「んー...」
「さっきからずっと唸ってどうしたのよ」
「ぁ、いや」
翼を見送り無事家に帰ってきた俺だが、父親にどう連絡するかを悩んでいた。
今更、【最近どう?】とか、【久しぶり〜】なんて送ってもな...
頭を抱えていると、母さんが興味津々な様子で目の前のダイニングテーブルに腰掛けた。
「なに...」
「なんでか気になるのよ」
「本当父さんのこと好きだな...父さんセンサーなんとかして」
「なに!?蓮からお父さんの話なんて何年ぶりかしら!?」
「父さんに久しぶりに連絡しようと思ったんだけど、今更俺が送ってもな」
すると、珍しく真剣な顔をした母さんが俺の右手首を掴む。
それでも聞こえてきた声は穏やかで。
「送ってあげて?お父さんきっと喜ぶわ」
翼にも似たようなことを言われたなと、腹を括った俺は、スマホを握る。
母さんもウキウキニコニコで俺を見ていて、すごく居心地が悪い。
何度も打っては、消してを繰り返し、ようやく送ることができた。
【こんにちは。父さん、元気?】
うっすい文章だが、これしか思いつかなかった。
肩の力が抜けてスマホを置くと、爆速で通知が来る。
「はやっ!?あの人暇なの?」
【こんにちは。元気だぞ。お前はどうなんだ?元気か?体調崩してないか?テストはどうだ?友達はできたのか?】
「質問責めで重っ...」
「お母さんがスタンプ連打して、蓮からの連絡見てって送っちゃった♡」
既読が早かったのは母さんの仕業らしい。
一つ一つ質問に答える。
【元気だよ。体調もバッチリだよ。テストはぼちぼちです。友達一人できた】
【よかったな。父さん明後日に一度帰るぞ】
【なんで急に?】
【お前の誕生日だろ】
え?
俺の誕生日覚えて...
「父さん明日帰ってくるって...」
「知ってるわよ〜。お父さん毎年蓮の誕生日は帰ってきてたもの」
「は?」
「蓮はバイト入れちゃってたとか、部屋から出てこないとかでなかなか時間合わなかったけど、毎年のケーキ。あれお父さんから」
目の前の母さんが白くぼやけて見え、思わず目を逸らした。
父さんには、いろいろ口を出されてウザかった。
そのことから逃げるように、父さんを避けた。
いや、避け始めたあの頃は、突如失った親友の存在に心が追い付かず、とにかく一線超えてくる人とは距離とっていた。
それが気遣いだろうが、心配だろうが、お構いなしに。
勝手に父さんに嫌われてるなんて被害妄想していただけで、こんなにも想ってくれてたんだ。
高校生にもなって止めどなく流れる涙をどうすることも出来なかった。
灰色の世界にしていたのは、紛れもなく自分だ。
あの時、手を伸ばしてもらう事を望んでいたのに、父さんからの手は自ら振り払っていた。
「父さんに悪いことしてたな...っ、」
「今年は一緒にケーキ食べてあげてちょうだい」
「うん」
惨めに鼻を啜る姿を、過去の俺が見てる。
人間関係にここまで感情を揺さぶられて馬鹿だとでも言うだろうか?
だが、他者と関わることでしか生まれないこともある。
翼と出会ってからの景色は騒がしくて、今まで失っていたものを取り戻すかのように色が戻ってきた。
1人で深堀り続けた過去を、今は新たな価値観で考え始めている自分もいる。
ーー上辺だけでは気付けないこともある。
肩書きや、外見、その人を語る外側じゃなくて、素を見せ合えることや、見えない想いまでも大切にしたいと思うようになった。
...あの時あいつが笑っていたのも、俺には気が付かなかった防御だったのかもしれない。
寄り添ってくれなかったなんて一方的に思っていたけど、俺こそあいつの気持ちを考えようとしなかった。
そう気づいた今、過去の自分がどれだけ人間関係が悪だと言ったとしても、俺は胸を張って、父さんと母さんの息子でーー翼の友達でいられる。
「さっきからずっと唸ってどうしたのよ」
「ぁ、いや」
翼を見送り無事家に帰ってきた俺だが、父親にどう連絡するかを悩んでいた。
今更、【最近どう?】とか、【久しぶり〜】なんて送ってもな...
頭を抱えていると、母さんが興味津々な様子で目の前のダイニングテーブルに腰掛けた。
「なに...」
「なんでか気になるのよ」
「本当父さんのこと好きだな...父さんセンサーなんとかして」
「なに!?蓮からお父さんの話なんて何年ぶりかしら!?」
「父さんに久しぶりに連絡しようと思ったんだけど、今更俺が送ってもな」
すると、珍しく真剣な顔をした母さんが俺の右手首を掴む。
それでも聞こえてきた声は穏やかで。
「送ってあげて?お父さんきっと喜ぶわ」
翼にも似たようなことを言われたなと、腹を括った俺は、スマホを握る。
母さんもウキウキニコニコで俺を見ていて、すごく居心地が悪い。
何度も打っては、消してを繰り返し、ようやく送ることができた。
【こんにちは。父さん、元気?】
うっすい文章だが、これしか思いつかなかった。
肩の力が抜けてスマホを置くと、爆速で通知が来る。
「はやっ!?あの人暇なの?」
【こんにちは。元気だぞ。お前はどうなんだ?元気か?体調崩してないか?テストはどうだ?友達はできたのか?】
「質問責めで重っ...」
「お母さんがスタンプ連打して、蓮からの連絡見てって送っちゃった♡」
既読が早かったのは母さんの仕業らしい。
一つ一つ質問に答える。
【元気だよ。体調もバッチリだよ。テストはぼちぼちです。友達一人できた】
【よかったな。父さん明後日に一度帰るぞ】
【なんで急に?】
【お前の誕生日だろ】
え?
俺の誕生日覚えて...
「父さん明日帰ってくるって...」
「知ってるわよ〜。お父さん毎年蓮の誕生日は帰ってきてたもの」
「は?」
「蓮はバイト入れちゃってたとか、部屋から出てこないとかでなかなか時間合わなかったけど、毎年のケーキ。あれお父さんから」
目の前の母さんが白くぼやけて見え、思わず目を逸らした。
父さんには、いろいろ口を出されてウザかった。
そのことから逃げるように、父さんを避けた。
いや、避け始めたあの頃は、突如失った親友の存在に心が追い付かず、とにかく一線超えてくる人とは距離とっていた。
それが気遣いだろうが、心配だろうが、お構いなしに。
勝手に父さんに嫌われてるなんて被害妄想していただけで、こんなにも想ってくれてたんだ。
高校生にもなって止めどなく流れる涙をどうすることも出来なかった。
灰色の世界にしていたのは、紛れもなく自分だ。
あの時、手を伸ばしてもらう事を望んでいたのに、父さんからの手は自ら振り払っていた。
「父さんに悪いことしてたな...っ、」
「今年は一緒にケーキ食べてあげてちょうだい」
「うん」
惨めに鼻を啜る姿を、過去の俺が見てる。
人間関係にここまで感情を揺さぶられて馬鹿だとでも言うだろうか?
だが、他者と関わることでしか生まれないこともある。
翼と出会ってからの景色は騒がしくて、今まで失っていたものを取り戻すかのように色が戻ってきた。
1人で深堀り続けた過去を、今は新たな価値観で考え始めている自分もいる。
ーー上辺だけでは気付けないこともある。
肩書きや、外見、その人を語る外側じゃなくて、素を見せ合えることや、見えない想いまでも大切にしたいと思うようになった。
...あの時あいつが笑っていたのも、俺には気が付かなかった防御だったのかもしれない。
寄り添ってくれなかったなんて一方的に思っていたけど、俺こそあいつの気持ちを考えようとしなかった。
そう気づいた今、過去の自分がどれだけ人間関係が悪だと言ったとしても、俺は胸を張って、父さんと母さんの息子でーー翼の友達でいられる。
