学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった



「才野、またダンク生で見たいからやってくれ」

「無理、お前がやれ小野寺」

才野くんが手に持っていたボールを小野寺くんに投げた。
小野寺くんがそれをキャッチしてケラケラと笑う。

「無理に決まってんじゃん、田中行け」

「それこそ無理に決まってるじゃないですか、影井くんいってください経験者でしょう」

小野寺くんから田中くんそして自分に流れてくるボール。無理に決まっているじゃないか、と柴田に渡した。柴田は困惑した様子で「俺?」と声をあげる。

「柴田は俺より断然うまいよ、中学時代ダンクしてた」

「すごい嘘つくじゃん影井、そういえば球技大会の準決勝で逆転シュート決めたの知ってるぜ、宮瀬くん」

柴田から宮瀬くんへとボールが渡り、どこから湧いて出た自信なのか「まかせろ!」と宮瀬くんが、準決勝の時のように片手で投げた『まぐれシュート』。
案の定リングにもあたらず、板にぶつかり跳ね返った。
「ああ」と先ほどのやる気から情けない声に変わりながら宮瀬くんが飛んでいったボールを追いかける。

込み上げてくる面白さに口元を手で覆えば、隣で才野くんが吹き出すように笑った。

「はっ、はは、何やってんだよ、くっ、ふはっ」

才野くんが、めっちゃ笑っている。バスケを遠ざけていた、真っ暗闇にいた才野くんが、バスケットボールと何度も見上げたであろうゴールの前で笑った。

才野くんの声が伝染するように、みんなの笑い声が体育館に響いた。





「…遊びすぎたな」

「うん、才野くん家遠いのに大丈夫?」

「大丈夫」

気づけば外はもう薄暗くなっており、2人で駅までの道のりをのんびりと歩く。
体育館でみんなでバスケをして、そのまま6人全員でファミレスに行ってご飯を食べた。楽しい時間に満たされて、なんだか一歩、前に進めたような気がした。

空を見上げれば月が出ていて、隣をみれば才野くんも月を見ていた。月あかりに照らされた才野くんの横顔がとても綺麗で思わずじっと見つめてしまう。

「楓」

「え…?」

「って、呼んでいい?」

才野くんの顔がこちらに向いて照れくさくなって顔を前に戻す。小さく頷けば才野くんの少しだけ弾んだような「よかった」という声がきこえた。
才野くんは、どこまで俺の心臓を破壊させる気なのだろうか。

才野くんの鞄についているバスケットボールのストラップが目に入った。
最近まで俺が持っていたもの。ちゃんと持ち主に返せて嬉しいのにどこか寂しい。言ったら困らせるから言わない。

「楓」

「な、なに?」

才野くんは俺の正面に立つと、足を止めた。
そして鞄から取り出したものを俺の前に差し出す。
月あかりに照らされて揺れたのは、俺たちを繋いでいたストラップとは、形も色も違うバスケットボールのストラップ。

「…くれるの?」

「お揃いで買ったって言ったら子どもみたい?」

「そんなこと思ってないよ」

才野くんの手からそれを受け取る。
才野くんが鞄の中からお揃いのストラップを取り出した。その様子は嬉しそうで、ぎゅんっと心臓が痛くなる。
才野くんは元々鞄についていたストラップを外そうとしていた。

「あ、まって、それは外さないで」

「なんで?」

「もう、嫉妬とかしないから、それも才野くんにとっては大事なものだろ」

そう言うと才野くんは困ったように瞳を泳がせた。おそらく俺に悪いと思ってくれていたのだろう。
俺は才野くんの手からお揃いのストラップを奪って、元々ついていたストラップの横に並べるように付けた。「これでよし」と笑う。

「楓のも、俺がつける」

「うん」

俺の手からもう一つのストラップを取って、才野くんが丁寧に俺の鞄につけた。
同じ、お揃い、好きな人と一緒のものをもっている。
そんな幸福感に満たされながらまたゆっくりと歩きはじめる。

少し前を歩く才野くんの顔が見たくなった。
小さく口を開いて名を呼んだ。

「月」

「ん?」

才野くんが振り返る。あ、やっぱり照れくさい。
慌てて人差し指を空にあげた。

「が、あの、綺麗だなあって、今日満月かなあ」

誤魔化すようにそうへらりと笑った。
才野くんがあげた俺の手を掴んでゆっくりとおろす。

「…そうだな」

優しげに笑った才野くんが俺の手を絡みとって繋いで、横に並んで歩きはじめた。
いつも俺の前をいっているような気がしている。名前だって素直に呼べない俺を才野くんは好きだと言ってくれる。なんとも言えない甘い現実。

「やっぱり、Cの答え、違ったかも」

「え?」

才野くんの方を見ると、才野くんは意地悪な顔をしていた。そして繋がれた手を引き寄せられる。

「…ん」

重なった唇が一瞬で離れて、才野くんは「楓」と名前を呼んだ。

「違ったって、なに?やっぱり嫌いな人?」

むっとしながら放った言葉に才野くんは首を横に振る。甘さを存分に帯びたその声が、月の下で俺の耳にだけ届いた。



「この世の中で1番大好きで、大切な人」



【学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった】