蒼太は客席の一つに座ってみた。古びた椅子が、軋んだ音を立てる。座面が沈み込み、中のスプリングがギシギシと鳴った。
「ここに座って、春野さんは何を見たんだろうな」
彼は前方のスクリーンを見つめた。
「映画……だよね。八歳の誕生日だから、きっと子供向けの映画だったんじゃないかな」
「アニメーション映画かもしれない。それとも、冒険映画とか。ファンタジーとか」
蒼太は天井を見上げた。光が差し込む穴から、青い空が少しだけ見える。
「どんな映画を見ていたとしても、きっと楽しかったんだろう。両親と一緒で、ポップコーンを食べながら、画面を見つめて。何も考えず、ただ映画の世界に浸って。誰かに期待されることもなく、誰かと比べられることもなく」
「完璧である必要なんて、なかった」
「そう。ただの子供で、よかった」
私も隣の席に座った。椅子は思ったより柔らかく、少し沈み込んだ。背もたれに体を預けると、まるで時間が巻き戻ったかのような感覚があった。ここに、かつて春野さんも座っていたのかもしれない。同じように椅子に体を預けて、同じようにスクリーンを見上げて。
「もしかしたら、二階かもしれない」
蒼太が立ち上がり、ホールの奥を指さした。そこには、薄暗い中でも分かる階段があった。
「二階席……あるんだ」
「ああ。昔の映画館は、二階席があることが多い。二階から見下ろす形で、映画を楽しむんだ」
私たちは階段を上がった。古い木製の階段は、一段一段軋む音を立てる。まるで、私たちの体重に耐えかねて悲鳴を上げているかのような音だった。手すりも、触ると埃がついた。
二階に上がると、そこには一階よりも小さなスペースが広がっていた。椅子の数も少なく、より親密な雰囲気がある。ここは、きっと特別な席だったのだろう。デートで来たカップルや、特等席で映画を楽しみたい人たちが使っていたのかもしれない。
だが、二階席は一階よりもさらに荒れていた。椅子の多くが壊れ、床には穴が開いている箇所もあった。天井の一部も崩れかけていて、危険な状態だった。
「気をつけて。床が抜けるかもしれない」
蒼太が警告する。私たちは慎重に足を進めながら、何か手がかりがないか探した。一歩一歩、床の強度を確かめるように。
そのとき、最前列の席——スクリーンに最も近い場所に、何かが置かれているのが見えた。
近づいてみると、それは小さな箱——木製の、手のひらサイズの箱だった。埃を被っているが、比較的新しく見える。最近、誰かがここに置いたのだろう。春野さんが。
蒼太がそれを拾い上げ、箱を開けた。蓋が軋んだ音を立てて開く。中には、古い映画のチケットが入っていた。
チケットには、日付が印刷されていた。今から十年前。春野さんが八歳の頃だ。
映画のタイトルは『星空の冒険』。上映時間は午後二時。座席番号は、二階A列3番——まさに、今私たちが立っている場所だ。
チケットの裏には、子供の字で何か書かれていた。少し拙いけれど、一文字一文字丁寧に書かれた文字。
「いつか、また来たい。パパとママといっしょに」
その文字を見て、胸が詰まった。春野さんは、ここに戻りたかったのだ。あの頃の、幸せだった自分に戻りたかった。完璧である必要がなかった頃、ただ笑っていられた頃に。
「でも、戻れなかったんだな」
蒼太の声には、深い悲しみが滲んでいた。
「完璧な春野美咲になってしまって、もう戻れなくなった。両親とこんな風に映画を見に来ることも、きっとなくなったんだろう。『完璧な春野さん』には、そんな時間がなかったんだ」
「なんで……なんでこんなことになっちゃったんだろう」
私の声が震えた。春野さんは、ただ幸せになりたかっただけなのに。普通の子供として、普通に笑って、普通に生きたかっただけなのに。なのに、なぜこんなことに。
「世界は、時に残酷だ」
蒼太の声には、怒りに似た感情が込められていた。
「完璧であることを求めて、その人の本質を見ようとしない。表面だけを見て、中身を無視する。『できて当たり前』『完璧で当たり前』——そんな言葉が、人を追い詰める。春野さんは、その犠牲になったんだ」
チケットの下には、また何かが入っていた。小さなカセットテープだ。今では珍しい、昔ながらのカセットテープ。
ラベルには『記憶のカケラ #03』と書かれている。
「カセットテープ……」
蒼太はそれを手に取った。小さなテープを、光にかざして確認する。
「学校に、カセットデッキがあったはずだ。視聴覚室に。まだ動くかどうかわからないけど、試してみよう」
私たちは映画館を出た。外はまだ明るかったが、西の空は少しずつオレンジ色に染まり始めていた。また、夕焼けの時間が近づいている。
「このテープ、何が録音されてるんだろう」
私の問いに、蒼太は少し考えてから答えた。
「わからない。でも、きっと大切なメッセージが入ってる。『記憶のカケラ』なんだから」
私たちは急いで学校へ戻った。
Scene 4
視聴覚室は、校舎の三階、音楽室の隣にあった。普段あまり使われない部屋で、古い機材が置かれている。プロジェクター、スライド映写機、そしてカセットデッキ——時代遅れになった機材たちが、静かに眠っていた。
蒼太は部屋の奥にあるカセットデッキを見つけた。古い型だが、まだ動作するようだった。電源ケーブルを差し込み、スイッチを入れる。小さなランプが点灯した。
「動いた」
蒼太はテープを挿入し、再生ボタンを押した。
最初はノイズだけが聞こえた。ザーッという音が、静かな部屋に響く。私たちは息を詰めて、次の音を待った。テープが回る音だけが、静寂を満たしている。
そして——女子生徒の声が聞こえてきた。少し震えた、でも決意を込めたような声だった。聞き覚えのある声。中村陽菜の声だ。
「……陽菜だよ。美咲、聞いてる?」
声は、まるで目の前にいる友人に話しかけるような、親密なトーンだった。
「あのね、私、ずっと言えなかったことがあるの。
美咲は完璧すぎて、私、隣にいるのが辛かったの。
いつも比べられて。
『中村さんも春野さんみたいになれたらいいのに』って。
成績も、美咲より下。
運動も、美咲より下。
友達の数も、美咲より少ない。
先生も、親も、みんな美咲を褒める。
『春野さんを見習いなさい』って。
私、美咲に嫉妬してた。
親友なのに、嫉妬してた。
そんな自分が、嫌だった。
だから、美咲の前では明るく振る舞ってた。
『美咲の親友』でいるために。
でも、本当は……
美咲が完璧じゃなくて良かったのに、って思ってた。
美咲が失敗すれば、私が褒められるのに、って。
最低だよね。
親友なのに、そんなこと考えてた。
でも、最近気づいたの。
美咲も、辛かったんだよね。
完璧でいることが、どれだけ辛いか。
期待に応え続けることが、どれだけ苦しいか。
私、全然気づいてあげられなかった。
自分のことばっかり考えてた。
美咲が笑顔で『大丈夫』って言ってたから、
本当に大丈夫だと思ってた。
でも、違ったんだよね。
美咲も、私と同じくらい苦しんでたんだよね。
気づいてあげられなくて、ごめん。
親友なのに、何もしてあげられなくて、ごめん。
もし、もう一度会えたら。
今度は本当の友達になりたい。
お互いの弱いところも、ダメなところも、
全部受け入れられる友達に。
嫉妬も、劣等感も、全部話せる友達に。
そうすれば、もっと楽になれるかな。
二人とも、もっと笑えるかな。
美咲、待ってて。
私、必ず見つけるから。
本当の美咲を。
そして、今度は本当の私も見せるから」
少し間が空いた。息を整えているような、静かな時間。
そして、陽菜の声が続いた。
「次の人へ。
暗号を残すね。
これが、次の記憶への鍵。
8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
必ず、見つけて」
そして、テープが止まった。
静寂が戻る。
私は、涙が溢れそうになるのをこらえた。でも、こらえきれなかった。涙が、頬を伝って落ちた。
中村陽菜——春野さんの親友だった彼女も、苦しんでいたのだ。親友に嫉妬していた自分を責めて、でもそれを言えなくて。自分の劣等感と、親友への愛情の間で、ずっと苦しんでいた。
そして、気づいたのだ。春野さんも同じように苦しんでいたことに。お互いに隠していた、本当の気持ち。お互いに演じていた、完璧な自分。
「中村さんも……」
私の声が震えた。涙で、言葉がうまく出てこない。
「ああ」
蒼太の声にも、いつもの冷静さとは違う感情が滲んでいた。彼の目も、少し赤くなっている。
「彼女も、苦しんでたんだ。親友に嫉妬していた自分を責めて。でも、それを誰にも言えなくて。春野さんと同じように、本当の自分を隠していた」
蒼太はカセットテープを取り出した。ケースの裏側を見て、小さく息を呑んだ。
「また……ある」
そこには、小さな二次元コードが貼られていた。黒い四角いパターンが、白い紙の上に浮かび上がっている。
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蒼太はスマホでコードをスキャンした。
https://kieta-kyoushitsu.com/memory/03-nakamura-hina-confession
画面が切り替わる。
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╔═══════════════════════════════════════╗
║
║ 【記憶のカケラ #03】
║ 中村陽菜の告白
║
║ 【進行状況】 [●●●○○] 3/5
║
╚═══════════════════════════════════════╝
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【音声メッセージ】 🎵
┌─────────────────────────
│
│ ▶️ 中村陽菜の告白
│
│ ━━━━━━●━━━━━━━━━━━ │
│
│ 0:00 / 3:47
│
│ [再生] [一時停止] [ダウンロード]
│
└─────────────────────────
※ 物語本編で聞いた内容です
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【記憶の探偵への挑戦】 🔍
中村陽菜が残した暗号を解読してください
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
暗号: 8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ヒント】 💡
🔢 11個の数字が並んでいます
📊 数字の範囲: 4〜21
🔤 何かの文字に対応している?
❓ どんな変換ルールがあるでしょう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【暗号解読フォーム】
あなたの答え:
┌─────────────────────────
│
│ ┌───────────────────────┐ │
│
│ └───────────────────────┘ │
│
│ [解読する]
│
│ ※ 英字で入力してください
│ ※ 間違えても何度でも挑戦できます
│
└─────────────────────────
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【正解者ランキング】 🏆
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🥇 探偵ランク S (30人)
正解時間: 1分以内
└─ 真の名探偵!瞬時に解読完了
🥈 探偵ランク A (127人)
正解時間: 1-5分
└─ 優秀な探偵!素早い解読
🥉 探偵ランク B (498人)
正解時間: 5-10分
└─ 立派な探偵!着実に解読
📖 探偵ランク C (2,891人)
正解時間: 10分以上
└─ 諦めない探偵!最後まで挑戦
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【統計情報】 📊
挑戦者数: 8,472人
正解者数: 3,546人 (41.8%)
平均解読時間: 12分34秒
平均試行回数: 3.2回
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【正解すると...】 ✨
次の記憶のカケラへのヒントが表示されます
┌─────────────────────────
│
│ ???????
│ 座標: ██.████, ███.████
│
│ ※ 暗号を解読すると表示されます
│
└─────────────────────────
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【他の探偵たちのコメント】 💬
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👤 探偵 #0892 (1時間前) ⭐️ランクS
「暗号より中村さんのメッセージが辛すぎた…
親友に嫉妬する気持ち、わかるから余計に」
♥ 共感 234 💬 返信 8
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👤 探偵 #1247 (3時間前) ⭐️ランクA
「お互いに本当の気持ちを言えなかった二人。
もし話せていたら、きっと救われたのに」
♥ 共感 567 💬 返信 23
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👤 探偵 #0421 (5時間前) ⭐️ランクB
「暗号解けた!次はあの場所なのか…
記憶を辿る旅が、どんどん深くなっていく」
♥ 共感 198 💬 返信 12
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👤 探偵 #2103 (8時間前) ⭐️ランクC
「何度も間違えたけど、諦めなかった!
記憶の探偵として、最後まで真実を追う」
♥ 共感 891 💬 返信 45
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ハッシュタグ: #消えた教室 #記憶の探偵
#暗号解読 #中村陽菜
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次の記憶のカケラを見つけるには、
暗号を解読して、物語を読み進めてください。
[← 記憶のカケラ#02] [第3章へ進む →]
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私たちは画面を見つめた。
暗号解読のインターフェース。正解者ランキング。他の探偵たちのコメント——まるで、私たちだけじゃない。たくさんの人が、この謎を解こうとしている。春野さんたち消えたクラスメイトの記憶を、取り戻そうとしている。
蒼太は紙に数字を書き出していた。その手が、わずかに震えている。
「暗号だな……」
彼は数字を見つめたまま、何かを考えている。指先で紙をなぞりながら、規則性を探しているようだった。
8, 9, 4, 4, 5, 14, 20, 18, 21, 20, 8
しばらく沈黙が続いた。
「これが、次の手がかりだ」
蒼太は立ち上がった。窓の外を見ながら、何かを考え込んでいる。
「明日、学校で調べよう。この暗号が何を意味するのか」
「うん」
私たちは視聴覚室を出た。廊下には、もう誰もいなかった。夕日が窓から差し込んで、長い影を作っている。オレンジ色の光が、廊下を染めていた。
私たちは学校を出た。
帰り道、私は中村陽菜のことを考えていた。彼女も、春野さんも、お互いに苦しんでいた。親友同士なのに、本当の気持ちを言えなかった。お互いに「完璧」を演じて、本当の自分を隠していた。
もし、二人がちゃんと話していたら。
もし、お互いの弱さを見せ合えていたら。
きっと、何か変わっていたはずだ。二人とも、もっと楽に生きられたはずだ。笑顔も、本物になっていたはずだ。
でも、それができなかった。
なぜなら、世界が「完璧」を求めたから。
弱さを見せることを、許さなかったから。
劣等感を持つことを、恥だと思わせたから。
私たちも、同じだ。
私も、蒼太も、きっと何かを隠している。本当の自分を出せずに、何かを演じている。みんな、そうなのかもしれない。
それが、どれだけ辛いことか。
春野さんたちの記憶のカケラを辿りながら、私は少しずつわかり始めていた。
消えた教室の真実が、何を意味しているのか。
そして、なぜ私たちだけが記憶を保っているのか。
その答えが、次の記憶のカケラにあるのかもしれない。
蒼太がまだ解読していない暗号。
明日、きっとわかるはずだ。
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【第2章 完】
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