片羽の僕たちは ~あなたのお気に召すままに スピンオフ~


 ボンヤリ考えていれば智彰に腕を引かれ、ソファーに押し倒されてしまう。その力強さに男を感じてしまい、心が疼く。こんな若いイケメンに相手にしてもらえるだけでも、いいプレゼントだよな……そう考えれば、この状況も悪くはないかもしれない。
 でも、お前がやっぱり可愛いから虐めたくなるんだ。


「なぁ、せっかく作った料理が冷めちまう」
「チンすればいいじゃん。もう少しイチャイチャしたい」
「でも、俺腹減ったし」
「あぁ、もう……少しムードとか考えて?」
「あ、……ッ」
 少しだけイラついた智彰に両手を押さえつけられて、唇を奪われる。


 ヤバい、こういうの好き……。


 体が一気に火照り出し、体が切なく痺れる。
 素面でなにやってんだよ……と頭の片隅で思いながらも、夢中で智彰のキスを受け止めた。舌を絡ませて唇を吸われて……頭の芯がボーっとしてくる。
 そう言えばこいつ俺がファーストキスだったんだよな。上手くなったじゃん。
 くだらないことを考えて、少しだけ嫉妬してしまう。
 こんなんだから、俺は千歳にフラれたんだよ……ってわかってはいるんだけど。
 今頃甘い甘い時間を過ごしているであろうあの2人を思えば、今目の前にいる智彰に甘えたいと思ってしまう。だってこいつは優しいし、かっこいい……。


「いつか俺達の思いが、こんなにボンヤリしたもんじゃなくて、揺らがないものになったら……抱かせてください」
「…………」
「俺の中に、兄貴の面影を探さなくなったら……俺達の関係も変わるかもしれない。こんな傷の舐めあいじゃなくて……きっと、もっと違う……」
「人のことばかりじゃなくて、智彰も水瀬君のことをちゃんと吹っ切れよな?」
「そう、ですね」
「いつか傷の舐めないなんて、しなくて済めばいいのにな」
「はい」


 俺達には片方の羽しかない。片方の羽は激しい恋情で焼き尽くされてしまったから……。
 これから先、俺と智彰の関係がどう変わっていくのかなんて、誰にもわからない。でも、智彰がいてくれてよかったと思う自分がいる。
 深々と降り積もる雪の夜……俺は素敵なプレゼントを手に入れた。
 よかった、クリスマスが寂しい思い出にならなくて。


「じゃあ、橘さんの手料理食べましょう」
「まずくても文句言うなよ」
「大丈夫です。今めちゃくちゃ腹が減ってるから」
 そう屈託なく笑う智彰に本当に救われる。
 心が温かい……。


「智彰、メリークリスマス」
「うん。メリークリスマス!」