転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『どこに逃げようとしているんだ?』
『逃げる前に、我らの相手をしてもらおうか?』
『ひいっ……!』

一息に、懐まで潜り込まれる。
屈強な勇者リスアと魔王ウリを前にして、ジルハルト殿下は無様な姿をさらした。
勇者と魔王。
これ以上ない最強の布陣を前にして、ジルハルト殿下たちに取れる手段はもはやなかった。

『さあ、この因縁に決着をつけようではないか!』
『即刻、消し炭にしてやろう!』

勇者と魔王による、ぐうの音も出ないほどの制裁が始まろうとした。
その恐怖に絶えきれなかったのだろう。
完全に心が折れたジルハルト殿下たちは残らず、泡を食って気絶した。
そこで画面が切り替わり、アナウンサーの私がいる広場が再び、映し出される。

『まさかの決着。この後、ジルハルト殿下たちは、ルージュ王国の王城に連行される手筈になっております。暴挙を繰り返したジルハルト殿下たちは、厳しい罰を免れないでしょう』

私がそう発した瞬間、画面端には『ついに迎えた、ジルハルト殿下の最後の瞬間』というテロップが表示された。

『ルージュ王国の闇が明らかになったところで、ここでお知らせです。精霊さんたちと人間が共生する、新たな国、アウリ聖王国、ついにお披露目です!』
「待っていました!!」

建国セレモニーの開幕に、ラトレ村の広場からは大歓声が響き渡る。
画面端に『アウリ聖王国、建国セレモニー』というテロップが表示されると、その瞳はますますもって輝きを増す。
広場に集まった人たちは、もはや待ち切れないとばかりに表情を輝かせた。

——ドンッ。

広場の奥にいた花火の精霊さんが手をかざすと、花火の音が辺りに轟いた。
同時に、空に大輪の花が咲く。
さらに花火の精霊さんによる、生中継ならではの光の演出で、世界中の視聴者さんたちの視線を一瞬で釘付けにする。

『ようこそ、我々の国へ!!』

精霊さんたちが魔法でキラキラと祝福の光を放ち、セレモニーを盛り上げた。

アウリ聖王国——。

妖精さんたちが舞う、晴れやかな空を背景に、そびえ立つのは威風堂々たる古城。
色鮮やかなお菓子で作られたような造りの建物と、青水晶で彩られた中央通り。
木々が生い茂る噴水広場の周りを、精霊さんたちがくるりとダンスを披露している。
そして、風光明媚な景色の中でも一際目を惹くのは、大きな虹の門。
それはラトレ村とアウリ聖王国をつなぐ門だ。
まるで前世で読んだ、おとぎ話の物語を形にしたような王国だった。

『この放送を見ている、すべての人たちへ星の大精霊の祝福を!』

両手を広げて紡がれる言葉に沿って、淡い光の雨が舞い降りる。
飛び散っていく粒子は、まるで星のようだ。
大きな虹の門を中心にして、弾けた星の光はキラキラと輝きながら宙に溶けていく。

「すげえ!!」
「美しい国だ!!」

歓声は鳴り止まない。
誰もが、その幻想的な光景に魅せられていた。

『これほど、美味しい料理があったとは……!』

さらに広場の屋台の紹介もしていき、王様たちが料理を試食する場面もあった。
たこ焼き、焼きそば、ホットドッグ。
屋台の定番も変わり種も、余すことなく楽しんだ。
楽しみも美味しさも次に繋がる。
次回の番組が放送される折にはきっと、ラトレ村とアウリ聖王国は、さらに交友を深めているだろう。
私の胸は春風に刺激され、リズミカルに弾んだ。