転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

「花火を打ち上げたいの。お願いできる?」
『かしこまりました』

私のお願いに、花火の精霊さんは快諾する。

「わあっ、なになに!?」
「かわいい!」

子どもたちはたちまち、好奇心むき出しで近寄ってくる。
花火の精霊さんは平然として、子どもたちに囲まれていた。
温和な花火の精霊さんは、意外と子ども慣れしているのかもしれない。

「私は、星を司る大精霊。大精霊はね、自分と同じ属性の眷属(精霊)を生み出すことができるのよ!」
「おなじぞくせい?」
「けんぞく……ってなに?」

疑問が尽きない子どもたちに、私は言い直した。

「えっとね、精霊のお友達を呼ぶことができるの」
「すごい!」

子どもたちのはしゃぐ声に、私は少し照れくさそうにする。

「……なるほどな」

サフランくんは目を見開いたが、すぐに納得する。

「大精霊だと、そんなすごいこともできるんだ。言われてみれば、手荷物がないな」

荷物を持たない旅人なんて、普通ならあり得ない。
女性なら、特にカバンのたぐいは必須だ。
手ぶらという時点で、私がただ者ではないと踏んだのだろう。

「じゃあ、花火の打ち上げをお願い。準備はいい?」
『もちろんです』
「さあ、今のラトレ村の空は、絶好の花火日和! 打ち上がりますのは、聖女アリスの帰還を祝う特大スターマインです!」

私が目配りすると、花火の精霊さんは華麗にお辞儀をした。

——ドンッ。

花火の精霊さんが手をかざすと、花火の音が辺りに轟いた。
同時に、空に大輪の花が咲く。

「なんだ、これ? すげぇー!」
「わあっ! すごーい!」
「キラキラ!」

サフランくんと子どもたちは、同時に頭上を仰いだ。
絶え間なく空を彩るそれを見て、村のあちこちから歓声が上がる。

「……花火を見るのなんて、久しぶり。これって、星魔法?」
「うん。花火に似せた星魔法。花火の精霊さんに打ち上げてもらっているの」
「そうなのね、素敵!」

私の説明に、アリスはぱあっと表情を輝かせた。
赤や緑、黄色や紫。
色とりどりの光が、次から次へと空に高く放たれる。
そして、巨大な円を描き、またたき、こぼれ落ちていくように散っていく。

「子どもたちが喜んでくれて良かった……」

私はほっと胸をなで下ろしてから、花火の精霊さんを見つめた。

「次の花火で、最後にしようか。花火の精霊さん、ありがとう」
『分かりました。では、とっておきの花火を打ち上げますね』

空に咲いた一番大きな花火が、私の想いに応えるように儚く散っていく。
花火の精霊さんはそれを見届けた後、すっと姿を消していった。
花火が終わった後、静まり返った静寂の中で、私はサフランくんにつぶやいた。