森の木々の隙間から、広大な平原が見えた。
ステンの森を抜けた先に広がる「イバラ平原」だ。
遥か昔、地殻変動で大地が隆起して発生した鋭いトゲのような岩が乱立していることからそう呼ばれているらしい。
茨の棘に似ているから、イバラ平原。
昔の人って安直な名前をつけるんだな。
あたしだったらもっとこう、ビビッとくるカッコいい名前にするんだけど。
牙みたいだから、ガジガジ平原とか。
ギザギザ平原でもいいな。
めっちゃカッコいいじゃん。
「トト様」
なんて考えていたら、荷馬車の前を歩いていたオークが立ち止まった。
「私たちはここで」
「道中お気をつけて」
そう言って、5匹のオークは、まるで王族を送り出すかのように道の脇に整列する。
その光景にごくりと息を飲んでしまった。
「お、おう、サンキューな!」
あたしは慌てて手綱を引き、彼らの前を駆け抜けた。
振り向くことなく馬車を走らせ続ける。
鬱蒼とした森を抜けた瞬間、視界がぱっと開けた。
平原に乱立する尖岩が、陽光を浴びて鈍い光を放っている。
そこで恐る恐る振り向いてみたが、オークたちの姿はもう見えなかった。
あたしはようやくホッと息をつく。
正直なところ、生きた心地がしなかった。
カズマさんが用心のためにつけてくれた護衛だとはいえ、あのオークは「赤枝の王」と畏怖される最上級のS級オーク種「エルダーオーク」なのだ。
その噂は、伝説として語られている。
曰く、たった1匹のエルダーオークが、百戦錬磨の騎士一個師団を葬り去った。
曰く、栄華を極めた巨大な王国が、たった5匹のエルダーオークに一晩で滅ぼされた。
改めてブルッと身震いしてしまう。
「そんなオークを何匹も従えてるカズマさん……ぱねぇっす」
おまけに同じS級のフェンリルまで使役してたし。
きっとカズマさん自身も、相当な実力者なんだろうな。
「しかし、ブラックウイドウに襲われたときに颯爽と現れたカズマさん、超カッコよかったよなぁ……えへへ」
荷馬車に揺られながら、ついニヤけてしまった。
だって、あたしが大好きな絵物語に出てくる主人公みたいだったもん。
お姫様のピンチに現れる、最強の勇者──。
思わずキュンとしちゃったぜ。
カズマさんは、モンスターがひしめくステンの森に広大な農園を作っちまうし、本当に凄い人だと思う。
きっと大地の精霊に相当好かれているんだろうな。
ふと、荷馬車に満載している荷物が目に留まる。
カズマさんの農園で受け取った、大量の野菜とポーションだ。
「……へへ、今回も相当な売上になりそうだな」
今度は違う意味でニヤけてしまった。
農園の品の評判は、今や商人組合の中でも噂になっている。
仲間の商人からは「農園の主を紹介してくれ!」と毎日のようにせがまれるし、商品を卸しているブレンダ商会の主からは「次の納品はまだか!」とせっつかれる始末。
中でもポーションの人気が凄いことになっているらしい。
冒険者連中はもちろん、上流階級の貴族……それに、なんと領主様まで欲しがっているのだとか。
その話を聞いたときは、流石にビビった。
なんで領主様がポーションの存在を知っているのか不思議だった
だけど話を聞けば、教会の司祭様を通じて教皇様に渡り、そこから領主様の手に届いたという。
しかも、そのポーションを不治の病で苦しんでいた大臣に飲ませてみたところ、一晩にして完治したのだとか。
ブレンダ商会に卸したポーションはすべて領主様が3倍の値段で買い取ったらしく、次の取引は5倍に跳ね上がる見込みらしい。
もう笑いがとまらない。
今度の売上金を見せたときのカズマさんの驚いた顔が目に浮かぶ。
カズマさんは金儲けにはあんまり興味がないみたいだけど、いち商人としてこの機を逃すわけにはいかない。
ポーションの生産数をもう少し増やせないか、カズマさんにかけあってみよう。
そうすれば、念願の「個人店舗」オープンまで、もう秒読みだ。
「本当にカズマ様々だよな」
個人店舗を持つなんて、市井の商人にとっては夢のまた夢だ。
引退するまでに、地方の寂れた町でほそぼそとした店舗を持てれば勝ち組──なんて言われている。
なのに、あたしの歳で都会に店を持てるなんてなぁ。
ちょっと気が早いけど、店の名前を考えておこうかな。
特にこだわりは無いけど、カズマさんのお陰で店が持てるわけだから、カズマさんにちなんだ名前が良いよな?
「……そうだ。カズマ商店ってのはどうだ!?」
カズマさんの農園で採れたものを卸している商店……略してカズマ商店。
おお、これはかなり良いんじゃないか?
覚えやすいし、わかりやすい。
う~む。我ながら、良いネーミングセンスしてるぜ。
ま、正式に命名するのは、カズマさんに了承を得てからだけど。
領主様御用達のカズマ商店。
宣伝文句としては申し分ない。
店舗の次は……商会か?
へへ、夢は大きく膨らむな。
農園の品を卸してたら、それだけで大商会になれそうだ。
ステンの森を抜けた先に広がる「イバラ平原」だ。
遥か昔、地殻変動で大地が隆起して発生した鋭いトゲのような岩が乱立していることからそう呼ばれているらしい。
茨の棘に似ているから、イバラ平原。
昔の人って安直な名前をつけるんだな。
あたしだったらもっとこう、ビビッとくるカッコいい名前にするんだけど。
牙みたいだから、ガジガジ平原とか。
ギザギザ平原でもいいな。
めっちゃカッコいいじゃん。
「トト様」
なんて考えていたら、荷馬車の前を歩いていたオークが立ち止まった。
「私たちはここで」
「道中お気をつけて」
そう言って、5匹のオークは、まるで王族を送り出すかのように道の脇に整列する。
その光景にごくりと息を飲んでしまった。
「お、おう、サンキューな!」
あたしは慌てて手綱を引き、彼らの前を駆け抜けた。
振り向くことなく馬車を走らせ続ける。
鬱蒼とした森を抜けた瞬間、視界がぱっと開けた。
平原に乱立する尖岩が、陽光を浴びて鈍い光を放っている。
そこで恐る恐る振り向いてみたが、オークたちの姿はもう見えなかった。
あたしはようやくホッと息をつく。
正直なところ、生きた心地がしなかった。
カズマさんが用心のためにつけてくれた護衛だとはいえ、あのオークは「赤枝の王」と畏怖される最上級のS級オーク種「エルダーオーク」なのだ。
その噂は、伝説として語られている。
曰く、たった1匹のエルダーオークが、百戦錬磨の騎士一個師団を葬り去った。
曰く、栄華を極めた巨大な王国が、たった5匹のエルダーオークに一晩で滅ぼされた。
改めてブルッと身震いしてしまう。
「そんなオークを何匹も従えてるカズマさん……ぱねぇっす」
おまけに同じS級のフェンリルまで使役してたし。
きっとカズマさん自身も、相当な実力者なんだろうな。
「しかし、ブラックウイドウに襲われたときに颯爽と現れたカズマさん、超カッコよかったよなぁ……えへへ」
荷馬車に揺られながら、ついニヤけてしまった。
だって、あたしが大好きな絵物語に出てくる主人公みたいだったもん。
お姫様のピンチに現れる、最強の勇者──。
思わずキュンとしちゃったぜ。
カズマさんは、モンスターがひしめくステンの森に広大な農園を作っちまうし、本当に凄い人だと思う。
きっと大地の精霊に相当好かれているんだろうな。
ふと、荷馬車に満載している荷物が目に留まる。
カズマさんの農園で受け取った、大量の野菜とポーションだ。
「……へへ、今回も相当な売上になりそうだな」
今度は違う意味でニヤけてしまった。
農園の品の評判は、今や商人組合の中でも噂になっている。
仲間の商人からは「農園の主を紹介してくれ!」と毎日のようにせがまれるし、商品を卸しているブレンダ商会の主からは「次の納品はまだか!」とせっつかれる始末。
中でもポーションの人気が凄いことになっているらしい。
冒険者連中はもちろん、上流階級の貴族……それに、なんと領主様まで欲しがっているのだとか。
その話を聞いたときは、流石にビビった。
なんで領主様がポーションの存在を知っているのか不思議だった
だけど話を聞けば、教会の司祭様を通じて教皇様に渡り、そこから領主様の手に届いたという。
しかも、そのポーションを不治の病で苦しんでいた大臣に飲ませてみたところ、一晩にして完治したのだとか。
ブレンダ商会に卸したポーションはすべて領主様が3倍の値段で買い取ったらしく、次の取引は5倍に跳ね上がる見込みらしい。
もう笑いがとまらない。
今度の売上金を見せたときのカズマさんの驚いた顔が目に浮かぶ。
カズマさんは金儲けにはあんまり興味がないみたいだけど、いち商人としてこの機を逃すわけにはいかない。
ポーションの生産数をもう少し増やせないか、カズマさんにかけあってみよう。
そうすれば、念願の「個人店舗」オープンまで、もう秒読みだ。
「本当にカズマ様々だよな」
個人店舗を持つなんて、市井の商人にとっては夢のまた夢だ。
引退するまでに、地方の寂れた町でほそぼそとした店舗を持てれば勝ち組──なんて言われている。
なのに、あたしの歳で都会に店を持てるなんてなぁ。
ちょっと気が早いけど、店の名前を考えておこうかな。
特にこだわりは無いけど、カズマさんのお陰で店が持てるわけだから、カズマさんにちなんだ名前が良いよな?
「……そうだ。カズマ商店ってのはどうだ!?」
カズマさんの農園で採れたものを卸している商店……略してカズマ商店。
おお、これはかなり良いんじゃないか?
覚えやすいし、わかりやすい。
う~む。我ながら、良いネーミングセンスしてるぜ。
ま、正式に命名するのは、カズマさんに了承を得てからだけど。
領主様御用達のカズマ商店。
宣伝文句としては申し分ない。
店舗の次は……商会か?
へへ、夢は大きく膨らむな。
農園の品を卸してたら、それだけで大商会になれそうだ。



