「帰ろ帰ろー」
「今日は早いから寄り道してく?」
「いいね。会長も今日一緒にどうですか?」
書記の後輩の子が聞いてくれる。
「うん、俺も行こうか……」
チラリと宇佐美を見てカバンを持ったその時。
「唯人先輩」
宇佐美は書類を持って俺の元にやって来た。
俺を見てニコっと笑う。
「すみません。ちょっと残ってもらってもいいですか?体育祭の調整の方だけ今日中にしておきたくて」
逃げられない。
どうにか理由をつけて帰る方法はあったはずだ。
でもそれを許さない宇佐美の眼差し。
"残ってくれますよね?"
そう無言で脅されているようだった。
「……っ、分かった」
彼が俺の弱みを握っている限り、俺は籠の中の鳥だ。
「…………」
みんなが帰ってしまい二人きりになると、シーンと静まり返った空気が流れる。
重苦しい沈黙。
早くこの時間を終わらせて帰りたい。


