家に帰った俺と宗一郎は、夜の二十一時だというのに、よせ鍋をつついている。
だって、結局俺は何も食べることなく帰ってきたのだ。空腹でしょうがない。ついでに飲み足りないので、ビールも飲んでいる。これで二缶目だ。
「綾人にぃ。顔真っ赤だよ。もうやめといたら?」
「らいじょいぶ。らいじょうぶ。宗一郎も飲む?」
「僕は、まだ飲めないよ」
「真面目だなぁ。ちょっとくらいバレないって」
無理矢理宗一郎に飲ませようとする俺は、酔っているのかもしれない。いや、多分酔っている。親友だと思っていた相手に告白されて、酔わないとやっていられない。
「じゃあ、宗一郎。ギュッてして」
「え?」
隣で困惑する宗一郎に、俺は抱き付いた。
「はぁ……落ち着く」
最近は宗一郎の温もりがないと眠れないような気がする。
とはいえ、眠るときは宗一郎と必ず添い寝をしており、一人で眠ることがないので分からない。
「今日は一人で寝てみよっかなぁ」
宗一郎の胸で呟けば、宗一郎は呆れたようにカセットコンロの火を切った。
「甘えたり突き離したり、綾人にぃって酔うと小悪魔になるんだね」
「へへへ、惚れたか?」
「惚れてるよ」
「そっかそっか」
上機嫌に頷く俺は、宗一郎の唇を触ってヘラヘラ笑う。
「へへへ、じゃあ、お兄ちゃんがチューしてやろう」
「もう、綾人にぃったら」
宗一郎は、照れたように頬をピンク色に染めつつ、目を瞑った。
「ん」
俺は触っている唇から手を離し、宗一郎の頬を撫でた。
「宗一郎」
「うん」
「宗一郎にも、早く相手が見つかると良いな」
すると、宗一郎の目がパッと開いた。
「もう! 綾人にぃってば、チューしてくんないの?」
「へへへ、今度な」
「悪魔だ」
ジト目で見てくる宗一郎は、次の瞬間、遠くを見ながら溜め息を吐いた。
「どした?」
「ううん。幸せだなぁと思って」
「俺も。酒飲んでるからかな……多幸感半端ねぇ。でも、宗一郎は飲んでなかったな」
「綾人にぃはさ、光先輩と付き合うの? ちゃんと断ってないんでしょ?」
「うーん……」
それを考えたくなくて酒を飲んだのだが……結局はそこに行きつくのか。
俺は宗一郎から一旦離れ、向きを変えて膝の上に座った。大人がすることではないが、酔っているから何だってできる。
そして、そんな甘えてばかりの俺の腹に宗一郎は手を回してきた。俺は、その大きな手をふにふにと触りながら、ぼんやりと応える。
「分かんねぇ。俺、告白されたの初めてだし」
「え、本当に!?」
宗一郎は、目を丸くしながら顔を覗き込んできた。
「じゃあさ、キスしたのも、もしかして……」
「この間のが初めてだよ」
投げやり気味に言えば、宗一郎の顔が綻んだ。俺はそれを見てムッとする。
「そんなに馬鹿にして楽しいか。俺は宗一郎とは違うんだよ。てか、宗一郎は何回告られたんだよ」
「えっと……一回、かな」
「嘘つけ」
「ごめん、覚えてない」
覚えてないほど告白されているとは、さすがイケメン。
宗一郎は誤魔化すよう覗き込んでいた顔を引っ込め、補足した。
「あ、でもあれだよ。ちゃんと付き合ったのは二回しかないから」
「二回もあんのかぁ。うらやま~。俺も一回で良いから付き合ってみたい!」
と言いながらも、ふとさっきまでの出来事を思い出す。
「光と付き合えば、一回は付き合ったことになんのか」
酔っているせいで、思ったことが全て口に出てしまう。
理由もなくニタニタしていると、宗一郎は怪訝な顔で聞いてきた。
「ねぇ、綾人にぃ」
「ん?」
「恋人は、作る気ないんじゃなかったの?」
「は? 俺、そんなこと言ったことねぇけど。普通に欲しい」
けど、望んでいるのは彼女だ。あくまでも女子であって、男子ではない。
そんな風に考えていたら、腹に回っていない方の宗一郎の手が、俺の顎を捉えた。クイッと横を向かされ、宗一郎もまた顔を覗き込んでくる。
「誰でもいいならさ、僕じゃ……ダメかな?」
「え?」
そして、人生二回目のキスをされた――――。
何が起こったのか分からず、唖然としながら目を見開いていると、唇がそっと離れた。
「もっとゆっくり落とそうと思ってたけど、光先輩に取られそうだから」
「光も……同じようなこと言ってた。宗一郎に取られるって……」
顔が熱くなった。胸もやけにドキドキして……これは多分酒のせい。そう酒のせいだ。
「で、でも……宗一郎は、セフレが欲しいんだろ?」
「は?」
「俺は、セフレは無理だから。悪い」
きちんとお断りすれば、宗一郎が呆れ顔で見てきた。
「僕、セフレなんていらないんだけど」
「へ? でも、俺をセフレに選んだじゃん」
「選んでないけど」
「でも、俺とずっとエッチなことしたかったって……」
俺の頭の中はパニックだ。酒も入っているから、余計に頭が回らない。
「つまり……どういうことだ?」
混乱している俺に、宗一郎は真剣な眼差しで応えた。
「僕は、綾人にぃが好きってこと」
「光の言ってた同類って……そういうことか」
一日に二回も告白されるとは、モテ期が来たかもしれない。これは喜ぶべきことなのだろうか……。
そして、俺はこの状況をどう処理して良いのか分からず、違うことを考える。
「あ、もしかして、あの歩夢とかいうやつもそうだったりして」
「え……綾人にぃ、今なんて?」
宗一郎の手が、顎から離れた。そして、腹に回っている腕の力も抜けたので、俺は四つん這いの状態で宗一郎から離れる。が、すぐに捕らえられてしまった。再び膝抱っこされる。
「綾人にぃ。歩夢って言った? どこで会ったの!?」
宗一郎の声は切羽詰まったように張りつめている。突然どうしたのだろうかと怪訝に思いながら応える。
「光の隣人。その前にコンビニでも会って、飲みに誘われたんだよ。そこにある激安スーパーあるだろ。あそこで何度か俺のこと見かけてたんだと」
「他には、何か……話した?」
「いや、別に」
「そう」
宗一郎の顔は青く、肩や手も小刻みに震えている。
「大丈夫か? 片づけは明日にして、寝るか?」
「……大丈夫」
全然大丈夫では無さそうだ。
もしかしたら、宗一郎は歩夢のことを知っているのかもしれない。しかし、聞くのは今じゃない気がした。
俺は震える宗一郎の手を取り、昔やったように優しく撫でた。
「俺がいるから、安心しろ」
「……ごめん……本当にごめんなさい」
「宗一郎」
「僕……綾人にぃを好きになる資格なんてない」
「…………」
――――俺はかける言葉が思いつかず、今日はそのまま眠りにつくことに。ただ、宗一郎の希望もあり、添い寝はせず、前のように別々の布団で眠った。
だって、結局俺は何も食べることなく帰ってきたのだ。空腹でしょうがない。ついでに飲み足りないので、ビールも飲んでいる。これで二缶目だ。
「綾人にぃ。顔真っ赤だよ。もうやめといたら?」
「らいじょいぶ。らいじょうぶ。宗一郎も飲む?」
「僕は、まだ飲めないよ」
「真面目だなぁ。ちょっとくらいバレないって」
無理矢理宗一郎に飲ませようとする俺は、酔っているのかもしれない。いや、多分酔っている。親友だと思っていた相手に告白されて、酔わないとやっていられない。
「じゃあ、宗一郎。ギュッてして」
「え?」
隣で困惑する宗一郎に、俺は抱き付いた。
「はぁ……落ち着く」
最近は宗一郎の温もりがないと眠れないような気がする。
とはいえ、眠るときは宗一郎と必ず添い寝をしており、一人で眠ることがないので分からない。
「今日は一人で寝てみよっかなぁ」
宗一郎の胸で呟けば、宗一郎は呆れたようにカセットコンロの火を切った。
「甘えたり突き離したり、綾人にぃって酔うと小悪魔になるんだね」
「へへへ、惚れたか?」
「惚れてるよ」
「そっかそっか」
上機嫌に頷く俺は、宗一郎の唇を触ってヘラヘラ笑う。
「へへへ、じゃあ、お兄ちゃんがチューしてやろう」
「もう、綾人にぃったら」
宗一郎は、照れたように頬をピンク色に染めつつ、目を瞑った。
「ん」
俺は触っている唇から手を離し、宗一郎の頬を撫でた。
「宗一郎」
「うん」
「宗一郎にも、早く相手が見つかると良いな」
すると、宗一郎の目がパッと開いた。
「もう! 綾人にぃってば、チューしてくんないの?」
「へへへ、今度な」
「悪魔だ」
ジト目で見てくる宗一郎は、次の瞬間、遠くを見ながら溜め息を吐いた。
「どした?」
「ううん。幸せだなぁと思って」
「俺も。酒飲んでるからかな……多幸感半端ねぇ。でも、宗一郎は飲んでなかったな」
「綾人にぃはさ、光先輩と付き合うの? ちゃんと断ってないんでしょ?」
「うーん……」
それを考えたくなくて酒を飲んだのだが……結局はそこに行きつくのか。
俺は宗一郎から一旦離れ、向きを変えて膝の上に座った。大人がすることではないが、酔っているから何だってできる。
そして、そんな甘えてばかりの俺の腹に宗一郎は手を回してきた。俺は、その大きな手をふにふにと触りながら、ぼんやりと応える。
「分かんねぇ。俺、告白されたの初めてだし」
「え、本当に!?」
宗一郎は、目を丸くしながら顔を覗き込んできた。
「じゃあさ、キスしたのも、もしかして……」
「この間のが初めてだよ」
投げやり気味に言えば、宗一郎の顔が綻んだ。俺はそれを見てムッとする。
「そんなに馬鹿にして楽しいか。俺は宗一郎とは違うんだよ。てか、宗一郎は何回告られたんだよ」
「えっと……一回、かな」
「嘘つけ」
「ごめん、覚えてない」
覚えてないほど告白されているとは、さすがイケメン。
宗一郎は誤魔化すよう覗き込んでいた顔を引っ込め、補足した。
「あ、でもあれだよ。ちゃんと付き合ったのは二回しかないから」
「二回もあんのかぁ。うらやま~。俺も一回で良いから付き合ってみたい!」
と言いながらも、ふとさっきまでの出来事を思い出す。
「光と付き合えば、一回は付き合ったことになんのか」
酔っているせいで、思ったことが全て口に出てしまう。
理由もなくニタニタしていると、宗一郎は怪訝な顔で聞いてきた。
「ねぇ、綾人にぃ」
「ん?」
「恋人は、作る気ないんじゃなかったの?」
「は? 俺、そんなこと言ったことねぇけど。普通に欲しい」
けど、望んでいるのは彼女だ。あくまでも女子であって、男子ではない。
そんな風に考えていたら、腹に回っていない方の宗一郎の手が、俺の顎を捉えた。クイッと横を向かされ、宗一郎もまた顔を覗き込んでくる。
「誰でもいいならさ、僕じゃ……ダメかな?」
「え?」
そして、人生二回目のキスをされた――――。
何が起こったのか分からず、唖然としながら目を見開いていると、唇がそっと離れた。
「もっとゆっくり落とそうと思ってたけど、光先輩に取られそうだから」
「光も……同じようなこと言ってた。宗一郎に取られるって……」
顔が熱くなった。胸もやけにドキドキして……これは多分酒のせい。そう酒のせいだ。
「で、でも……宗一郎は、セフレが欲しいんだろ?」
「は?」
「俺は、セフレは無理だから。悪い」
きちんとお断りすれば、宗一郎が呆れ顔で見てきた。
「僕、セフレなんていらないんだけど」
「へ? でも、俺をセフレに選んだじゃん」
「選んでないけど」
「でも、俺とずっとエッチなことしたかったって……」
俺の頭の中はパニックだ。酒も入っているから、余計に頭が回らない。
「つまり……どういうことだ?」
混乱している俺に、宗一郎は真剣な眼差しで応えた。
「僕は、綾人にぃが好きってこと」
「光の言ってた同類って……そういうことか」
一日に二回も告白されるとは、モテ期が来たかもしれない。これは喜ぶべきことなのだろうか……。
そして、俺はこの状況をどう処理して良いのか分からず、違うことを考える。
「あ、もしかして、あの歩夢とかいうやつもそうだったりして」
「え……綾人にぃ、今なんて?」
宗一郎の手が、顎から離れた。そして、腹に回っている腕の力も抜けたので、俺は四つん這いの状態で宗一郎から離れる。が、すぐに捕らえられてしまった。再び膝抱っこされる。
「綾人にぃ。歩夢って言った? どこで会ったの!?」
宗一郎の声は切羽詰まったように張りつめている。突然どうしたのだろうかと怪訝に思いながら応える。
「光の隣人。その前にコンビニでも会って、飲みに誘われたんだよ。そこにある激安スーパーあるだろ。あそこで何度か俺のこと見かけてたんだと」
「他には、何か……話した?」
「いや、別に」
「そう」
宗一郎の顔は青く、肩や手も小刻みに震えている。
「大丈夫か? 片づけは明日にして、寝るか?」
「……大丈夫」
全然大丈夫では無さそうだ。
もしかしたら、宗一郎は歩夢のことを知っているのかもしれない。しかし、聞くのは今じゃない気がした。
俺は震える宗一郎の手を取り、昔やったように優しく撫でた。
「俺がいるから、安心しろ」
「……ごめん……本当にごめんなさい」
「宗一郎」
「僕……綾人にぃを好きになる資格なんてない」
「…………」
――――俺はかける言葉が思いつかず、今日はそのまま眠りにつくことに。ただ、宗一郎の希望もあり、添い寝はせず、前のように別々の布団で眠った。



