「それにこれ、生徒会室に忘れてましたよ。今日使う資料ですよね?」
「あっ、すまない……」
俺はこの男を、大きな脅威だと感じている。
「唯人先輩って肝心なところが抜けてますよね」
「ち、違う……!いま取りに戻ろうと思っていただけだ」
「……本当に?」
茶色がかった髪の隙間から、ギラリと光る目が俺を射抜く。
――ゾクッ。
まただ。この表情。
俺は彼のこの目が怖かった。
隙を見せたら喉元に食らいついてきそうな眼差し。
「大事なことのメモは俺がしておきますから、先輩は話に集中していて大丈夫ですよ」
「ああ……頼む」
彼は1年生という異例の速さで副会長の座を勝ち取った男だ。
そして今日までの1年間 俺の補佐として完璧に仕事をこなしてきた。
『先輩、終わりました』
仕事のスピードは速く正確で。
『ここ、効率が悪いので修正しておきました』
提案してくる改善案も的確だ。


