夕方五時、誰もいない団地で

ホラー

夕方五時、誰もいない団地で
作品番号
1769017
最終更新
2025/12/13
総文字数
0
ページ数
0ページ
ステータス
未完結
いいね数
0
夕方五時。
帰宅を急ぐ人々の影が伸びる時間。
それは、今日がまだ終わっていないはずの時刻だ。

地平線しかない場所に、ぽつんと建つ集合住宅がある。
周囲に道も、隣家もない。ただ、同じ形の部屋が静かに並んでいる。
そこに迷い込む人々を、あなたは“案内人”として迎え入れる。

案内する先は、一人につき一つの部屋。
室内には、その人の記憶が形を持って残されている。
通勤鞄、割れたスマートフォン、止まった時計。
けれど、それらに触れることはできない。
なぜなら、彼らはすでに仏様だからだ。

忘れてしまった死の記憶を思い出せたとき、
部屋には天へと続く道標が現れる。
だが、思い出せなければ――
その部屋から、二度と出ることはできない。

案内人の仕事は淡々としている。
説明し、扉を開け、見送る。
そこに疑問を抱く必要はないはずだった。

しかし、いくつもの部屋を巡るうち、
あなたは違和感に気づき始める。
なぜ夕方は終わらないのか。
なぜ部屋の中に、見覚えのある物があるのか。
そして、なぜ自分自身の記憶だけが、どこにも見当たらないのか。

これは、死後の世界の物語ではない。
「帰る途中だった日常」が、静かに形を変えていく物語だ。
フィクションと現実の境界は、気づかぬうちに溶け、
ページを閉じたあとも、夕方五時はあなたの中に残り続ける。

その集合住宅は、今日も地平線の中に立っている。
次に迷い込むのは、あなたかもしれない。
あらすじ
夕方五時、地平線しかない場所に建つ集合住宅。案内人である“あなた”は、迷い込んだ仏様たちを、それぞれの記憶が具現化した部屋へと案内する。死の記憶を思い出せば天へ続く道が現れ、思い出せなければ永遠に閉じ込められる。淡々とした日常の中で、終わらない夕方と見覚えのある部屋が、案内人自身の記憶を静かに侵食していく。

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