「吉永、お疲れ。来るの早いな」
「おお、学」
すると。
同じ学年で隣のクラスの岩田学が話しかけて来た。
「ああ、みんなが来る前に来ておかないとって思ってな」
彼は生徒会の会計メンバー。
去年は同じクラスだったが、今年はクラス替えで離れてしまった。
数学が得意な彼は、2年連続で会計を任されている。
忙しい生徒会の活動にも積極的に参加してくれて、なにより俺が唯一、生徒会長という鎧を脱いで話せる相手だ。
「頑張るな~。思い詰めすぎるなよ?」
「これくらいなんでもないさ」
すると学が一点を見つめて噴き出した。
「ぷっ」
「……なんだよ。なんで笑うんだ」
「だって唯人、寝癖ついてるぞ」
「は……?」
俺は慌てて自分の頭に手をやった。
毎朝鏡の前で完璧に整えているのにそんなはず……。
「ここ、ぴょこって跳ねてる」
学が可笑しそうに俺の後頭部を指さす。
たしかに触ってみると、ひょこッと浮いているような……。


