【それはおもれー】
最近の日課となっている翼との朝のDM会話。
今日は寝起き早々、翼がおはようも無しに、「『水も滴るいい男』の対義語ってなんだろうな?」と送ってきて、朝が億劫な俺でも吹き出した。
憂鬱な朝を笑いから走り出させてくれた翼にほんの少しの礼として、『脂汗まみれのブサイク』と送り返してやった。
俺と翼は正反対な二人のようで、基本的に好きなことが真逆だった。
はっきりしていて分かりやすいのが、俺はインドア、翼はアウトドア。
このくらいには正反対な二人だったが、食の好みは案外合うようで、電話をするたび食で盛り上がる。
さすが男子高校生と言いたいくらい、胃袋でコミュニケーションを取っている。
胃語。
翼と連絡を取り始めてから楽しいと感じていたこの気持ちは、幻ではなかったらしい。
【あの一件】から、話す友達を作ってこなかった俺が、翼と話して友達ってのも悪くないと思っているのが、なんだかむず痒い気持ちになる。
そんな俺の学生生活が、今日もイヤホンから聞こえる、聴き慣れたメロディーと共に始まった。
***
1日の終わりにも最近はほぼ毎日翼と通話している気がする。
今日も例外ではない。
朝にはアラームと音楽を流すためだけに使われている俺のスマホから、翼の声と時折妹の優実ちゃんの声が聞こえている。
『数学の教師がタッキーってあだ名ついてんだけど、”すなわち“って死ぬほど使ってくんの。だから、俺らもしょうもない日常会話に″すなわち″ってどれだけ挟めるかゲームしてて』
(ん...?)
ただの会話の中に、知っている単語と状況が混じっている。
ウチの学校の数学教師も主に、陽キャからタッキーと呼ばれていて、『すなわち』と隙あらば突っ込んでくる。
今日も十回以上は聞いたと思う。
ここまで考えたついたところで、仮説が思いの外当たっている気がしてくる。
確認のため、確信を迫る質問をしてみよう。
俺は、軽く咳払いをしてスマホを握り直す。
「あのさ、今日の給食のメニューってなんだった?」
『ハンバーグ!!!!!』
突然の優実ちゃんの大きな声に肩が飛び跳ねた。
『お前は...!勝手に答えるな!!悪い、今日の給食はそぼろ丼だった』
遅れて優実ちゃんのぶーぶー抗議の声が聞こえてきて、思わず顔が綻ぶ。
ん?そぼろ丼?
『蓮は〜?』と電話口から聞こえてきて、我に返る。
「お、俺もそぼろ丼だった...」
『うぉ!?マジ?スゲェー』
二人で給食のメニューを挙げていくと、見事に全部同じだった。
(こんな奇跡起こるものなのか?)と共通点が増えるごとに戸惑っていく俺たち。
とうとう沈黙が俺たちの疑問の狭間を包み込んだ。
そんな静まり返った空気を引き裂いたのは、翼の方だった。
『俺らもしかして近くに住んでる...?』
「いや...同じ学校かも...すなわちタッキー知ってる」
驚かれると想定しているため、変に緊張してしまう。
だけど、耳に届いたのは驚愕の言葉ではなく、大爆笑だった。
『あははは!!すなわちタッキー知ってる!?ブッ...!ははは!!!!』
「ふっ、くっくっくっ...ふはは!」
すなわちタッキーの存在が一致して大爆笑している翼に釣られて、俺の口からも笑い声が溢れる。
人と腹を抱えて笑うなんて、少し前の俺が見たら嘲笑ってくるに違いない。
だって、こんな姿の俺に、俺が一番戸惑ってるんだから。
しばらく笑った後、翼から一つの提案が降りてきた。
『じゃあさ、明日7時半に校門の前で待ち合わせしてみようぜ』
『同じ学校だったら会えるだろ』付け加えられた言葉に、胸の感覚がふわりと浮くように感じた。
ネットで知り合った、友達と呼べる存在と、リアルで会うことが可能かもしれない。
俺は勢いのまま翼の提案に賛成の意を示した。
最近の日課となっている翼との朝のDM会話。
今日は寝起き早々、翼がおはようも無しに、「『水も滴るいい男』の対義語ってなんだろうな?」と送ってきて、朝が億劫な俺でも吹き出した。
憂鬱な朝を笑いから走り出させてくれた翼にほんの少しの礼として、『脂汗まみれのブサイク』と送り返してやった。
俺と翼は正反対な二人のようで、基本的に好きなことが真逆だった。
はっきりしていて分かりやすいのが、俺はインドア、翼はアウトドア。
このくらいには正反対な二人だったが、食の好みは案外合うようで、電話をするたび食で盛り上がる。
さすが男子高校生と言いたいくらい、胃袋でコミュニケーションを取っている。
胃語。
翼と連絡を取り始めてから楽しいと感じていたこの気持ちは、幻ではなかったらしい。
【あの一件】から、話す友達を作ってこなかった俺が、翼と話して友達ってのも悪くないと思っているのが、なんだかむず痒い気持ちになる。
そんな俺の学生生活が、今日もイヤホンから聞こえる、聴き慣れたメロディーと共に始まった。
***
1日の終わりにも最近はほぼ毎日翼と通話している気がする。
今日も例外ではない。
朝にはアラームと音楽を流すためだけに使われている俺のスマホから、翼の声と時折妹の優実ちゃんの声が聞こえている。
『数学の教師がタッキーってあだ名ついてんだけど、”すなわち“って死ぬほど使ってくんの。だから、俺らもしょうもない日常会話に″すなわち″ってどれだけ挟めるかゲームしてて』
(ん...?)
ただの会話の中に、知っている単語と状況が混じっている。
ウチの学校の数学教師も主に、陽キャからタッキーと呼ばれていて、『すなわち』と隙あらば突っ込んでくる。
今日も十回以上は聞いたと思う。
ここまで考えたついたところで、仮説が思いの外当たっている気がしてくる。
確認のため、確信を迫る質問をしてみよう。
俺は、軽く咳払いをしてスマホを握り直す。
「あのさ、今日の給食のメニューってなんだった?」
『ハンバーグ!!!!!』
突然の優実ちゃんの大きな声に肩が飛び跳ねた。
『お前は...!勝手に答えるな!!悪い、今日の給食はそぼろ丼だった』
遅れて優実ちゃんのぶーぶー抗議の声が聞こえてきて、思わず顔が綻ぶ。
ん?そぼろ丼?
『蓮は〜?』と電話口から聞こえてきて、我に返る。
「お、俺もそぼろ丼だった...」
『うぉ!?マジ?スゲェー』
二人で給食のメニューを挙げていくと、見事に全部同じだった。
(こんな奇跡起こるものなのか?)と共通点が増えるごとに戸惑っていく俺たち。
とうとう沈黙が俺たちの疑問の狭間を包み込んだ。
そんな静まり返った空気を引き裂いたのは、翼の方だった。
『俺らもしかして近くに住んでる...?』
「いや...同じ学校かも...すなわちタッキー知ってる」
驚かれると想定しているため、変に緊張してしまう。
だけど、耳に届いたのは驚愕の言葉ではなく、大爆笑だった。
『あははは!!すなわちタッキー知ってる!?ブッ...!ははは!!!!』
「ふっ、くっくっくっ...ふはは!」
すなわちタッキーの存在が一致して大爆笑している翼に釣られて、俺の口からも笑い声が溢れる。
人と腹を抱えて笑うなんて、少し前の俺が見たら嘲笑ってくるに違いない。
だって、こんな姿の俺に、俺が一番戸惑ってるんだから。
しばらく笑った後、翼から一つの提案が降りてきた。
『じゃあさ、明日7時半に校門の前で待ち合わせしてみようぜ』
『同じ学校だったら会えるだろ』付け加えられた言葉に、胸の感覚がふわりと浮くように感じた。
ネットで知り合った、友達と呼べる存在と、リアルで会うことが可能かもしれない。
俺は勢いのまま翼の提案に賛成の意を示した。
