転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『ご紹介に預かりました、風の妖精シルフです。実は最近、森に武装した怪しげな人たちが入ってきて困っています……。動物たちや木々を蹴散らすなど、度重なる暴挙に出たんです。そのため、大事になる前に、星を司る大精霊様と妖精たち全員の力を合わせて、「森の牢獄」へと閉じ込めたのですが……』

マイクに向かって心情を話しているのは、薄緑の服を着た二枚翅(にまいばね)の風の妖精。
彼は魔力で編まれたような翅をはためかせて、パタパタと宙に浮いている。

「あれは魔力の翅。まさか、本当に妖精なのか?」
「風の妖精……。こうして実物を間近で見ることができるなんて……」

テレビ画面を見て、泡を食ったのはミモザ帝国の宮廷魔道具師さんたちだ。
魔力の流れが見える彼らは、シルフさんが『風の妖精』だということを識別できた。
恐れ多くも、妖精を間近に見ることができて感激している。
サフランくんが造った魔道テレビは、たとえ、『本来、姿が見えない存在』だとしても、映像として記録することができた。
つまり、テレビ越しなら、誰でも妖精さんたちの存在を間近で堪能することができるのだ。

『どうやら、森に不審な人たちがいるようですね。早速、行ってみましょう』

シルフさんの話を聞いていたアリスが、マイクを手に神妙な面持ちで語りかける。
妖精がテレビに映っていて、しかも、不審者のもとまで道案内している。
まるで夢の出来事みたいで、全然、実感が湧かない。
今の視聴者さんたちの想いを代弁するとこうだろう。
だが、これは序の口だ。
今回の特集は、『妖精さんの裏話』なのだから。
場面が切り替わり、ところ変わって、森の中。
画面端には、『森に潜んでいた不審者さんたちの怒涛のサバイバル!?』というテロップが表示された。

温暖な気候のもと、多種様々な農作物で繁栄してきた小国、ルージュ王国。

ルージュ王国の温暖な気候は、精霊の恵みとされている。
この地が、多種様々な農作物に恵まれているのは精霊や妖精たちの恩恵のおかげだ。
そんな精霊たちと心を通わせることができる存在ーーそれが聖女だった。
だからこそ、聖女は大切にされ、王族との婚約でもって、国で保護されるのだ。
もし、聖女がいなくなった事実を知り、悲観した精霊たちが根こそぎいなくなれば、ルージュ王国はたちまち衰退し、崩壊するだろう。

ルージュ王国に危機が迫れば、ジルハルト殿下たちは、ラトレ村に手出しするどころじゃなくなる。
そんな思惑で始まった、特別版の放送。

ラトレ村に続く森に入ってからというものの、ルージュ王国から派遣された騎士爵の調査官さんたちは心底、困惑していた。