俺は彼を手で掴み、そのまま自分の方へ強く引き寄せた。
「おわっ、唯人さん……?」
宇佐美はバランスを崩し、俺の胸の中に倒れ込む。
俺は彼を抱きしめるようにして、耳元で小さくつぶやいた。
「今までありがとう」
そして階段とは逆の方向へ引き戻した。
出来るわけないじゃないか。
突き落とすなんて。
どんなことが起きようが、どんなに憎んでいても彼を突き飛ばすなんてできっこない。
もう終わりだ。
自分のしたことにケリをつけよう。
こうやって自分がしたことから逃げてばかりだから、どんどん広がっていってしまうんだ。
宇佐美が去っていった後、隠れていた赤沢が出てくる。
「おい、どういうことだ!あんなにチャンスがあったのになにもしないで帰すなんて」
「宇佐美を傷つけることなんて出来ない。いや、これ以上誰も傷つけたくない」
俺が真っ直ぐ伝えた言葉に赤沢は言った。
「へぇ、いいんだな。そしたら全員にバラすぞ。お前の信頼も地位も全て無くなって一人になる」
「全部言ってもらって構わない。それくらいのことをしたんだから……当然だ」
すると、赤沢は苛立ったように言った。


