転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

際限なく、日本の便利な機械や雑貨、おいしい料理や飲み物の数々を味わえる力。

おかげで、食堂は大忙しだ。
何ともめまぐるしい。
行列が絶えない食堂は、連日大盛況だ。
楽しみも美味しさも次に繋がる。
ラトレ村は観光客で賑わい、市場を設ければ、麦やトマトは飛ぶように売れていく。
サフランくんの魔道具工房も、貴族や商人から発注希望がひっきりなしに届いている。
その優れた機能が、すごいと評判になっているみたい。
ラトレ村は認知され始めたし、人出も増えて嬉しい限りだ。
ただ、問題もある。
村で、不正を働く者たちも出てきたのだ。
当然、持ち逃げなどもあったみたいだけど、この村は魔王軍によって守られている。
魔王ウリたちの助力によって、すぐに犯人は捕らえられたらしい。

「村は大盛況になったけれど、その分、村の治安も悪くなってきたわね……」

テレビ番組が放送されたことによって、ラトレ村は活気に溢れている。
だが、それに伴い、狼藉を働く冒険者や商人さんたちも、村を出入りするようになってしまった。

『ラトレ村に危害を加える者はすべて、この村には入れさせない』

魔王ウリはそう宣言していたけれど、さすがにすべての人たちを選別することはできないのだろう。

「ラトレ村に、自衛のための兵士が派遣されたらいいんだけど、ジルハルト殿下のせいで、それもないからね」

食堂の閉店作業を終えた後、私は部屋で頭を悩ませる。
たとえ、村に盗賊が現れても、ルージュ王国の警備騎士団は来ないだろう。
なら、私たちだけで、治安を良くする方法を考え出さないといけない。
魔王軍は精鋭ぞろいだ。
だが、王家や貴族、領主が関わってくると、話は変わってくる。
ルージュ王国からの妨害のことも視野に入れないといけない。

「防犯カメラの精霊さんを呼ぶこともできるけれど、さすがに村全体となると厳しいわね」

人手がほしいけれど、村には戦える人はほとんどいない。
傭兵を雇うにしても、費用がかさむ。
考えれば、問題が山積みだ。

「ラトレ村の発展。それと同時に、村のみんなの笑顔を守りたいというのは難しい願いなのかな……」

私は、村のみんなの顔を浮かべながらつぶやく。
星を司る大精霊。
自分と同じ属性の眷属(精霊)を生み出すことができる。
そして、『日本にあるものを具現化した存在』を呼び出せる者。
そんな私に、何ができるのだろう。
すべてが前途多難。
ただ、不安だけが転がっていた。

「うーん。勇者リスアと魔王ウリに、相談してみようかな」

やがて、私はそう結論づける。
考えても答えが出せないことを、延々と考えても仕方ない。
だからこそ、同じ前世を持つ自分たちの力を借りようと心に決めた。
彼女たちの意見を聞いたら、村の防衛の強化につながるかもしれない。
私は沈んだ気持ちをぐっと奮い立たせる。

「よし、そうと決まったら、明日、アリスたちに相談しましょう……! ラトレ村の新たな発展! そして、異世界TVの新たな歴史は、ここから再び、始まるのだから!」

張り切って、村の治安改善に励む私だった。
だが、この決断がきっかけで、他のアウリスたちが次々と力添えし、新たな国づくりへと発展していくことになるなんて、この時は予想もしていなかった。