言葉にする前に、身体が先に動いた。 どちらが合図したわけでもない。二人は弾かれたように列を抜け、霧の中へと躍り出た。 背後を振り返る余裕などなかった。ぬかるむ地面を蹴り、ほとんど逃げるように、元来た方へと全力で走った。
追いかけてくる足音はない。審判員や、あの無機質な背中の列から、罵声や制止の声が飛んでくることもなかった。ただ、どこまでも重い沈黙が広がっている。その何も言われない静寂が、逆に逃げ出した二人の背中を冷たく刺し、得体の知れない恐怖を煽った。
「はあ・・・はあ・・・」
どれくらい走っただろうか。 無無は堪らず立ち止まり、泥に汚れた膝に手をついて、激しく肩を上下させた。 肺に流れ込む空気はひどく冷たく、喉を焼くような感覚がある。死んだはずなのに、鼓動だけがやけに騒がしく耳の奥で鳴り響いていた。
「流石に怖いて。そやさかい、一回戻ろ」
追いかけてくる足音はない。審判員や、あの無機質な背中の列から、罵声や制止の声が飛んでくることもなかった。ただ、どこまでも重い沈黙が広がっている。その何も言われない静寂が、逆に逃げ出した二人の背中を冷たく刺し、得体の知れない恐怖を煽った。
「はあ・・・はあ・・・」
どれくらい走っただろうか。 無無は堪らず立ち止まり、泥に汚れた膝に手をついて、激しく肩を上下させた。 肺に流れ込む空気はひどく冷たく、喉を焼くような感覚がある。死んだはずなのに、鼓動だけがやけに騒がしく耳の奥で鳴り響いていた。
「流石に怖いて。そやさかい、一回戻ろ」
