おほん、と咳払いをした泰紀くんが、どこかもぞもぞした様子で私を見下ろした。
「俺は脳筋だからただ巫寿が無事戻ってこれるように、必死に戦うことしかできねぇ。でも、これから俺らのために戦ってくれる巫寿の励ましになればいいなって思って、これ貰ってきた」
「貰ってきた?」
おう、とひとつ頷いた泰紀くんは懐からスマホを取りだして素早く操作する。
そして画面が私に見えるように持ち直すして、真ん中の再生ボタンを押した。
『やっほー! 巫寿元気〜?』
画面いっぱいに写った女の子の笑顔に「え!」と声を漏らした。少し伸びたショートボブを一つくくりにして、カメラに向かってハツラツと手を振るのは大親友の恵理ちゃんだった。
「泰紀くんこれ……」
「おう。恵理に頼んで送ってもらった。もう長いこと会ってないんだろ」
ほれ、とスマホを差し出される。受け取って食い入るように画面を覗き込んだ。
笑顔で手を振っていた恵理ちゃんは突然眉根をぎゅっと寄せて怒っている表情になった。
『巫寿! 私怒ってるんだからね! 突然音信不通になって、イコくんも憔悴しきって連日巫寿のこと探しに出かけてたし……かと思ったら、いきなり泰紀から"巫寿はこれから大事なお役目を果たすから、応援のメッセージくれ"だなんて言われて。巫寿が高校に上がってから、私はずっと巫寿の心配ばかりしてる気がするよ』
怒った表情から、やがて不安げに瞳が揺れた。
思えば自分の事ばかりになっていて、恵理ちゃんにちゃんと連絡を取っていなかった。



