「もし今少しでも"怖い"だとか"嫌だ"って気持ちがあるのなら、兄ちゃんがこの場から連れ去ってやる! 俺達のことを誰も知らない場所で、ログハウス建ててヤギ飼ってチーズ作りながら暮らそう!」
な!?と必死の形相のお兄ちゃんに頭を抱えた。
なんか前にも同じようなこと言っていた気がするな……。
「上手くいかなくたっていい、失敗したっていい! 後ろには兄ちゃんがいる! 困った時はいくらだって助けてやるから!!」
いつもなら聞き流すお兄ちゃんの過保護っぷりも、その言葉だけは今日はずんと胸に響いた。
これまで数々の神事をこなしてきたのは、どれも私が作戦を成功させるためのもの。側役に私と仲のいい後輩ふたりをあてがったのも、私の精神を安定させて成功率を上げるためだろう。
お陰で落ち着いてはいられたけれど、ずっと心には「失敗は許されない」というプレッシャーがあった。
誰も口には出さなかったけれど「絶対に成功させてくれ」という気持ちは、その眼差しから伝わってきていた。
何度も深呼吸しては、縋るように恵衣くんから貰った髪飾を握りしめていた。
肩の荷がほんの少しだけ降りたような気がした。
「お兄ちゃん」
「何!? やっぱりお兄ちゃんとスイスに逃亡する!?」
「違うよ」
なんでうちの兄はこうも締まらない人なんだろうか。
でもそういう所が、いつも私を笑顔にしてくれる明るいところが、私は。



