陽翔は、ずっと、俺のことを覚えていてくれていた。しかも、一瞬の邂逅がまるで人生で1番の幸福のような顔をしているのが、信じられない。だって、本当に一瞬だったのだ。
「……陽翔?」
感傷に浸るように黙ってしまった陽翔を見て、俺は思わず声をかけた。驚いたようにこちらを見た陽翔は、表情を緩めた。
「なんでもない。とにかく、俺は藍星が思うよりもずっとお前のことが好きってことだ」
「……ええ?」
確かに、距離は近いと思ったし、告白されてからは好意を見せてはくれている。それでも、俺が思うより、だろうか。
「翠と話しているときも、俺の方を向いてほしいと思ってしまうし。お前が、俺だけを見ていれば良いのにって思うことすらある」
「……」
それは確かに。翠さんに嫉妬するほどだとは思っていなかった。何と言えばいいか分からずに黙った俺を見て、陽翔は微笑んだ。
「だけど、藍星。それは、俺が勝手に思っているだけだ。お前は気にする必要はない」
「え」
理解が追いつかず、俺は間抜けな声を落としてしまった。
陽翔は、俺からの「好き」を欲していない。
そう考えると、寂しくて、身体の体温が一気に下がった感覚に、俺は僅かに身震いをする。
俺の表情をどう思ったのか。陽翔は目を伏せた。
「俺は、お前が知る何倍も面倒な人間だし、重い人間だから」
掠れそうな声で言った陽翔を見て、俺は息を呑む。
陽翔は、俺のことが好きだと言うし、付き合いたいと言うし、特別になりたいと言う。それでも、その気持ちを伝えるだけで、俺の返事を期待していない。いや、そもそも振られる可能性の方が高いと思っているのだろう。
それが、少し悲しかった。上手くいえないけれど、陽翔自身が好かれることを望んでいないのが、悲しい。
そう思った時点で、俺の気持ちは決まっていたようなものだ。
俺は慌てて陽翔の手を掴んだ。
「待って」
「ん?」
驚いたように顔を上げた陽翔に、ゆっくりと告げる。
「俺、まだ何も言ってない」
嫌だった。陽翔が、自分だけで諦めてしまうことが。俺から、離れてしまうことも。
「陽翔。俺は、その」
何を言えば分からない。それでも、しっかりと伝えたい。
「お前が俺を誘ってくれるのは、嫌じゃなかった。むしろ、嬉しかった。それに、陽翔が俺に優しくするたびに……お前のことを変に意識しそうになって、慌てて否定していた。お前には、彼女がいるからって。彼女がいる相手にそんなことを考える自分が嫌になって、何度も否定していた」
『だって、陽翔には彼女がいるから』
何度も俺はそう思った。しかし、それは言い訳だった。俺が、陽翔を好きにならないため、自分に言い聞かせていただけだった。
「そうやって、陽翔のことを考えて、どこか落ち着かなくて、友達というだけだと何かが物足りなくて、陽翔の特別でありたいと祈ってしまう。これを恋と呼んでいいのなら、俺はお前のことが好きだよ」
言葉にして、確信を得る。ああ、そうだ。やっぱり、俺は陽翔のことが好きだ。あのキスをきっかけに気づきはじめていた恋心に、少し自信を持って断言できるよな気がする。
がばっと抱きつかれて、俺は思わず後ろに一歩下がる。ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、俺は驚きながらも陽翔を抱擁しかえした。
「藍星」
「うん」
「大好き、愛してる」
好き、と言われてふわりと心が浮き上がる感覚があった。俺は間違いなく浮かれている。今なら、空を飛べるかもしれない。好き、というのはこんなに素敵な言葉だっただろうか。
陽翔を抱きしめる手に力をこめながら、俺も呟いた。
「うん。俺も好き」
俺の声はしっかりと届いたようだ。さらに強く俺のことを抱きしめた陽翔が、俺から離れる。俺の目を見た陽翔が、強張った表情で、しかし柔らかい目をしながら言う。
「俺と付き合って、ください」
陽翔の甘そうにこちらを見ているチョコレート色の瞳を凝視しながら、俺は頬を緩めた。
「はい」
「……陽翔?」
感傷に浸るように黙ってしまった陽翔を見て、俺は思わず声をかけた。驚いたようにこちらを見た陽翔は、表情を緩めた。
「なんでもない。とにかく、俺は藍星が思うよりもずっとお前のことが好きってことだ」
「……ええ?」
確かに、距離は近いと思ったし、告白されてからは好意を見せてはくれている。それでも、俺が思うより、だろうか。
「翠と話しているときも、俺の方を向いてほしいと思ってしまうし。お前が、俺だけを見ていれば良いのにって思うことすらある」
「……」
それは確かに。翠さんに嫉妬するほどだとは思っていなかった。何と言えばいいか分からずに黙った俺を見て、陽翔は微笑んだ。
「だけど、藍星。それは、俺が勝手に思っているだけだ。お前は気にする必要はない」
「え」
理解が追いつかず、俺は間抜けな声を落としてしまった。
陽翔は、俺からの「好き」を欲していない。
そう考えると、寂しくて、身体の体温が一気に下がった感覚に、俺は僅かに身震いをする。
俺の表情をどう思ったのか。陽翔は目を伏せた。
「俺は、お前が知る何倍も面倒な人間だし、重い人間だから」
掠れそうな声で言った陽翔を見て、俺は息を呑む。
陽翔は、俺のことが好きだと言うし、付き合いたいと言うし、特別になりたいと言う。それでも、その気持ちを伝えるだけで、俺の返事を期待していない。いや、そもそも振られる可能性の方が高いと思っているのだろう。
それが、少し悲しかった。上手くいえないけれど、陽翔自身が好かれることを望んでいないのが、悲しい。
そう思った時点で、俺の気持ちは決まっていたようなものだ。
俺は慌てて陽翔の手を掴んだ。
「待って」
「ん?」
驚いたように顔を上げた陽翔に、ゆっくりと告げる。
「俺、まだ何も言ってない」
嫌だった。陽翔が、自分だけで諦めてしまうことが。俺から、離れてしまうことも。
「陽翔。俺は、その」
何を言えば分からない。それでも、しっかりと伝えたい。
「お前が俺を誘ってくれるのは、嫌じゃなかった。むしろ、嬉しかった。それに、陽翔が俺に優しくするたびに……お前のことを変に意識しそうになって、慌てて否定していた。お前には、彼女がいるからって。彼女がいる相手にそんなことを考える自分が嫌になって、何度も否定していた」
『だって、陽翔には彼女がいるから』
何度も俺はそう思った。しかし、それは言い訳だった。俺が、陽翔を好きにならないため、自分に言い聞かせていただけだった。
「そうやって、陽翔のことを考えて、どこか落ち着かなくて、友達というだけだと何かが物足りなくて、陽翔の特別でありたいと祈ってしまう。これを恋と呼んでいいのなら、俺はお前のことが好きだよ」
言葉にして、確信を得る。ああ、そうだ。やっぱり、俺は陽翔のことが好きだ。あのキスをきっかけに気づきはじめていた恋心に、少し自信を持って断言できるよな気がする。
がばっと抱きつかれて、俺は思わず後ろに一歩下がる。ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、俺は驚きながらも陽翔を抱擁しかえした。
「藍星」
「うん」
「大好き、愛してる」
好き、と言われてふわりと心が浮き上がる感覚があった。俺は間違いなく浮かれている。今なら、空を飛べるかもしれない。好き、というのはこんなに素敵な言葉だっただろうか。
陽翔を抱きしめる手に力をこめながら、俺も呟いた。
「うん。俺も好き」
俺の声はしっかりと届いたようだ。さらに強く俺のことを抱きしめた陽翔が、俺から離れる。俺の目を見た陽翔が、強張った表情で、しかし柔らかい目をしながら言う。
「俺と付き合って、ください」
陽翔の甘そうにこちらを見ているチョコレート色の瞳を凝視しながら、俺は頬を緩めた。
「はい」



