転生したら、女神様の凡ミスに遭いました



歓迎会の前に、ルージュ王国の王城でひと悶着あった。
何しろ、ジルハルト殿下の差し向けた使者が、世界規模で公開処刑された上に、ジルハルト殿下たちの醜態をさらしてしまったからだ。
さらには星を司る大精霊、つまり、私を懐柔しようとする目論見もあったようだが、こちらも既に破綻していた。

『何ということだ……』

ルージュ王国の国王様は、思わぬ現状に頭を抱えていた。

『ジルハルトが派遣した使者。それが我が国の国防低下へとつながり、ここまで国を危険にさらしてしまうことになるなんて……』

ジルハルト殿下たちが、テレビ画面で放った失言と醜態は、各国に波紋を広げる形になった。

『このような重大なことを放置していた、私の罪ということか……』

王様は深いため息をつく。
もう、これ以上速くならないだろうと思っていた鼓動が、さらに駆け足になる。
指先まで心臓のように脈打ったみたいだ。
王様はそれでもできるだけ、近隣諸国との外交を試みた。
異世界TVの放送によって、風評が立ってしまったルージュ王国を何とか立て直そうとしたのだ。
だが、一度、植えつけられたイメージを覆すのは厳しい。
それに流出してしまった情報をすべて封じ込めるのは、ルージュ王国のような、小国の国力では現状、難しかった。
当然、批判が殺到し、困難な立場に陥ることになる。

『歓迎会当日には、この国はどうなってしまうのだろう……』

王様は宰相とともに、ジルハルト殿下が犯した愚行の後始末に追われていた。
テレビという未知の娯楽は、ルージュ王国の王都の民だけではなく、世界中の人々を虜にしてしまっている。
さらに、聖女であるアリスがいなくなったことで、聖女の加護を失ったルージュ王国は衰退の一途をたどっていた。
しかも、精霊さんと妖精さんたちがこぞっていなくなったため、王都は植物が育たない不毛の地になりかけていた。

温暖な気候のもと、多種様々な農作物で繁栄してきた小国、ルージュ王国。

だが、ジルハルト殿下が犯した愚行のせいで、今はその面影もない。

聖女も精霊も妖精もいない、ルージュ王国の王都。

その末路を察したのだろう。
王都を離れていく王都の住民たちが、後を絶たなかった。
かつては王都の人たちの笑い声や、豊かな緑で溢れていた王都。
だが、今は不気味なほど静かで、作物が枯れて、茶色い土埃が舞う街になった。
かつての賑わいが消え、自分の足音だけが空虚に響く王宮の廊下。
王宮の庭園に咲き誇っていたはずの国花が、一晩で灰のように崩れ落ちる。

『この地は、もうダメだな……』

代々、この地で農家を営んできた老人が、枯れた畑を前に絶望して、街を去る後ろ姿も見受けられた。