今日のオムライスは、やけに歪な形になってしまったが、味はそれなりに美味しかった。そして、楽しかった。
シャワーを済ませた俺は、鼻歌混じりに冷蔵庫からプリンを取り出した。
「綾人にぃ、ご機嫌だね」
「そりゃ、宗一郎と……」
「僕と?」
「いや、なんでもない」
大学生にもなって砂場で遊んだ挙げ句、宗一郎にベタベタと甘えられながらのオムライス作りが、俺の思い出ランキング・トップテン入りしたことなんて、恥ずかしくて言えない。馬鹿にされること間違いなしだ。
俺が続きを言わなかったことで、ややムッとした宗一郎は、ベッドの上にあがって両手を広げた。
「綾人にぃ、寝るよ」
「先に寝てて。プリン食べて、歯磨きしたら行くから」
プリンをチビチビと食べながら舌鼓を打っていると、宗一郎が急かすように手を強調させる。
「綾人にぃ、早く来て。寒い。寂しい。眠れない」
「宗一郎、マジで三日前とキャラ変わりすぎだろ」
「そう? 変わんないよ」
「いや、変わるだろ。今までは、俺なんて無視してさっさと寝てたしさ」
「あれは、風呂上がりの綾人にぃが色っぽ……」
宗一郎が言葉を詰まらせた。それをカラメルをかき集めて口の中に流し込みながら横目で見る。
「ん……?」
「ううん。そんな無防備だと、襲われちゃうよ」
「確かに最近物騒だもんな。バイト終わり、誰かにつけられてるような気がするんだよ」
ブルッと肩を震わせながら、食べたプリンカップを捨てて、スプーンを洗う。
「綾人にぃ、それ本当?」
「ん? まぁ、気のせいだと思うけどな。去年くらいから、視線を感じるなぁって思うだけだから」
洗面所で歯ブラシに歯磨き粉をつけていたら、鏡に宗一郎の姿が映って驚いた。
「わッ、びっくりした」
「明日から、僕が送り迎えするから」
「は? 良いよ。女子じゃあるまいし」
シャカシャカと歯磨きをしながら鏡越しに宗一郎を見れば、やる気に満ちた表情をしていた。
「大丈夫か? 宗一郎」
「こんなこともあろうかと、合気道を習った甲斐があったよ」
「え、宗一郎って、合気道やってたんだ? 初耳」
「うん。一応、黒帯」
「すげぇ。だから、そんな見た目以上に筋肉付いてんのか」
顔が良くて合気道も黒帯、勉強だって有名な名門高校を卒業している。モテない訳がない。ソフレを卒業する日も、そう遠くはないだろう。
ただ、宗一郎は、女の子と付き合うのは面倒だと言っていた。セフレに俺を選ぶくらいだし、男が好きなのだろうか? しかし、こういうナイーブなところは、あまり深くは聞かない方が良いだろう。
うがいを済ませてタオルで口元を拭いてから、洗面所の入り口の枠で懸垂をし始めた宗一郎を感心しながら見る。
「すげぇ。てか、今すんなよ。通れんだろ」
「最近鈍ってるから、明日から筋トレ再開するよ」
「でも、迎えは大丈夫だからな」
「あ、そうだ!」
閃いたとばかりに、懸垂をやめた宗一郎。俺はその隙間を通ってベッドへと向かう。そして、宗一郎もついてくる。
「僕もバイトしようかな」
「は? どこで?」
「綾人にぃのカフェ。そうしたら、一緒に帰れるでしよ?」
「いや、そうだけど。シフト違ったらすれ違いになることもあるぞ」
「あ、そっか。やっぱ、迎えに行こ」
電気のスイッチに手を置いて、宗一郎がベッドの上に寝転がるのを見届けてから、俺はそれを押した。
パチンと明かりが消えると、俺は手探りでベッドへと向かう。スイッチとベッドの位置は、さほど遠くないので、転ぶことなくベッドに辿り着く。そして、その上にあがるや否や、宗一郎に抱き寄せられる。
「ちょ、宗一郎。待って」
「もう、十分待ったよ」
「スマホ出すだけだから」
そう言うと、宗一郎の腕の力が弱まった。ポケットに入れておいたスマホを取り出し、枕元にポンと置けば、そのまま抱き枕のように抱きつかれた。
「はぁ……落ち着く」
耳元に吐息がかかり、ゾワッとした。
けれど、前にも言ったが、これ以上何もないと思うと案外平気なもので、俺も宗一郎の背に手を回して、その温もりを感じた。
「てか、綾人にぃ。なんでストーカーのこと教えてくれなかったの?」
「別にストーカーと決まった訳じゃ……それに、宗一郎。お前が俺に興味感心を示さないからだろ。話したところで『へぇ』で終わらされたら悲しいし」
「……ごめん」
「まぁ、気のせいだって。宗一郎ならともかく、俺狙ってどうすんだよ」
そう言いながらも、実は、俺とルームシェアしていることを知った宗一郎のストーカーが、俺を殺そうとしているのでは? と、少しだけ怖かったりする。
しかし、この一年何もなかったのだから、やはり気のせいな気もする。
そして、どうしてこうも宗一郎の腕の中は落ち着くのか。
「宗一郎、おやすみ」
「うん。おやすみ」
シャワーを済ませた俺は、鼻歌混じりに冷蔵庫からプリンを取り出した。
「綾人にぃ、ご機嫌だね」
「そりゃ、宗一郎と……」
「僕と?」
「いや、なんでもない」
大学生にもなって砂場で遊んだ挙げ句、宗一郎にベタベタと甘えられながらのオムライス作りが、俺の思い出ランキング・トップテン入りしたことなんて、恥ずかしくて言えない。馬鹿にされること間違いなしだ。
俺が続きを言わなかったことで、ややムッとした宗一郎は、ベッドの上にあがって両手を広げた。
「綾人にぃ、寝るよ」
「先に寝てて。プリン食べて、歯磨きしたら行くから」
プリンをチビチビと食べながら舌鼓を打っていると、宗一郎が急かすように手を強調させる。
「綾人にぃ、早く来て。寒い。寂しい。眠れない」
「宗一郎、マジで三日前とキャラ変わりすぎだろ」
「そう? 変わんないよ」
「いや、変わるだろ。今までは、俺なんて無視してさっさと寝てたしさ」
「あれは、風呂上がりの綾人にぃが色っぽ……」
宗一郎が言葉を詰まらせた。それをカラメルをかき集めて口の中に流し込みながら横目で見る。
「ん……?」
「ううん。そんな無防備だと、襲われちゃうよ」
「確かに最近物騒だもんな。バイト終わり、誰かにつけられてるような気がするんだよ」
ブルッと肩を震わせながら、食べたプリンカップを捨てて、スプーンを洗う。
「綾人にぃ、それ本当?」
「ん? まぁ、気のせいだと思うけどな。去年くらいから、視線を感じるなぁって思うだけだから」
洗面所で歯ブラシに歯磨き粉をつけていたら、鏡に宗一郎の姿が映って驚いた。
「わッ、びっくりした」
「明日から、僕が送り迎えするから」
「は? 良いよ。女子じゃあるまいし」
シャカシャカと歯磨きをしながら鏡越しに宗一郎を見れば、やる気に満ちた表情をしていた。
「大丈夫か? 宗一郎」
「こんなこともあろうかと、合気道を習った甲斐があったよ」
「え、宗一郎って、合気道やってたんだ? 初耳」
「うん。一応、黒帯」
「すげぇ。だから、そんな見た目以上に筋肉付いてんのか」
顔が良くて合気道も黒帯、勉強だって有名な名門高校を卒業している。モテない訳がない。ソフレを卒業する日も、そう遠くはないだろう。
ただ、宗一郎は、女の子と付き合うのは面倒だと言っていた。セフレに俺を選ぶくらいだし、男が好きなのだろうか? しかし、こういうナイーブなところは、あまり深くは聞かない方が良いだろう。
うがいを済ませてタオルで口元を拭いてから、洗面所の入り口の枠で懸垂をし始めた宗一郎を感心しながら見る。
「すげぇ。てか、今すんなよ。通れんだろ」
「最近鈍ってるから、明日から筋トレ再開するよ」
「でも、迎えは大丈夫だからな」
「あ、そうだ!」
閃いたとばかりに、懸垂をやめた宗一郎。俺はその隙間を通ってベッドへと向かう。そして、宗一郎もついてくる。
「僕もバイトしようかな」
「は? どこで?」
「綾人にぃのカフェ。そうしたら、一緒に帰れるでしよ?」
「いや、そうだけど。シフト違ったらすれ違いになることもあるぞ」
「あ、そっか。やっぱ、迎えに行こ」
電気のスイッチに手を置いて、宗一郎がベッドの上に寝転がるのを見届けてから、俺はそれを押した。
パチンと明かりが消えると、俺は手探りでベッドへと向かう。スイッチとベッドの位置は、さほど遠くないので、転ぶことなくベッドに辿り着く。そして、その上にあがるや否や、宗一郎に抱き寄せられる。
「ちょ、宗一郎。待って」
「もう、十分待ったよ」
「スマホ出すだけだから」
そう言うと、宗一郎の腕の力が弱まった。ポケットに入れておいたスマホを取り出し、枕元にポンと置けば、そのまま抱き枕のように抱きつかれた。
「はぁ……落ち着く」
耳元に吐息がかかり、ゾワッとした。
けれど、前にも言ったが、これ以上何もないと思うと案外平気なもので、俺も宗一郎の背に手を回して、その温もりを感じた。
「てか、綾人にぃ。なんでストーカーのこと教えてくれなかったの?」
「別にストーカーと決まった訳じゃ……それに、宗一郎。お前が俺に興味感心を示さないからだろ。話したところで『へぇ』で終わらされたら悲しいし」
「……ごめん」
「まぁ、気のせいだって。宗一郎ならともかく、俺狙ってどうすんだよ」
そう言いながらも、実は、俺とルームシェアしていることを知った宗一郎のストーカーが、俺を殺そうとしているのでは? と、少しだけ怖かったりする。
しかし、この一年何もなかったのだから、やはり気のせいな気もする。
そして、どうしてこうも宗一郎の腕の中は落ち着くのか。
「宗一郎、おやすみ」
「うん。おやすみ」



