「どうした?帰らないのか」
俺が不思議に思って尋ねると、彼は視線をさまよわせながら言った。
「……本当は一緒に帰りたいんですけど、今日は外せない予定があって……」
言いにくそうに告げられた言葉に、俺は思わず拍子抜けする。
「それならそうと早く言ってくれればいいだろう?帰っていいよって言えたのに」
「それは俺が先輩と一緒にいたかったんです。今日はふたりきりでしたし……」
そう、今日は雑務だけが残っていたから周りのみんなには帰ってもらってふたりで雑務をこなしていた。
「せっかく先輩とゆっくり帰れそうだったのに……」
カバンを持った手が、名残惜しそうにギュッと握りしめられている。
「別にいつでも帰れるだろ」
「いつもは一緒に帰ってくれないじゃないないですか」
あまりにグズグズ言うものだから、俺は苦笑するしかない。
普段はあんなに強引で大人びているくせに、こういう時は駄々っ子のようだから不思議だ。


