転生したら、女神様の凡ミスに遭いました

「ラトレ村の食堂は美味しくないか……」

しばらく、村を歩き回った私は表情を曇らせる。
アリスの実家以外は、どこにも食堂が見当たらなかったのだ。
つまり、この噂は、アリスの実家の食堂を潰すためだけに流されたものだと分かる。
証拠もない、根も葉もない噂。
噂を流しているのは恐らく、ルージュ王国の関係者だろう。
ジルハルト殿下の企みを覆すことは、なかなか険しいかもしれない。

「とにかく、何とかしなくちゃね」

私は村の人たちに挨拶をした後、アリスの実家にお世話になることになった。
食堂といっても、他の家と変わらない質素な造りだった。
店内には、誰もいない。
それに、なかなか掃除が行き届いていないのか、しっかり手入れすれば、美しいはずの壁やテーブルは少し薄汚れている。
家計は火の車だと、アリスは言っていた。
掃除に関する精霊を呼び出せば、以前のような美しさを取り戻せるかもしれない。
そう考えていると。

「アウリ、紹介するわね。わたしの両親です」

アリスに招かれて、私はアリスの両親の前に立った。

「……は、初めまして、星を司る大精霊、アウリス・クロエと申します。アリスと名前が同じでまぎわらしいので、アウリと呼んでください。これからよろしくお願いいたします」
「娘から、事情は聞いております。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

物怖じしつつも、私がぺこりと頭を下げると、アリスの両親は丁重に出迎えてくれた。

「アリスから聞いているけれど、いろいろと手助けしてくれるみたいで、本当にありがとうございます」
「アウリ様、感謝いたします」
「いえいえ、私の方こそ、アリスには世話になりっぱなしです」

アリスの両親の温かなぬくもり。
その優しい言葉に強く強く、私の心がわしづかまれた。
私はぐるりと店内を見渡す。

「ここで、たくさんのお客様の笑顔が生まれたんですね! こんな素敵なお店で働けるなんて、私、嬉しいです!」
「そんなに喜んでもらえるなら、私たちも嬉しいよ」

アリスのお父さんの励ましに、緊張もほぐれてくる。
そのおかげで、食堂の現状を説明されている頃には、私の精神も一応は落ち着いてきた。
お店は一階が食堂、二階は居住スペースになっていた。

「ここが、アウリ様の部屋になります」

室内をくまなく足を運び、やがて、部屋に案内される。

「こんな広い部屋をいいんですか?」

私は思わず、慌てふためく。
案内されたのは、この家で一番、広い部屋だったからだ。

「いえ、むしろ、このような部屋しかご用意できなくて申し訳ございません」
「そんなことないです。こんな素敵な部屋、ありがとうございます」

アリスのお母さんの優しい言葉に、私は泣きたくなるのをこらえた。