転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

『今回、ご紹介するのは、ラトレ村の「愛され食堂」の定番メニュー、ナポリタン。麦とトマトを使った、甘くコクのある一品ですよ!』
「ナポリタン? なんだ、その料理は?」
「あの、魔王様が話していた料理か?」

アリスの説明を聞いた人たちが、興味深そうに目を見開いた。

『お待たせしました。ナポリタンです』

アリスが席に腰掛けると、アリスのお父さんがナポリタンをテーブルに置いた。
出てきた料理は初めて見るものだったと思うけれど、見た目の美味しさは伝わってきたはずだ。
何しろ、異世界TVのアナウンサーのスキルを活かして、『料理の匂い』まで届けるような魔法を用いているのだから。
テレビの精霊さんの情報では、テレビを見ていただけで、食欲をそそられた人たちもいたようだ。

『いただきます!』

フォークで麺をすくって、口に入れたその途端。
アリスは思わず、動きを止めた。

『んーーっ、おいしーーっ! 程よい酸味と甘み。親しみやすい甘酸っぱさと香ばしさが特徴の料理です! もちもちの食感で、旨味のハーモニーがたまりません! これは、癖になりそうな美味しさですよ!』
「なんて、美味しそうなんだ!?」
「やみつきになりそうな料理だな!」

アリスの絶賛に、ミモザ帝国の人たちがのけ反り、魔王軍の人たちが驚いたように息を呑む。
ナポリタンは、この村で豊かに実るトマトを存分に使った麺料理だ。
甘みと酸味のバランスがいいトマトのソース。
繊細に切り分けられているピーマン。
たまねぎは柔らかすぎず、硬すぎない。
そして、小麦の美味しさと弾力のある、歯ごたえがありそうな麺。
魔法の影響でただ、テレビに映し出されているだけなのに、見ている人たちには、ナポリタンの香ばしい香りが漂っているように感じたのだろう。

「ナポリタンか……!」
「実際に、食べてみたいな……!」

テレビを見ていた人たちの食欲が俄然、顔を出す。
それに追い打ちをかけるように、新たなメニューが紹介される。

『次にご紹介するのは、愛され食堂の限定メニュー、カツサンド。こちらはなんと、遠征食としても食べられる一品です! 何でも、この料理を食べただけで、傷が癒えたり、病気予防にもなるって噂が飛び交っているんですよ!』

アリスの言葉に、まるで雷に打たれたように、テレビを見ていた人たちがはっと天を仰いだ。

「傷が……。まさか、回復効果があるというのか……?」
「あの料理が、遠征の時に食べられたら、大助かりだろうな……」
「喉から手が出るほど、欲しい料理だ!」

騎士さんたちや魔王軍の人たちは、興奮と恍惚が入り混じった表情で、テレビにかじりつく。