「なら、アウリ。住む場所と働くところ、わたしの実家の食堂も選択肢に入れてみない?」
「アリスの……?」
急に、アリスの話の方向性が変わって驚く。
私としてはありがたい話だが、いまいちその意図が分からない。
何も分からず、曖昧に微笑み返すと、アリスは身を乗り出してきた。
「風の妖精さんから聞いたと思うけれど、この村、今は精霊がいないのよ!」
聖女であるアリスは、精霊や妖精の声を聞くことができる。
アリスも、先程の風の精霊さんの話を聞いていたのだろう。
「でも、ラトレ村は精霊や妖精を敬い、その恵みに感謝して生きている。だから、精霊の加護がある料理や食材とかなら、かなり需要があると思うの」
胸が早鐘を打つ。
それが本当なら、私の出番はあるかもしれない。
「お願い、力を貸して! わたしは、お父さんとお母さんが生きがいだったあのお店を……人々の笑顔が溢れる食堂のまま、残しておきたいの!」
「アリス……」
アリスの切実な声は、じんわりと私の心ににじんだ。
「そうなのね。分かったわ。アリス、私でよければ、お店のお手伝いをさせて!」
「アウリ……」
私の決意に、アリスの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「これから、一緒に頑張りましょう」
「ありがとう」
私とアリスは涙ぐんで励まし合う。
穏やかで温かい光景。
その様子にわずかに目を見開くと、サフランくんは何か言いたげに目を細めた。
「アウリ様、本当にいいのか?」
サフランくんは困った顔で、歯切れが悪い。
「こんなことは言いたくはないけれどさ。アリスの実家の食堂は、ジルハルト殿下に目をつけられている。たとえ、精霊の加護があっても、お客さんが来てくれるとは限らないんじゃないのか?」
「ああ」
サフランくんの言葉を補足するように、村の男性が言った。
「実は、ラトレ村の『愛され食堂』の料理は美味しくないって、近隣の街で話題になりつつあるんだよ。王族が絡んでいるだけあって、噂の流布の速さは半端じゃない」
「そんな……」
アリスは目を見開く。
サフランくんたちの言いたいことを察してしまったのだろう。
つまり、これから先、ラトレ村の食堂に訪れる旅人はいないということだ。
「ルージュ王国以外の旅人が来てくれたら、いいんだけれどな」
サフランくんが気の毒そうに言う。
そんな常連客がいれば、現状はもっと違っていたかもしれない。
でも……。
「……私、アリスの実家だから、働きたいと思ったんです。そのお店だから、お手伝いをしたいと思ったんです!」
きっぱりと言い放つと、サフランくんたちが戸惑っているのを感じた。
私は改めて、アリスを見据える。
「アリスの……?」
急に、アリスの話の方向性が変わって驚く。
私としてはありがたい話だが、いまいちその意図が分からない。
何も分からず、曖昧に微笑み返すと、アリスは身を乗り出してきた。
「風の妖精さんから聞いたと思うけれど、この村、今は精霊がいないのよ!」
聖女であるアリスは、精霊や妖精の声を聞くことができる。
アリスも、先程の風の精霊さんの話を聞いていたのだろう。
「でも、ラトレ村は精霊や妖精を敬い、その恵みに感謝して生きている。だから、精霊の加護がある料理や食材とかなら、かなり需要があると思うの」
胸が早鐘を打つ。
それが本当なら、私の出番はあるかもしれない。
「お願い、力を貸して! わたしは、お父さんとお母さんが生きがいだったあのお店を……人々の笑顔が溢れる食堂のまま、残しておきたいの!」
「アリス……」
アリスの切実な声は、じんわりと私の心ににじんだ。
「そうなのね。分かったわ。アリス、私でよければ、お店のお手伝いをさせて!」
「アウリ……」
私の決意に、アリスの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「これから、一緒に頑張りましょう」
「ありがとう」
私とアリスは涙ぐんで励まし合う。
穏やかで温かい光景。
その様子にわずかに目を見開くと、サフランくんは何か言いたげに目を細めた。
「アウリ様、本当にいいのか?」
サフランくんは困った顔で、歯切れが悪い。
「こんなことは言いたくはないけれどさ。アリスの実家の食堂は、ジルハルト殿下に目をつけられている。たとえ、精霊の加護があっても、お客さんが来てくれるとは限らないんじゃないのか?」
「ああ」
サフランくんの言葉を補足するように、村の男性が言った。
「実は、ラトレ村の『愛され食堂』の料理は美味しくないって、近隣の街で話題になりつつあるんだよ。王族が絡んでいるだけあって、噂の流布の速さは半端じゃない」
「そんな……」
アリスは目を見開く。
サフランくんたちの言いたいことを察してしまったのだろう。
つまり、これから先、ラトレ村の食堂に訪れる旅人はいないということだ。
「ルージュ王国以外の旅人が来てくれたら、いいんだけれどな」
サフランくんが気の毒そうに言う。
そんな常連客がいれば、現状はもっと違っていたかもしれない。
でも……。
「……私、アリスの実家だから、働きたいと思ったんです。そのお店だから、お手伝いをしたいと思ったんです!」
きっぱりと言い放つと、サフランくんたちが戸惑っているのを感じた。
私は改めて、アリスを見据える。



