転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

部屋の窓に、朝日が差し込む。
それでも、まだ少し肌寒い。

「お願い……。冷暖房の精霊さん、もう少しだけ部屋を暖めて……」

私はゴロゴロとベッドに寝転がっていた。
精霊だから、寒さとは無縁。
そう思っていた頃が、私にもありました。
前世の感覚が抜けない私は、精霊になっても寒暖差には敏感だ。

『アウリス・クロエ様。食堂の開店準備が始まっています。これ以上は無理です。早く起きられた方がよろしいかと』
「えっ!? もう、そんな時間!」

冷暖房の精霊さんの言葉に、私はベッドから飛び起きると慌てて支度する。
本当は心ゆくまで寝たいのだけど、食堂の朝は早い。
そろそろ、下ごしらえを始めないといけない。
私は素早くエプロンをつけて腕まくりすると、食堂の開店準備に向かった。

「アリス、おはよう」
「おはよう、アウリ」

同じく準備のために下りてきたアリスと挨拶を交わす。
アリスは、同じ前世を持つ私だけど、もはや親友のような存在だ。
村のみんなとも仲良くなったし、異世界『アルトクラン』での生活は順調だった。

「アウリ様、おはようございます。この厨房にまた、火をつけてくれてありがとうございます」

出迎えてくれたアリスのお父さんの言葉に、胸がじんと熱くなる。
開店準備を進めて、食堂のドアを開けると既に長蛇の列ができていた。
開店早々に、注文が殺到する。

「ナポリタンを二つ、いただけないかしら?」
「はい、少々、お待ちください」

私はバタバタと食堂を駆け回っていた。
大盛況のうちに幕を閉じたテレビの番組。
その日を境に、ラトレ村の存在は世界中に知れ渡ることになった。
特にナポリタンやカツサンドは、アリスが料理の美味しさを呼びかけたことで、地方の町や村まで行き渡るようになった。
今では、ナポリタンとカツサンドは、ラトレ村の名物料理になっている。
さらに私の星魔法の効果で、キラキラと輝くデザート。
アリスの聖魔法が込められた、疲れが吹き飛ぶスープ。
『美味しくない』というデマを一瞬で塗り替える新料理の開発は、瞬く間に多くの人たちを虜にした。

「こんな美味しい飲み物、初めて!」
「すごーい!」

子どもたちが声を大にして飲んでいるのは、『あまおうドリンク』。
ジューシーな甘みと爽やかな酸味、そして華やかな香りが特徴の飲み物だ。
あまおうは本来、この世界には存在しない。
だけど、私は日本にあるものを具現化した精霊を呼び出せる。
リモコンで灯りがつく、電灯の精霊さん。
日本の食材や飲み物などを取り出せる、冷蔵庫の精霊さん。
野外でも料理を作ることができる、料理用のコンロの精霊さん。
寒暖差に欠かせない、冷暖房の精霊さん。
つまり、日本にあるものすべてを、この世界で『精霊』として生み出すことができるというわけだ。