象の足の下でグチャッと潰れた瞬間より、今の方がよっぽど怖い。無無は唇を噛み、恨み言のように言葉を吐き出した。「『象売りマッセ』って言っても、『象買いマッセ』って人、ひとりもおらんかったのに・・・」声が少し震える。「しかもやで。『象をウルウル詐欺ビジネス、儲かりマッセ』って騙されて、フランチャイズ契約してもうたんや」在山は黙って聞いている。いつものおっとりした顔に、わずかな影が差す。「オレら、詐欺の被害にあってる方やのに・・・」少し間があって、在山がぽつりと言った。「・・・天国に行けるかも?」無無は一瞬、言葉を失くした。「のんきなこと言ってんじゃないよ」

 そう言いながら、無無は在山の腕をつかんだ。力は強かったが、指先がわずかに震えていた。「並ぶしかないんや。行くぞ」在山は引っ張られるまま、もう一度だけ振り返った。