クラス中が、緊張の色に染まる。
ゆっくりとドアをスライドし入ってきた教師に、皆が視線を送っている。
教師が分厚い紙束の底を教壇に打ち付け角を揃える。
「では行きます。相原〜」という気だるげな声と共に、地獄のテスト返しが始まった。
(今回数学は点悪いかな...)
次々に呼ばれていく生徒に目を向けながら、頭ではそんなことを考える。
原因は百も承知だ。
翼とふざけすぎた。ただそれだけ。
楽しかったけれど、勉強は一人の方が集中できるな。
「鳴海ぃ」
「はいっ」
上擦った声が生徒の声でかき消される。
教壇の前で解答用紙を受け取り、そっと点数に目を向けるも、「84点」とまぁ悪くない結果だ。
内心胸を撫で下ろしながら、解答用紙をファイルに入れた。
辺りを見回せば、点数のお披露目会をやっていて、教師がさりげなく制止し、ぬるりと授業を始めた。
♦︎
チャイムがなり、生徒が口枷を外すように口を開き、教室内がガヤガヤしてくる。
授業の合間の10分休憩なんて何をするでもなく、ただ机に突っ伏すして過ごす俺には関係のないことだ。
「失礼しまーす!蓮ー、おい!れん!」
この教室に似つかわしくない声が鼓膜を揺らし、顔を上げる。
他クラスから、またわざわざ来たらしい翼が、女子の視線を掻っ攫いながら俺の肩に寄りかかってくる。
「重っ」
「ひどいわ!!女子に重いなんて!!」
「うるせぇ笑 何の用ですか?」
「テストの結果見せて!」
ニヤニヤと俺の目を見てくる翼に、なんとなく考えを勘づいてしまう。
この感じは、案外テストの結果がよかったから俺を見下してやろうと言うことだろう。
俺は渋々ファイルから解答用紙を数枚取り出した。
「はいよ」
「お前、低っ......ん?」
「ん?」
プルプルと肩を震わせ俯いた翼に俺は戸惑う。
なんだ?何か良くないことをしたか?
顔を覗き込もうと、肩を丸めると、ガバッと翼が頭を上げた。
その瞬間、俺の鼻にクリティカルヒット。
「ん″...!」
「うおぃっ!悪い!!ごめん!!」
「ん″ー、大丈夫」
「って、鼻血出てるじゃねぇか!!」
俺が認識するよりも先に、周りにいた女子からティッシュをもらった翼が俺の鼻にあてがう。
青ざめる翼とは対照的に、ティッシュは真っ赤に染まっていき、クラス中もざわめき出す。
チラッとティッシュを離し、確認する。
「う...わ、まじの鼻血だ」
「なんでお前は冷静なんだよ」
「なんでお前はそんなに焦ってんだよ笑」
鼻を押さえてるせいで不細工な声になってしまっている俺に、申し訳なさそうに尻尾を下げる翼。
忙しい奴だな。
俺は血を飲んでしまわないように下を向けと翼に言われてから、自分の上履きを見つめている。
「詳しいな」
「...優実が昔よく鼻血出してたからな」
(やっぱりお兄ちゃんだな)なんて思いながら、「そうか、助かった」とだけ返す。
チャイムが鳴ってしまい、心配そうに数回振り返りながら翼は自分のクラスへと帰っていった。
何がそんなに引っ掛かるんだか...
♦︎
休み時間になり顔についた血を洗い流していると、右の方から翼の声が聞こえてきた。
びしょびしょの顔を上げれば、鼻を凝視してくる。
「大丈夫か?」
「ん、うん。お願いなんだけど、これちぎって」
ハンカチを持ってきてなかった俺は、学校に置かれているティッシュがわりのトイレットペーパーを翼にちぎる様頼むと、テキパキとちぎって手渡してくれる。
「サンキュー」
「本当ごめんな」
俺が鼻血を出してからやけに塩らしい翼に、寒気まで感じる。
いつもの翼じゃない。
疑いの眼差しを向けると、ソワソワしながら、俺と目線を合わせたり逸らしたりしている。
「なに?」
「いや、悪いことしたなと」
「普段そんなキャラじゃないくせして」
「っ、俺にも色々あんだよ」
俺に彩りをくれた翼が、何となくネガティブな方に落ちて行ってる気がする。
その手を引っ張るように、肩を叩けば、翼の切れ長な瞳が少々丸みを帯びた。
「テスト終わったし、今日カラオケとかどうですか?」
「友達と行ってみたくてさ...」と翼から目を逸らす。
忽ちテンションを取り戻した翼が、天真爛漫な笑顔で頷いた。
いろんな所からそんな翼を見た女子たちが群がっている。
(相変わらずすげぇな...)
翼と関わるようになって変わったこと、周りまでもが賑やかになった。
ゆっくりとドアをスライドし入ってきた教師に、皆が視線を送っている。
教師が分厚い紙束の底を教壇に打ち付け角を揃える。
「では行きます。相原〜」という気だるげな声と共に、地獄のテスト返しが始まった。
(今回数学は点悪いかな...)
次々に呼ばれていく生徒に目を向けながら、頭ではそんなことを考える。
原因は百も承知だ。
翼とふざけすぎた。ただそれだけ。
楽しかったけれど、勉強は一人の方が集中できるな。
「鳴海ぃ」
「はいっ」
上擦った声が生徒の声でかき消される。
教壇の前で解答用紙を受け取り、そっと点数に目を向けるも、「84点」とまぁ悪くない結果だ。
内心胸を撫で下ろしながら、解答用紙をファイルに入れた。
辺りを見回せば、点数のお披露目会をやっていて、教師がさりげなく制止し、ぬるりと授業を始めた。
♦︎
チャイムがなり、生徒が口枷を外すように口を開き、教室内がガヤガヤしてくる。
授業の合間の10分休憩なんて何をするでもなく、ただ机に突っ伏すして過ごす俺には関係のないことだ。
「失礼しまーす!蓮ー、おい!れん!」
この教室に似つかわしくない声が鼓膜を揺らし、顔を上げる。
他クラスから、またわざわざ来たらしい翼が、女子の視線を掻っ攫いながら俺の肩に寄りかかってくる。
「重っ」
「ひどいわ!!女子に重いなんて!!」
「うるせぇ笑 何の用ですか?」
「テストの結果見せて!」
ニヤニヤと俺の目を見てくる翼に、なんとなく考えを勘づいてしまう。
この感じは、案外テストの結果がよかったから俺を見下してやろうと言うことだろう。
俺は渋々ファイルから解答用紙を数枚取り出した。
「はいよ」
「お前、低っ......ん?」
「ん?」
プルプルと肩を震わせ俯いた翼に俺は戸惑う。
なんだ?何か良くないことをしたか?
顔を覗き込もうと、肩を丸めると、ガバッと翼が頭を上げた。
その瞬間、俺の鼻にクリティカルヒット。
「ん″...!」
「うおぃっ!悪い!!ごめん!!」
「ん″ー、大丈夫」
「って、鼻血出てるじゃねぇか!!」
俺が認識するよりも先に、周りにいた女子からティッシュをもらった翼が俺の鼻にあてがう。
青ざめる翼とは対照的に、ティッシュは真っ赤に染まっていき、クラス中もざわめき出す。
チラッとティッシュを離し、確認する。
「う...わ、まじの鼻血だ」
「なんでお前は冷静なんだよ」
「なんでお前はそんなに焦ってんだよ笑」
鼻を押さえてるせいで不細工な声になってしまっている俺に、申し訳なさそうに尻尾を下げる翼。
忙しい奴だな。
俺は血を飲んでしまわないように下を向けと翼に言われてから、自分の上履きを見つめている。
「詳しいな」
「...優実が昔よく鼻血出してたからな」
(やっぱりお兄ちゃんだな)なんて思いながら、「そうか、助かった」とだけ返す。
チャイムが鳴ってしまい、心配そうに数回振り返りながら翼は自分のクラスへと帰っていった。
何がそんなに引っ掛かるんだか...
♦︎
休み時間になり顔についた血を洗い流していると、右の方から翼の声が聞こえてきた。
びしょびしょの顔を上げれば、鼻を凝視してくる。
「大丈夫か?」
「ん、うん。お願いなんだけど、これちぎって」
ハンカチを持ってきてなかった俺は、学校に置かれているティッシュがわりのトイレットペーパーを翼にちぎる様頼むと、テキパキとちぎって手渡してくれる。
「サンキュー」
「本当ごめんな」
俺が鼻血を出してからやけに塩らしい翼に、寒気まで感じる。
いつもの翼じゃない。
疑いの眼差しを向けると、ソワソワしながら、俺と目線を合わせたり逸らしたりしている。
「なに?」
「いや、悪いことしたなと」
「普段そんなキャラじゃないくせして」
「っ、俺にも色々あんだよ」
俺に彩りをくれた翼が、何となくネガティブな方に落ちて行ってる気がする。
その手を引っ張るように、肩を叩けば、翼の切れ長な瞳が少々丸みを帯びた。
「テスト終わったし、今日カラオケとかどうですか?」
「友達と行ってみたくてさ...」と翼から目を逸らす。
忽ちテンションを取り戻した翼が、天真爛漫な笑顔で頷いた。
いろんな所からそんな翼を見た女子たちが群がっている。
(相変わらずすげぇな...)
翼と関わるようになって変わったこと、周りまでもが賑やかになった。
