転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

「この村にはちょうど、我々がいる。外圧を作れば、ルージュ王国も下手に手出しできないはずだ!」

魔王軍を総動員して、ルージュ王国の陰謀に立ち向かう気満々なのは魔王ウリだ。
世界が滅ぶほどの気合いを見せている。
まさに最強の脅しだ。
放って置いたら、大変なことになりそうだ。

「よし、村の守りは、私たちに任せろ!」
「……ふむ。守りを厳重に固めれば、ルージュ王国側も、アウリたちを容易に拉致することはできないだろう!」

目的が定まれば、もはや、迷いはなかった。
勇者リスアと魔王ウリはやる気満々だ。

「では、私たちも即急に、ラトレ村全体に結界を張りましょう」
「今後の発展を考え、広大で強力な結界を張るのがいいかもしれないわね」

マリン様とリラ様も、ミモザ帝国の従者さんたちと内密な会議を開いている。
この場にいるみんなが、ルージュ王国の陰謀に一致団結して立ち向かおうとしていた。
ミモザ帝国と魔王軍とギルドの保護下にあるラトレ村。
そのことを知れば、ジルハルト殿下たちは動揺をあらわにするだろう。

「……大変なことになったわね」

アリスの言葉が、すべてを物語っていた。
強引な勧誘を受けるという心配はなさそうだけど、逆方向に想定外の事態になってきた。
これから先、大丈夫だろうか。
不安に思った時、サフランくんがぽつりとつぶやいた。

「アウリ様。力や道具は、善きことに使うこともできるし、悪いことに使うこともできます」
「えっ……?」

一瞬、自信のない自分の心を読まれたかと思った。
だけど、そうではなかった。
サフランくんの瞳は、どこまでもまっすぐだったから。

「昔、母さんが言っていたんです……」

そう前置きして語り始めたのは、サフランくんの過去だった。

『ねえ、サフラン。あなたは将来、たくさんの人たちを助けたいのよね?』
『はい! 俺の力で、みんなを幸せにしたいです!』
『だったら、自分の持っている力を正しく使うのよ。どんな力でもうまく使えば、人を救い、悪用すれば、人を傷つける』
『傷つける……』
『……大丈夫よ。あなたは優しい子だから、きっと正しく使いこなせるわ』

その力強い言葉に、私ははっとした。
どんな力であろうと、それを使う者によって、毒にも薬にもなる。
サフランくんのお母さんの言葉には、そんな意味合いが込められているように感じられたからだ。

サフランくんは幼い頃に、森の中に捨てられた。
だが、それまでは『家族』と一緒にいたのだろう。

昔のことを語るサフランくんの表情は穏やかだった。