食事も終わり風呂も入った俺は、ベッドの横に布団を敷いた。
宗一郎はまだトイレに行っているので、先に布団に潜ってスマホをいじる。
数十秒もすれば、宗一郎の気の抜けた声がした。
「電気、消すよ」
「うん。さんきゅー」
電気を消した宗一郎は、いつものようにベッドに――――は入らず、俺の布団の中に入ってきた。
「ちょ、お前、何でこっち入って来てんの!?」
「一緒に寝ようかなって」
「寝ようかな、じゃねーよ! 男同士くっついて寝たら気色悪いだろ」
「そうやって照れちゃって」
宗一郎があまりにも普段と同じすぎて、誤解を解くことをすっかり忘れていたことに今気付く。
焦って布団から出てベッドの上に移動するれば、宗一郎もまた付いてくる。
「宗一郎、ストップ! タンマ! 一回タンマ!」
そう言うと、一旦止まった宗一郎。しかし、数秒で動き出す。
「やだ」
「やだじゃねーって。話を聞いてくれ!」
ベッドの上に押し倒されてしまった俺は、必死に訴える。
「マジで誤解なんだって! 布団に入ったのだって、あれは、ちょっと意地悪してみたくてやったことだし」
「あったかくて気持ちよかったよね」
「まぁ、それはあるけど……じゃなくて、宗一郎が昔みたいに懐いてくれなくなって、再開してからは、いつも素っ気ないだろ?」
「そう? そんなつもりないんだけど」
「話しかけても『へぇ』とか、『ふーん』しか言わないじゃん」
「それはさ……」
宗一郎が黙ってしまった。
どうしたのだろうかと思いつつ、俺は続ける。
「てか、宗一郎。急にキャラ変わりすぎじゃね?」
「そりゃ、隠してたから」
「なんで。幼馴染なのに」
「幼馴染だからだよ」
「意味分かんねえ」
一年半も一緒に住んで、素の自分を出してもらえていなかったのだと思うと、少し……いや、かなり悲しい。
「でもさ、もう我慢しなくて良いって分かったから」
カーテンの隙間から月明かりが差し、前髪を掻き上げた宗一郎の顔が照らされた。
それは、今までに見たことがないほど大人びていて、男を思わせた。
「もう、昔の宗一郎じゃないんだな……」
「今も昔も変わらないよ。僕はずっと、綾人にぃとこうなりたかった」
顔の横に手が置かれたかと思えば、ゆっくりと宗一郎の顔が近付いてきた。
「ちょ、待てって……」
「待たない」
宗一郎の唇が首筋に当たり、俺は目をギュッと瞑って早口で謝った。
「マジでごめんって! 宗一郎の態度にちょっとイラっとしたっていうか……マイペースな宗一郎の動揺した顔が見たくて、全部意地悪でやったことだから! だから、俺は別に、宗一郎のこと好きじゃねぇから!」
セフレは勘弁してくれ……そこまでは口に出せなかったけれど、俺の気持ちは宗一郎に伝わった様子。宗一郎の顔が離れていく。
「そっか」
いつも返される言葉だが、何故か妙に寂しげに聞こえるのは気のせいだろうか。
「宗……一郎? なんか、ごめん」
「はは、僕一人でバカみたい。てっきり綾人にぃも同じ気持ちなのかと思ってさ」
「いや、マジでごめん。俺、そういうの(セフレ)作らないタイプだからさ」
性欲を抑えきれなくなることもあるけど、セフレは生理的に無理だ。しかも、幼馴染と。
「俺はさ、昔みたいに、兄弟のように仲良くしたいだけなんだ」
「それは無理だよ」
「宗一郎……」
「だって僕はこんなにも……」
暗くて表情は見えないが、宗一郎の声が震えているのは分かった。
俺の上から退いた宗一郎は、隣にゴロンと横になった。
「宗一郎?」
「僕さ、出ていくよ」
「え!?」
俺は思わず起き上がった。
「ちょっ、宗一郎、それは早まりすぎだって」
「じゃあ、綾人にぃが卒業する残り一年半、僕に生き地獄を味わえって? 酷すぎじゃない?」
「生き地獄って……」
どうにかならないものか。今ここで宗一郎が出て行ったら、後味が悪いというか……本当にこれっきりになってしまいそうだ。
でも、宗一郎は兄弟のようには仲良くしたくないって言うし……俺はセフレは嫌だ。そういうのは本気で好きになった人としたい。
(うーん……)
そこで俺は閃いた!
「ソフレなら良いぞ」
「は?」
「添い寝フレンド。最近そういうのもあるんだろ?」
「いや、あるにはあるけど。綾人にぃ、さっき嫌がってたし」
「あれはさ、その続きがあると思ったからであって、添い寝が嫌って訳じゃ……」
むしろ温かくて、ぐっすり眠れた気がする。
「それに、俺がこっち側で寝れば、宗一郎がベッドから落ちる心配もしなくて良いし、俺がその音で起きることもなくなる。とりあえず、宗一郎にそういう相手が出来るまではさ、それで行こう」
なんて妙案なんだ、と自画自賛していると、宗一郎が起き上がって俺の肩を抱いた。
「え?」
「添い寝……してくれるんでしょ?」
そのままゴロンと二人で寝転がり、しっかりと肩まで布団をかけた。そして、宗一郎に腕枕をされながら、まるで抱き枕になったかのように、抱きつかれた。身動きが取れない。
「案外悪くないかも」
「だ……だろ?」
思った以上に密着度が高くて、ドキドキしてきた。けれど、自分から言い出した手前、なしには出来ない。
とにかく、宗一郎に恋人ないしセフレが見つかるまでの我慢だ。俺はそれまでのつなぎ。宗一郎は顔も良いし、スタイルだって……今、身をもって実感しているが、見た目以上に筋肉も付いて、良い体をしている。相手はすぐに見つかるだろう。
「ねぇ、綾人にぃ」
「ん?」
「綾人にぃは、そういうの(恋人)作らないんでしょ? てことは、僕にも相手ができなかったら、ずっとソフレでいてくれるってことだよね?」
「まぁ、そう……なるな」
いや、見つかるだろ。その顔だぞ。
「約束だよ」
宗一郎が小指を出してきた。俺もそこに小指を絡めた。
「ああ、約束な」
「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます、指切った」
幼い時のように指切りげんまんした——。
「あ、でも、それ以上のことは絶対すんなよ! あくまでも添い寝だけ! これ破ったらソフレ解消だかんな!」
「我慢……出来るかな」
「しろよ、我慢」
——こうして、俺たちは幼馴染からソフレに昇格(?)した。
宗一郎はまだトイレに行っているので、先に布団に潜ってスマホをいじる。
数十秒もすれば、宗一郎の気の抜けた声がした。
「電気、消すよ」
「うん。さんきゅー」
電気を消した宗一郎は、いつものようにベッドに――――は入らず、俺の布団の中に入ってきた。
「ちょ、お前、何でこっち入って来てんの!?」
「一緒に寝ようかなって」
「寝ようかな、じゃねーよ! 男同士くっついて寝たら気色悪いだろ」
「そうやって照れちゃって」
宗一郎があまりにも普段と同じすぎて、誤解を解くことをすっかり忘れていたことに今気付く。
焦って布団から出てベッドの上に移動するれば、宗一郎もまた付いてくる。
「宗一郎、ストップ! タンマ! 一回タンマ!」
そう言うと、一旦止まった宗一郎。しかし、数秒で動き出す。
「やだ」
「やだじゃねーって。話を聞いてくれ!」
ベッドの上に押し倒されてしまった俺は、必死に訴える。
「マジで誤解なんだって! 布団に入ったのだって、あれは、ちょっと意地悪してみたくてやったことだし」
「あったかくて気持ちよかったよね」
「まぁ、それはあるけど……じゃなくて、宗一郎が昔みたいに懐いてくれなくなって、再開してからは、いつも素っ気ないだろ?」
「そう? そんなつもりないんだけど」
「話しかけても『へぇ』とか、『ふーん』しか言わないじゃん」
「それはさ……」
宗一郎が黙ってしまった。
どうしたのだろうかと思いつつ、俺は続ける。
「てか、宗一郎。急にキャラ変わりすぎじゃね?」
「そりゃ、隠してたから」
「なんで。幼馴染なのに」
「幼馴染だからだよ」
「意味分かんねえ」
一年半も一緒に住んで、素の自分を出してもらえていなかったのだと思うと、少し……いや、かなり悲しい。
「でもさ、もう我慢しなくて良いって分かったから」
カーテンの隙間から月明かりが差し、前髪を掻き上げた宗一郎の顔が照らされた。
それは、今までに見たことがないほど大人びていて、男を思わせた。
「もう、昔の宗一郎じゃないんだな……」
「今も昔も変わらないよ。僕はずっと、綾人にぃとこうなりたかった」
顔の横に手が置かれたかと思えば、ゆっくりと宗一郎の顔が近付いてきた。
「ちょ、待てって……」
「待たない」
宗一郎の唇が首筋に当たり、俺は目をギュッと瞑って早口で謝った。
「マジでごめんって! 宗一郎の態度にちょっとイラっとしたっていうか……マイペースな宗一郎の動揺した顔が見たくて、全部意地悪でやったことだから! だから、俺は別に、宗一郎のこと好きじゃねぇから!」
セフレは勘弁してくれ……そこまでは口に出せなかったけれど、俺の気持ちは宗一郎に伝わった様子。宗一郎の顔が離れていく。
「そっか」
いつも返される言葉だが、何故か妙に寂しげに聞こえるのは気のせいだろうか。
「宗……一郎? なんか、ごめん」
「はは、僕一人でバカみたい。てっきり綾人にぃも同じ気持ちなのかと思ってさ」
「いや、マジでごめん。俺、そういうの(セフレ)作らないタイプだからさ」
性欲を抑えきれなくなることもあるけど、セフレは生理的に無理だ。しかも、幼馴染と。
「俺はさ、昔みたいに、兄弟のように仲良くしたいだけなんだ」
「それは無理だよ」
「宗一郎……」
「だって僕はこんなにも……」
暗くて表情は見えないが、宗一郎の声が震えているのは分かった。
俺の上から退いた宗一郎は、隣にゴロンと横になった。
「宗一郎?」
「僕さ、出ていくよ」
「え!?」
俺は思わず起き上がった。
「ちょっ、宗一郎、それは早まりすぎだって」
「じゃあ、綾人にぃが卒業する残り一年半、僕に生き地獄を味わえって? 酷すぎじゃない?」
「生き地獄って……」
どうにかならないものか。今ここで宗一郎が出て行ったら、後味が悪いというか……本当にこれっきりになってしまいそうだ。
でも、宗一郎は兄弟のようには仲良くしたくないって言うし……俺はセフレは嫌だ。そういうのは本気で好きになった人としたい。
(うーん……)
そこで俺は閃いた!
「ソフレなら良いぞ」
「は?」
「添い寝フレンド。最近そういうのもあるんだろ?」
「いや、あるにはあるけど。綾人にぃ、さっき嫌がってたし」
「あれはさ、その続きがあると思ったからであって、添い寝が嫌って訳じゃ……」
むしろ温かくて、ぐっすり眠れた気がする。
「それに、俺がこっち側で寝れば、宗一郎がベッドから落ちる心配もしなくて良いし、俺がその音で起きることもなくなる。とりあえず、宗一郎にそういう相手が出来るまではさ、それで行こう」
なんて妙案なんだ、と自画自賛していると、宗一郎が起き上がって俺の肩を抱いた。
「え?」
「添い寝……してくれるんでしょ?」
そのままゴロンと二人で寝転がり、しっかりと肩まで布団をかけた。そして、宗一郎に腕枕をされながら、まるで抱き枕になったかのように、抱きつかれた。身動きが取れない。
「案外悪くないかも」
「だ……だろ?」
思った以上に密着度が高くて、ドキドキしてきた。けれど、自分から言い出した手前、なしには出来ない。
とにかく、宗一郎に恋人ないしセフレが見つかるまでの我慢だ。俺はそれまでのつなぎ。宗一郎は顔も良いし、スタイルだって……今、身をもって実感しているが、見た目以上に筋肉も付いて、良い体をしている。相手はすぐに見つかるだろう。
「ねぇ、綾人にぃ」
「ん?」
「綾人にぃは、そういうの(恋人)作らないんでしょ? てことは、僕にも相手ができなかったら、ずっとソフレでいてくれるってことだよね?」
「まぁ、そう……なるな」
いや、見つかるだろ。その顔だぞ。
「約束だよ」
宗一郎が小指を出してきた。俺もそこに小指を絡めた。
「ああ、約束な」
「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます、指切った」
幼い時のように指切りげんまんした——。
「あ、でも、それ以上のことは絶対すんなよ! あくまでも添い寝だけ! これ破ったらソフレ解消だかんな!」
「我慢……出来るかな」
「しろよ、我慢」
——こうして、俺たちは幼馴染からソフレに昇格(?)した。



