だってお前には彼女がいるから

 数日後、陽翔と出かけることになった。前まで一緒に出かけていたこととは違う。恋人、という関係になった今、間違いなく「デート」なのだ。

 そう考えると緊張する。どんな服を着ていけばいいか。数日前からインターネットで流行っている服を調べ、店にも行って自分に似合いそうな服を探した。

 必死になって服を考えている自分に気づいて、俺は思わず笑ってしまう。前に陽翔と2人で行ったときは、大学に着ていく服で行ったのに、今の俺はそれでは納得できなくなってしまっている。

 時間より30分前に到着できるように時間を考えながら待ち合わせ場所に向かう。すると、既に陽翔が待っていた。まだ30分前なのに。到着が早すぎる。

 少し離れた場所から、陽翔のことを見る。相変わらずイケメンだし、スタイルが良い。

 この人が、俺の恋人になったのか。そう思うと、じわじわと心の底から喜びがわき上がってきた。

 前まではどこか遠いと思っていたけれど、今はそんなことがない。

 俺は周りの視線を集めている陽翔の方に近づいていく。その時、陽翔に声をかける女性たちがいた。

「お兄さん、一緒に遊びませんか?」

 逆ナンっていうやつだろうか。実際に見るのは初めてだ。ほんのりと頬を染めながら陽翔に声をかけている女性たちを見ていると、陽翔がどんな反応をするか気になりだしてしまい、俺は足を止めた。

 陽翔はちらりとスマートフォンから顔を上げたが、その顔に興味はなさそうだった。

「いえ、人を待っているので」
「そうなんですねー」

 陽翔は興味なさそうにスマートフォンへと目を戻す。女性たちはすぐに諦めたようで、食い下がることもなく離れていった。

 彼女たちが離れてから、俺は陽翔へと近づき、肩を叩く。

「陽翔」
「藍星!」

 ばっと顔を上げた陽翔がふわりと微笑む。先ほどの表情と全く違う。その輝かんばかりの笑みが眩しい。

「今の人たち、知り合い?」
「いや、全然」
「ふーん」

 興味があったため聞いてみると、陽翔はあっさりと頷いた。やはり、逆ナンか。

 陽翔が俺のことを好きでいてくれているのは分かっているが、それでもやはり複雑な気持ちだ。俺には彼女たちみたいに自分から知らない人に声をかける勇気はない。それをできることが、少し羨ましいと共に、いつか陽翔はそんな人の情熱に頷く日が来るかもしれない。

 そんなことを考えると、ぱちりと目が合う。一瞬、驚いたように目を見張った陽翔が、美しく微笑んだ。

「他の人になんて、目移りするはずがないだろう?」

 陽翔は笑って言う。まるで、俺の心を見透かしたように。そんなに顔に出ていただろうか。慌てて自身の頬に手を当てると、陽翔はさらに頬を緩めた。

「だって、俺にはお前がいるから」

 そう言った陽翔は、心底嬉しそうだった。そんな陽翔を見ていると、俺まで嬉しくなってくる。緩んでいく表情を気にすることなく、俺も微笑み返した。

「そうだな。お前が目移りするはずなんてない。だって、お前には俺がいるから」