転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

誰かが、ラトレ村の警護依頼を受けてくれるまでは気を抜けない。
とはいえ、みんながいれば、百人力だ。
ジルハルト殿下たちの出方が心配だけど、こうして冒険者ギルドに依頼を出すことはできた。
ラトレ村の警護は、何とかなりそうだ。
次は、精霊さんたちのための国造りに向けて、試行錯誤していくだけだ。

精霊さんたちは、私の大切な仲間だ。
絶対に、危険にさらすわけにはいかない。
そのためにも、精霊さんたちのための国造りを頑張らないと。

だけど、精霊さんたちのための国を造るのは容易ではない。
それなりの準備が必要である。
物資、設備、人出など。
すべてがまだまだ、足りない。
そんな根本的な問題に直面していたけれど。

「ラトレ村の方とお見受けします」

ギルドを出ようとすると、ばったりと女の人に出くわした。
金髪碧眼の見目の整った女性だった。

「……あなたは?」
「僕は、ここのギルドマスターです。ようこそ、我がギルドへ」
「ええっ! ギルドマスター!?」

私たちの驚愕に、女の人はふふ、と上品に微笑む。

「ただのギルドマスターではないですよ。あなた方と同じ、『アウリス』。アウリス・ベルワと申します。『アウベル』とお呼びください」

この港町のギルドマスターが、私たちと同じ前世を持つ『アウリス』。
二重の意味で驚きだ。
あまりに突然の出来事に、夢でも見ている気持ちになる。
まさか、分裂した私の一人がギルドマスターになっているなんて、思ってもみなかった。
だから、今の時点では会えたことへの感動よりも、驚きが勝っている。

「アウベルさん。あの、どうして私たちがアウリスだと?」

私はふと、気になったことを尋ねる。

「僕はギルドマスターだからね。近隣の情報は常に仕入れています。それに、勇者リスアの出身地がこの港町なんですよ」
「ええっ、そうなんですか?」
「はい。僕たちは、幼い頃からの幼なじみなんです」

思いがけない事実に、私は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。

「彼女から、事情を伺っています。『ラトレ村の警護依頼』を出しに来られたんですね」
「はい」

どうやら、勇者リスアから、私たちの事情をあらかた聞き及んでいたみたい。

「では、僕の方からも、冒険者さんたちに仕事の斡旋をできないか、試みてみますね」
「ありがとうございます」

港町ヴァルバルトに来てから早速、心強い味方ができたような気がした。

「ギルドを訪れたことで巡り会えるなんて、不思議な縁ね。もしかすると、わたしたちは別の人生を歩んでも、必ず巡り会えるのかもしれないわね」

そこにアリスも加わったことで、今までの溝を埋めるように、『アウリスたち』がそろった気がする。

不幸続きの残念転生。

女神様の凡ミスで、転生の間に来た時に、私の存在が分裂してしまったけれど。
悲しき過去は別れじゃなくて、ただいまに繋がる。
アリスが言ったとおり、こうして、私たちはいつか巡り会える運命にあるのかもしれない。

「うーん。よく分からないけれど、アウリ様とアリスは本当に顔が広いんだな……」

ただ、サフランくんは一人、事情が飲み込めず、置いてきぼりを食らっていた。