親友に、真剣に告白された。その想いに応えたい。そう思った自分がいる。
しかし、告白されたあの瞬間、頭にチラついたのは、宗一郎の泣きそうな笑った顔——。
皆が寝静まった夜の零時頃、ベッドでは宗一郎も俺に背を向けて眠っている。その背中を俺は下に敷かれた布団から、ぼんやりと見上げた。
「綾人……にぃ」
掠れたその声に、俺は返事をする。
「宗一郎? 起きてたのか」
「…………」
けれど、それ以降静寂が続く。
「宗一郎?」
「…………」
もう一度呼んでみるも、何の応答もない。
俺はそっと布団から出て、ベッドの上にある宗一郎の顔を覗き込む。
「さっきのは、寝言か」
宗一郎は眠っているようだ。ただ、額に汗を浮かべ、苦悶の表情を浮かべながら夢にうなされている。
「綾人にぃ……」
俺は、そっとタオルでその汗を拭ってやり、ポンポンと布団の上から子供を寝かしつけるように叩く。
「ごめんな。俺が、あんなこと言ったからだよな」
宗一郎の様子が変だったのに、俺が追い詰めるようなことを言ってしまったから。付き合ったら隠し事はして欲しくないなんて……。
人間なら誰しも秘密の一つや二つあって当たり前だ。それなのに——。
宗一郎は、ゴロンと仰向けになった。起こしてしまっただろうかと心配になったが、良いのか悪いのか、宗一郎はまだ夢にうなされている。
かけ布団を少し捲り、俺はその中に忍び込んだ。宗一郎がど真ん中で寝ているので、ベッドから落ちないように、その見た目よりも体格の良い体に身を近付け、抱きついた。
(まだ一応、俺は宗一郎のソフレだからな)
互いにそういう相手が出来るまで……そういう契約だ。指切りだってしたのだ。いくら宗一郎が俺を避けようが、約束は守ってもらわねば。
そう言い訳しながら、俺は目を瞑った。
同時に、宗一郎の表情は穏やかになり、規則正しい寝息が聞こえてきた——。
◇◇◇◇
——ピピピ、ピピピ、ピピピ。
朝七時、アラームの音で目が覚めた。
宗一郎の匂いに包まれていることに気付いた俺は、昨晩のことを思い出す。
「宗一郎」
呼んでみるも返事はなく、そこにいるはずの宗一郎の姿はなかった。
代わりに、下に敷いていた布団は綺麗に三つ折りにされ、テーブルの上にはトーストと目玉焼き、麦茶が置いてあった。
宗一郎が作ればいつも焦げる目玉焼きも、今日はとても綺麗な半熟に仕上がっていた。
「本当は、料理も得意なんだろ」
こんなに綺麗な半熟、俺でも作れない。
机の前に座り、手を合わせた。
「いただきます」
宗一郎の作ったそれを食べると、あったかい気持ちになった。そして、切ない気持ちになった。
どうしてこうも胸が締め付けられるのか……。
「ん?」
麦茶を飲もうとコップを手に取ると、その下から二つ折りにされた紙が出てきた。広げてみると、お手本のように綺麗な字でこう書いてあった。
【綾人にぃ。幸せになってね】
それをクシャリと握りしめて顔を上げれば、違和感を覚えた。
宗一郎の私物がなくなっている。
「ったく、宗一郎のやつ、ソフレ契約放棄しやがったな」
文句を言いながら食べる目玉焼きは、しょっぱかった。
「なんでかな……」
目元を手で拭うが、とめどなく出てくる涙は、一向に止まる気配がない。
「俺、男に興味なんてないんだって。可愛い女の子と手を繋いで遊園地行ったり、水族館行ったりしたい。彼女の手料理も食べてみたいし、それを持ってピクニックだって……」
そう頭では思うのに、心は追いついてこない。
心は、宗一郎との砂場遊びで止まっている。一緒に作ったオムライス、一緒に洗濯物を干して、布団を干して、天日干しされた布団で添い寝なんて最高だった。俺の心は、そこで止まっている。
可愛い彼女でもなく、親友の光でもなく、俺がそばにいたいのは————。
「ごめん、光。俺、やっぱ、ただのバカだわ」
しかし、告白されたあの瞬間、頭にチラついたのは、宗一郎の泣きそうな笑った顔——。
皆が寝静まった夜の零時頃、ベッドでは宗一郎も俺に背を向けて眠っている。その背中を俺は下に敷かれた布団から、ぼんやりと見上げた。
「綾人……にぃ」
掠れたその声に、俺は返事をする。
「宗一郎? 起きてたのか」
「…………」
けれど、それ以降静寂が続く。
「宗一郎?」
「…………」
もう一度呼んでみるも、何の応答もない。
俺はそっと布団から出て、ベッドの上にある宗一郎の顔を覗き込む。
「さっきのは、寝言か」
宗一郎は眠っているようだ。ただ、額に汗を浮かべ、苦悶の表情を浮かべながら夢にうなされている。
「綾人にぃ……」
俺は、そっとタオルでその汗を拭ってやり、ポンポンと布団の上から子供を寝かしつけるように叩く。
「ごめんな。俺が、あんなこと言ったからだよな」
宗一郎の様子が変だったのに、俺が追い詰めるようなことを言ってしまったから。付き合ったら隠し事はして欲しくないなんて……。
人間なら誰しも秘密の一つや二つあって当たり前だ。それなのに——。
宗一郎は、ゴロンと仰向けになった。起こしてしまっただろうかと心配になったが、良いのか悪いのか、宗一郎はまだ夢にうなされている。
かけ布団を少し捲り、俺はその中に忍び込んだ。宗一郎がど真ん中で寝ているので、ベッドから落ちないように、その見た目よりも体格の良い体に身を近付け、抱きついた。
(まだ一応、俺は宗一郎のソフレだからな)
互いにそういう相手が出来るまで……そういう契約だ。指切りだってしたのだ。いくら宗一郎が俺を避けようが、約束は守ってもらわねば。
そう言い訳しながら、俺は目を瞑った。
同時に、宗一郎の表情は穏やかになり、規則正しい寝息が聞こえてきた——。
◇◇◇◇
——ピピピ、ピピピ、ピピピ。
朝七時、アラームの音で目が覚めた。
宗一郎の匂いに包まれていることに気付いた俺は、昨晩のことを思い出す。
「宗一郎」
呼んでみるも返事はなく、そこにいるはずの宗一郎の姿はなかった。
代わりに、下に敷いていた布団は綺麗に三つ折りにされ、テーブルの上にはトーストと目玉焼き、麦茶が置いてあった。
宗一郎が作ればいつも焦げる目玉焼きも、今日はとても綺麗な半熟に仕上がっていた。
「本当は、料理も得意なんだろ」
こんなに綺麗な半熟、俺でも作れない。
机の前に座り、手を合わせた。
「いただきます」
宗一郎の作ったそれを食べると、あったかい気持ちになった。そして、切ない気持ちになった。
どうしてこうも胸が締め付けられるのか……。
「ん?」
麦茶を飲もうとコップを手に取ると、その下から二つ折りにされた紙が出てきた。広げてみると、お手本のように綺麗な字でこう書いてあった。
【綾人にぃ。幸せになってね】
それをクシャリと握りしめて顔を上げれば、違和感を覚えた。
宗一郎の私物がなくなっている。
「ったく、宗一郎のやつ、ソフレ契約放棄しやがったな」
文句を言いながら食べる目玉焼きは、しょっぱかった。
「なんでかな……」
目元を手で拭うが、とめどなく出てくる涙は、一向に止まる気配がない。
「俺、男に興味なんてないんだって。可愛い女の子と手を繋いで遊園地行ったり、水族館行ったりしたい。彼女の手料理も食べてみたいし、それを持ってピクニックだって……」
そう頭では思うのに、心は追いついてこない。
心は、宗一郎との砂場遊びで止まっている。一緒に作ったオムライス、一緒に洗濯物を干して、布団を干して、天日干しされた布団で添い寝なんて最高だった。俺の心は、そこで止まっている。
可愛い彼女でもなく、親友の光でもなく、俺がそばにいたいのは————。
「ごめん、光。俺、やっぱ、ただのバカだわ」



