転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『春といえばお祭り、お祭りといえばラトレ村!』

リボンとフリルを翻し、私とアリスは回る。
今回も聖女だとバレないように、アリスは変装をしている。
ステップを踏むと、指でハートを作り出した。
その背後には、小さな妖精さんたちがふわりと舞い踊る。
そして、私たちはとびきりの笑顔を浮かべて、画面の向こうの視聴者さんたちへ語りかけた。

『期間限定の春グルメも続々登場! スペシャルイベントも開催中! 精霊と妖精に会える村。ラトレ村に行こう!』

私たちのバックには、無数のスイーツの映像が乱れ飛ぶ。
いちごのショートケーキにチョコケーキ、ティラミスにロールケーキ。
デニッシュ、ワッフル、モンブランも。
よりどりみどりのスイーツの鮮やかさな色は、まるで虹のようだ。

精霊さんと妖精さんたちの移住をお祝いする、期間限定のスペシャルイベント。
その開催を祝して、放送したのが先程のコマーシャルだ。

短いコマーシャルだったけれど、効果は抜群。
妖精さんたちの出演も手伝ってか、放送して間もなく、ラトレ村のイベント用の屋台はいずれも長蛇の列が連なった。

「うまいな、これ!」
「熱々で、癖になる味わいね」

屋台で買った、たこ焼きやフランクフルトなどを手に、観光客たちは村の広場のベンチにふわりと腰を下ろす。

「すっかり、春の花が見頃だな」
「そうね、綺麗だわ」

視界に広がるのは、このイベントのために準備した、華やかなフラワーガーデン。
瞳に色とりどりの花を映して、訪れた人たちはお祭りを堪能する。
春を思わせる、穏やかな青空と雲。
花のガーデンの向こうには、太陽に照らし出された細道ときらきら輝く森がある。
精霊さんと妖精さんたちの移住をお祝いする、春祭りは大いに盛り上がった。
そんなわけで、幸先の良いスタートを切ったスペシャルイベント。

「いらっしゃいませ」

私は忙しなく、食堂を駆け巡っていた。
本来、低位の精霊さんや妖精さんの姿は、普通の人たちには見えない。
その声も、常人には届かない。
だけど、その不思議な力は垣間見ることができる。

「うわあっ、すごい! 見て見て! 料理が浮いている!」
「実は、妖精さんたちが料理を運んでいるんですよ!」

精霊さんたちは料理を運んだりして、私たちのお手伝いをしてくれた。
意思疎通はできないけれど、お客さんたちは、精霊さんたちの存在を身近に感じて興奮しているみたい。

「この料理、おいしいな。無限に食べられる。どうやって作っているんだ?」
「あ……大変申し訳ございません。作り方は企業秘密です」

さすがに、「この世界に存在しない材料と調味料を使って、作っています」とは言えないので、ごまかすしかない。
この世界で、日本の料理が食べられるのは精霊さんたちのおかげである。