『絶対に宇佐美くんに票入れるから』
宇佐美が生徒会長になったら、きっと……俺の居場所は簡単に無くなってしまうだろう。
ぶんぶんと首を振る。
そんなのダメだ。
俺にはここにしか自分の価値を見出せないのだから。
「はあ……」
「どうしたんですか先輩。 やっぱり選挙が近いから緊張してます?」
バッ、と俺の顔を覗き込んでくる宇佐美。
余裕のない顔を見られたくなくて、俺はとっさに顔を背けた。
焦っているなんて知られたくない。
さっきだって、宇佐美は自分の呼びかけなんてすることもなく、ただ俺の後ろについていただけだ。
まるで俺なんか敵ではないと言われているようで悔しい。
このままじゃ駄目なのに。
どんどん余裕がなくなっていく。
「そりゃ緊張しますよね」
まるで他人事な言い方。
俺はグッと唇を噛みしめると、宇佐美を睨みつけた。
「宇佐美、髪の色。 もう少し暗くした方がいいんじゃないか」
その焦りは苛立ちへと変わる。


