転生したら、女神様の凡ミスに遭いました



温暖な気候のもと、多種様々な農作物で繁栄してきた小国、ルージュ王国。
青い空、そこを流れていく雲。
心地よく、私の頬をなでていく風。
深くて、すごく雄大な景色。
遠くに見える山も美しい。

「転生の間にいる時と比べて、なんて開放的なの!」

見慣れた光景だけど、目的ができたからかな。
いつもより、特別に思える。
私はまるで自由という言葉を表すように、広々とした景色を堪能した。

「無事に、契約が成功したら、私は自由の身になれるのよね!」

ふわふわと浮かびながら、空を見上げて、両手を上げる。
もはや、私の胸は解放感でいっぱいだ。

「よし。ここからなら、彼女に、私の……精霊の声を届けられるはず!」

聖女なら、精霊が見えるかもしれない。
本当は直接、会うのが手っ取り早いが、聖女アウリス・リネットは一度、赤ちゃんから人生をやり直している。
私と同じ前世を共有する存在とはいえ、突然、姿を見せたら、混乱するかもしれない。
そのことを配慮する必要がある。
まずは彼女の心に念じて、私の事情を話そうと思った。

「聖女アウリス・リネット……。聖女アウリス・リネット……と」

意識を集中させると、ぱっと景色が変わる。
私は、一人の女の子と目が合っていた。
王都から出たばかりだろうか。
彼女は木々がうっそうと生い茂る森の道を、とぼとぼと歩いていた。
瞳の色はエメラルドグリーン。
ピンクブロンドの髪はふわっとして、肩より長い。
大きなカバンを抱えている。
うんうん、間違いない!
彼女が、聖女アウリス・リネットだ!

『聖女アウリス・リネット。私の声が聞こえますか?』

私は意識して、厳かに告げる。
すると、彼女はぎょっとしたように辺りを見渡し始めた。

「……ええっ? どこからか、声が聞こえる? もしかして、妖精とか、精霊とか?」

そんな奇跡を目の当たりにした顔で、言われてもね。
でも、妖精や精霊とは話したことがあるみたいだから、私の存在をすぐに理解してくれそう!
私は一呼吸置くと、こほんと咳払いした。

『はい、その通りです。私は、異世界TVのアナウンサーを任された、星を司る大精霊、アウリス・クロエです。あなたと同じ人物の転生者ですよ』
「同じ人物の転生者? もしかして、あなたって、わたし……っ」

思わず言いかけた彼女は慌てて口を覆った。
うっかり口にしてしまったことに気づいたのだろう。
すぐに、そっと周りを確認する。
だが、ここは森の中。
動物たちはいても、人はいないようだ。
ほっと胸をなで下ろすと、彼女はぽつりとつぶやいた。