転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『王城は大混乱だが、ラトレ村の方は幸せそうな雰囲気だな……』
『王都にいるより、ラトレ村の歓迎会に行った方が幸せになれるんじゃね?』

実際、それを見たルージュ王国の人たちの間では、王国からの移住ブームが巻き起こり始めていたからだ。

『今すぐ、この物体を叩き壊せ!』
『それが何故か、触れることができなくて……』
『なら、宮廷魔道具師たちを呼べ! 一刻も早く、この状況を何とかしろ!』

わめき散らしているジルハルト殿下は、完全に余裕がないみたいだ。
でもね、ジルハルト殿下。
宮廷魔道具師さんたちを呼んでも、どうにもできないと思うよ。
私はほくそ笑む。

『あ、今、ルージュ王国の宮廷魔道具師の方々が集まってきましたね! 果たして、この放送を止められるのか!? ……あ、無理そうです。残念!』

マイクを手にしたアリスが、ここぞとばかりに告げる。

『これ、神の領域の魔法、いや、魔道具です……無理です、お手上げです、と。エリートである魔道具師たちが、次々とさじを投げています。……おっと、あまりのショックからでしょうか? ここで、ジルハルト殿下たちの変顔が!』

アリスの一声に、どっと笑いに包まれた。

『本人は必死に命じているつもりでも、異世界TVの「パニック中継コーナー」として、世界中に放送されている皮肉。もはや殿下は、番組を盛り上げる、最高の「リアクション芸人」枠ですね!』

ド正論きた!
アリスはこれまで、聖女として、ほとんど休みがない過酷な環境で働き続けてきた。
それなのに濡れ衣を着せられ、いきなり婚約破棄させられた。
しかもそのまま、王都から追放決定。
理不尽な待遇。
さらに、アリスの実家の食堂を問答無用で潰そうとしたりと、ジルハルト殿下たちから不当な扱いを受け続けた。
もはや、身から出たサビだろう。

『ここで、視聴者プレゼントのお知らせです。今なら、ジルハルト殿下のサイン入りのルージュ王国の機密文書(写し)を、抽選で10名様にプレゼント! 数に限りがあります! 欲しい方はぜひ、歓迎会へお越しください!』
「マジで! 欲しい!」
『機密文書だと!? 一刻も早く、回収しろ!』

アリスの容赦ない追い打ち。
その瞬間、視聴者たちの声は、プレゼント告知に色めき立つ者たちと、さらに顔面を崩壊させて絶叫するジルハルト殿下たちとで二分化された。

ジルハルト殿下のサイン入りの機密文書。

スパイや他国にとっては、喉から手が出るほど欲しいお宝が、バラエティ番組の景品になっている。
もし、それがスパイや他国に渡れば、ルージュ王国の権威が完全に崩壊してしまうだろう。
この瞬間、テレビの盛り上がりが最高潮に達し、ジルハルト殿下の怒りも最高潮に達した。