転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

「不審な動き?」
『こちらをご覧ください』

私は言われるままに、テレビ画面を眺める。
映し出された場所は、ルージュ王国の王立学園の講堂。
そこは王立学園の卒業パーティーが行われた会場だった。
すると、そこに豪奢な馬車が一台停まった。
馬や馬車の飾りはもちろん、御者の服までも美しい。
その周りを、騎士や兵士が囲んでいる。

「すごい……立派な馬車……!」

思わず、見とれてため息をつく。
すると、馬車の中から美しい男性が降りてきた。
陽光のごとき金髪に、強い意思を宿して輝く瞳。
すらりとした長身。
文句なしの美男子だ。
周りの空気までもが、華やかに煌めくようだった。
でも、私たちにとっては、できればもう見たくない人だった。

「ジルハルト殿下……」

アリスは眉をひそめて、ぽつりとつぶやく。

「相変わらず、すごい人ね……」

私もうんざりした顔で、小さくため息をついた。
何やら、きな臭い流れ。
テレビ画面に映っている、ジルハルト殿下を守る護衛の数は半端じゃなかった。
まあ、王家なんだし、当然かもしれない。
恐らく、権威を示す意味合いもあるのだろう。

『はあっ……。何故、私が平民出身の聖女と婚約しなくてはならなかったんだ……』

その侮蔑を含んだ眼差しに、この光景を見ていた私たちは全員、一瞬でジルハルト殿下が嫌いになった。

『そもそも、王太子たる私が、平民の女と婚姻を結ぶなどありえない。あの女は、聖女を騙る偽物だ』

ジルハルト殿下は、しれととんでもないことを告げる。

『私、悲しいです。あのような女が、今までこの国の聖女だったなんて……』

するとそこに、かわいらしく媚びるような女性の声が響いた。
ジルハルト殿下の悪事の片棒を担いだ、公爵令嬢リリア・フェラーリだ。

『全くだ。偽聖女アウリスは、己が聖女であると偽って、この国を魔物の脅威にさらした。魔王軍と共謀し、私たちを貶めた罪は重い』
『ジルハルト殿下……』

リリアは周囲に見せつけるように、ジルハルト殿下を見上げる。
茶色の瞳を輝かせ、赤みを帯びた髪は腰までまっすぐに落ちていた。

『リリア、君は美しい。まるで星の精霊のようだ』
『まあ、嬉しいですわ!』

悪びれる様子もなく、二人は微笑み合う。

「……星の精霊って、こんな女と同列にしないでよ!!」

思わぬ茶番劇に当然、私は全力で突っ込んだ。
あまりに身勝手な言い分。
言われのない罪で、アリスを偽聖女と侮蔑し、しかも、アリスの両親の食堂を潰そうとしている。
なんて最悪な人たちなんだろう。
その事実は、私の心を締めつけた。