俺は完璧じゃないといけないのに、声を荒げるなんて……。
宇佐美が生徒会長の座を狙っていると分かってから、宇佐美と一緒にいると余裕がなくなる。
『先輩』
俺はこの呼び方がずっと嫌だった。
宇佐美が俺を「会長」と呼んだことは一度も無い。
そう呼ばないのは、宇佐美が俺を認めていないからだ。
「なに焦ってんだよ、俺……」
相手はただの後輩なのに。
廊下をトボトボと歩いていると、窓の外から声が聞こえてくる。
「ねぇ~今度の生徒会誰に入れる?」
「今の会長のままでもいいかなって思ってるけど……宇佐美くんが立候補したら宇佐美くんでしょ!」
「やっぱり!? 私もそうする~」
「俺も宇佐美だな。話わかるし」
後輩なのに勝てる気がしない。
このままじゃ俺はきっと彼に負けてしまう。
何か対策を練らなくちゃ……。
ドクン、ドクンと嫌な音を立てる鼓動が早くて落ち着かない。
「もっと、もっと俺じゃないと駄目だって思わせなきゃ……」
父さんの冷ややかな視線が脳裏をよぎる。
『一番になれない人間に価値などない』
完全に追い詰められた俺は、その時の俺はどんな顔をしていただろう。
きっと酷く醜くて、歪んだ顔だったに違いない。


