むしろさらに強く引き寄せられて、俺たちは密着した。
「う、宇佐美?」
「……逃げようとするからですよ」
耳元で囁かれる低音。
お風呂上がりで火照った彼の体温が、薄いシャツ越しにじんわりと伝わってくる。
「う、るさいな……もう大丈夫だから、離せって」
「嫌です」
宇佐美は即答すると、濡れた前髪の隙間からジッと俺を見下ろした。
「先輩と誰もいない部屋でふたりきり、すごい嬉しいです」
「っ!わ、分かったから放せって……」
すると宇佐美は妙に静かな声で言った。
「先輩も同じだったら嬉しいなって思うんです。ねぇ唯斗さんはどう思ってる?」
「お、俺は……」
トクン、トクンと跳ねる鼓動。
嬉しいか、嬉しくないかなんか……そんなの。
そんなの決まってる。
「お、俺も嬉しい……」
小さな声で必死に伝えた。
だって嬉しいに決まってる。
いつもは寂しくてつまらない家に宇佐美がいるんだ。
たったそれだけで、俺の気持ちは……っ。
ポタ、と宇佐美の髪から水滴が落ちて、俺の頬を濡らす。
冷たいはずの水滴が、妙に熱く感じた。
「うさ、み……?」
「それはヤバいだろ」
異変を感じて宇佐美の顔を見てみると、彼は獲物を捉えるような力強い視線でこちらを見ていた。
「そんなかわいいこと、急に言われたら我慢できなくなりますよ」
宇佐美の声色が、ふっと低くなる。


