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おはようございます!
昨日は古民家カフェ設立のための打ち合わせをしました。着々と準備は進んでいます。早く皆さんにご紹介できたらいいな……。
みんな、今日も学校にお仕事に頑張ってください!
【写真:昨日の莉良の「もうおしまいなの?」という子どもみたいな顔。初投稿のときより、幾分か表情が柔らかい。途中でおもちゃを取り上げられた子どものように心細そうだ】
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ネットアイドルとして決意をした翌日。
宗方からメールがあった。
『フォロワー500人突破おめでとうございます。今日はちょっといつもとは別の写真を撮ってみようと思います。13時に村の三角公園にて待っています』
時刻はまだ7時前だ。
莉良はいつも朝起きてから、ジョギングをしながら職場に向かうのがルーティーンだった。着替えは更衣室でできるし、体質のせいか汗がかきづらい。
黒いスポーツストッキングを履いて、上には吸水仕様のTシャツ1枚。5月の陽気には十分の格好だ。
村役場で午前の業務を行う。帳簿のチェックと、請求書の作成。こぢんまりした役場だからといって仕事は少ないわけではない。ご近所トラブルから、害獣駆除までなんでもござれ。
身体を張る仕事の方が多いかもしれない。役場にいるより、村を駆け回ってるほうの時間が長いなんてこともある。
村役場には20代の男の若手職員は莉良しかいないから、よく駆り出されるのだ。中野は受付業務でパソコンを叩いて忙しくしている。橋口村長は椅子にどっかり座って孫の手で背中を叩きながらテレビで落語を見て、がははと笑っている。
でも、それも悪い気はしなくて。誰かに必要とされている。そして、それに応えられる。その関係性が居心地よかった。
12時50分に公園の前に来た。宗方の姿はない。宗方はいつも、待ち合わせの時間ちょうどか数分後にやってくる。莉良は約束の10分前には待ち合わせ場所で待っていたい派だ。
見えた。
もう見慣れた白のランボルギーニ。白馬に乗って姫を助けてくれるのが王子様だというのなら、白のランボルギーニに乗ってくる宗方も王子様と呼ぶのだろうか。ふと、そんなことを考えてみる。
王子様ってよりかは、高貴な猫って感じだけど……。
ブルジョワ貴族に飼われているような、毛並みの艶々とした、品のいい猫。自分が愛でられる対象だとわかっているから、つんとすましていられる。
対して莉良は野良猫というところか。
誰かの愛を欲しがって欲しがって。得られないものの大きさに圧倒されて。日陰で生きてきた。莉良は過去の記憶の蓋が外れていくような気がして頭を振る。忘れろ。過去は過去、今は、今だ。
車が停まると、中から出てくるのはいつも通り戦闘準備万端のスーツを着た宗方だった。今日はジャケットは着てないみたいだ。
青色を水で溶いたようなライトブルーのシャツを着ている。袖をまくって、片手にはカメラ。なんか、見た目がごつくて、いかにも値段が張りそうなそんなカメラだ。
「おはようございます。いい天気で良かったです」
「おはようございます」
莉良は宗方と話す際は、やや首を上に上げなければならない。
これしてると、首疲れるんだよな。でも、目線を合わせるためにはこうするしかないし。
「今日は、ちょっと変化球が欲しいので。櫻川様は適当に遊具で遊んでもらってもいいですか?」
「はぁ……遊具で遊ぶ?」
「そうです。かけっこしたり、ブランコ乗ったりしてみてください。あ、カメラはお気になさらず。櫻川様の魅力を存分に引き出すために新調しただけですから。撮られているとは思わずに自然体で遊んでみてください」
「わ、かりました」
23歳。成人男性。突き抜けるような青空の下、10年ぶりに公園で一人遊びをします。
おはようございます!
昨日は古民家カフェ設立のための打ち合わせをしました。着々と準備は進んでいます。早く皆さんにご紹介できたらいいな……。
みんな、今日も学校にお仕事に頑張ってください!
【写真:昨日の莉良の「もうおしまいなの?」という子どもみたいな顔。初投稿のときより、幾分か表情が柔らかい。途中でおもちゃを取り上げられた子どものように心細そうだ】
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ネットアイドルとして決意をした翌日。
宗方からメールがあった。
『フォロワー500人突破おめでとうございます。今日はちょっといつもとは別の写真を撮ってみようと思います。13時に村の三角公園にて待っています』
時刻はまだ7時前だ。
莉良はいつも朝起きてから、ジョギングをしながら職場に向かうのがルーティーンだった。着替えは更衣室でできるし、体質のせいか汗がかきづらい。
黒いスポーツストッキングを履いて、上には吸水仕様のTシャツ1枚。5月の陽気には十分の格好だ。
村役場で午前の業務を行う。帳簿のチェックと、請求書の作成。こぢんまりした役場だからといって仕事は少ないわけではない。ご近所トラブルから、害獣駆除までなんでもござれ。
身体を張る仕事の方が多いかもしれない。役場にいるより、村を駆け回ってるほうの時間が長いなんてこともある。
村役場には20代の男の若手職員は莉良しかいないから、よく駆り出されるのだ。中野は受付業務でパソコンを叩いて忙しくしている。橋口村長は椅子にどっかり座って孫の手で背中を叩きながらテレビで落語を見て、がははと笑っている。
でも、それも悪い気はしなくて。誰かに必要とされている。そして、それに応えられる。その関係性が居心地よかった。
12時50分に公園の前に来た。宗方の姿はない。宗方はいつも、待ち合わせの時間ちょうどか数分後にやってくる。莉良は約束の10分前には待ち合わせ場所で待っていたい派だ。
見えた。
もう見慣れた白のランボルギーニ。白馬に乗って姫を助けてくれるのが王子様だというのなら、白のランボルギーニに乗ってくる宗方も王子様と呼ぶのだろうか。ふと、そんなことを考えてみる。
王子様ってよりかは、高貴な猫って感じだけど……。
ブルジョワ貴族に飼われているような、毛並みの艶々とした、品のいい猫。自分が愛でられる対象だとわかっているから、つんとすましていられる。
対して莉良は野良猫というところか。
誰かの愛を欲しがって欲しがって。得られないものの大きさに圧倒されて。日陰で生きてきた。莉良は過去の記憶の蓋が外れていくような気がして頭を振る。忘れろ。過去は過去、今は、今だ。
車が停まると、中から出てくるのはいつも通り戦闘準備万端のスーツを着た宗方だった。今日はジャケットは着てないみたいだ。
青色を水で溶いたようなライトブルーのシャツを着ている。袖をまくって、片手にはカメラ。なんか、見た目がごつくて、いかにも値段が張りそうなそんなカメラだ。
「おはようございます。いい天気で良かったです」
「おはようございます」
莉良は宗方と話す際は、やや首を上に上げなければならない。
これしてると、首疲れるんだよな。でも、目線を合わせるためにはこうするしかないし。
「今日は、ちょっと変化球が欲しいので。櫻川様は適当に遊具で遊んでもらってもいいですか?」
「はぁ……遊具で遊ぶ?」
「そうです。かけっこしたり、ブランコ乗ったりしてみてください。あ、カメラはお気になさらず。櫻川様の魅力を存分に引き出すために新調しただけですから。撮られているとは思わずに自然体で遊んでみてください」
「わ、かりました」
23歳。成人男性。突き抜けるような青空の下、10年ぶりに公園で一人遊びをします。



