転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『今日のごはんは、親子丼にするか』
『私は、カツカレーにしよう』
『「タッチパネル」というものを押すと、しばらくしてから料理が出てくる。この仕組みは素晴らしいな』

最初はこの森を出るまでの拠点だったけれど、いつの間にか、調査官さんたちは小屋に居着いてしまっている。
よほど、居心地が良かったのだろう。

「実は、タッチパネルで選んだ料理は、アリスのお父さんとお母さんが作っているんだけどね」

私はこそっと、内緒話をするように小声でつぶやく。
調査官さんたちは、本来なら『森の牢獄に拘束したまま、放置する』つもりだった、
だが、優しいアリスの両親の意向で、『移住食』だけは維持することになったのだ。
まあ、あのまま、行き倒れにするのは目覚めが悪いしね。

『はあ~~。俺はもう、ここで暮らし始めてから一生分は驚いたぞ』
「私もだ」
『ここでの暮らしを伝えたら、虚偽報告で処罰されるかもな』

調査官さんたちは、調査官の仕事をしていた時よりも、快適で悠々自適な暮らしをしているようだ。
ちなみに、設備はすべて、現在知識をもとに呼び出した精霊さんの力のおかげである。
そして、美味しい料理や飲み物は、アリスのお父さんとお母さんのおかげだ。

『まさに、俺たちの理想を再現したような場所だな。王国に戻るより、ここにいた方が幸せなのでは……?』
『よし、決めた! 私は帰らないぞ! 一生、この小屋で暮らす!』
『スローライフ、最高!』

調査官さんたちは元気を通り越して、違うところに行ってしまった。
そんな元気溌剌な彼らの状況の説明は置いといて、改めてミモザ帝国の港町、ヴァルバルト。

「うわあっ、綺麗!」

潮風が頬をなでて、私の髪を揺らす。
港には、大小様々な船が停泊していた。
その向こうには、コバルトブルーの海原が水平線を描いている。

「海、すげえな!」
「本当ね!」

一緒に付き添ってくれたサフランくんとアリスも感動していた。

「よし。早速、冒険者ギルドに行きましょう!」

私たちは白いレンガが敷き詰められた石畳を、色鮮やかな建物の間を縫って進む。
カラフルな建物が並ぶ港町。
海に吹く優しい風を肌で感じ、染み渡る青空を見上げる。

「大きな港町ね。冒険者ギルドに行くのが楽しみだわ!」

心なしか、足取りが軽くなる。
視線を向ければ、アリスとサフランくんも、冒険者ギルドに行くのがよほど楽しみなようだ。
肝心の冒険者ギルドは、街の中心部にあった。
ギルドに入ると、受付の女の人がテーブルを整えていた。