「あっ、ちょっと忘れ物しちゃって・・・さーせん」  無無は突然、愛想笑いを浮かべながら後ずさりした。そのまま踵を返し、脱兎のごとく小走りで元来た道を引き返す。在山も慌ててその背中を追った。
 二人は三途の川のほとりから必死に離れ、逃げるように舞台中央へと戻ってきた。
「天国か地獄のジャッジ、闇を抱えてるかじゃないやんけ!」  無無は、自分たちを騙した闇売への怒りを爆発させた。 「生前の良い行い大喜利させられた挙げ句、なけなしの良い行い全部吸い取られただけやないか!」
「詐欺師、三途の川でも詐欺られる~」   二人の情けない叫びが、重い霧の壁に跳ね返り、空虚に響いた。  現世で人を騙し続けてきた自分たちが、死後の世界でさらに手酷く、それも「良い行い」という全財産を毟り取られる形で騙される。そのあまりに完璧で皮肉な結末に、二人の心からはポキリと音がして芯が折れた。