俺の名前は吉永唯人。
この学園の生徒会長を務める高校3年生だ。
鏡に映る自分を確認する。
目にかからない長さできっちりと揃えられた黒髪。
第一ボタンまで閉めたシャツに、緩みのないネクタイ。
どこからどう見ても品行方正な優等生だ。
……よし。
「会長、ここのチェックをお願いします」
「ああ、分かった」
廊下を歩けば生徒たちから声がかかる。
「唯人先輩、またこの間のこと相談に乗ってくださいよ」
「もちろんだよ」
「さすが唯人先輩だよな。忙しそうだけどみんなの相談乗ってくれてさ」
「本当、生徒会長のお手本って感じだよ」
誰もが憧れる存在である生徒会長。
そんな人間であり続けるために、俺は胸を張って生きてきた。
「会長、先生から学校行事の件で呼び出しです」
「ありがとう、すぐに行く」
そして事実、この1年間は生徒会長としての責務を全う出来たと思う。
そして5月。
またこの時期がやってきた。


