「実はそれまだ完成してなくてさ、その箱に向かってフーッてしてくれない?」
息を吹きかけろということだろうか?
よく分からないけど「今やって!」と急かされたので、言われた通り息を吹きかける。それで何かが起きるのかと思ったけれど特に箱に変化はなく、首を捻る。
「これで合ってる……?」
「うん、合ってる。僕は嘉正や恵衣みたいに賢くないし、泰紀みたいに強くないし、慶賀みたいに勇敢じゃないけど……これなら誰にも負けないくらい、僕にも巫寿ちゃんの力になれるから」
だらりと垂れ下がった右腕。治療は済んでいると聞いたけど、片方の手だけでこのお守りを作るのはどれだけ大変だっただろうか。
へへ、と頬を赤らめた来光くんに胸がいっぱいになる。
「次はお守りじゃなくて、スイーツ作るよ。巫寿ちゃんが好きなやつ、リクエストしてくれたらなんでも作るから」
優しさが、温かさが、私の中に流れ込んでくる。うん、と頷いた自分の声は僅かに震えていた。お守りの木箱を胸に抱きしめて微笑む。。
「……それじゃあ、コンベルサシオンをお願いしようかな。一番好きなの」
「コン……え? なんて? こさべる?」
きょとんとした顔で瞬きした来光くん。
「おい来光、さっさと順番代われ! 次俺の番!」
「え、待って、今の何!? 巫寿ちゃん今の何!?」
激しく動揺する来光くんを、泰紀くんが横から押しのけた。



